彼は何を残す 下
- カテゴリ:自作小説
- 2015/02/08 19:51:40
下の続き
注意も下と同じ
*ケント*
「嘘・・・だろ・・・・・・?」
第一声はそれだった。
タツキの話はメンバーにとってもよほどショッキングな話だったのだろう。
「すでにコンちゃんのことは忘れてしまっている。
学校で、タツキにこんちゃんのことをもう一度説明しようと思っている。
俺たちもいつ忘れられるかわからない。
忘れられたら毎日、自己紹介しなきゃなんなくなる。
・・・できるか?」
少し、黙りこくる3人。
「俺はやります。
毎日、何度でも。」
「俺も、たつきっくのためならな」
「僕もやります!!
だってたつき先輩大好きですもん!」
タツキ、お前は幸せ者だな。
こんなにも思ってくれる仲間がいるんだ。
次の週のことだった。
タツキはついに俺たちのことも忘れていった。
毎日昼休みになるとタツキの教室にみんなでおしかけて部室に連れ出す。
そして写真を見せながら自己紹介。
それが終わる頃には毎度、タツキの表情に笑顔が見られるようになった。
タツキの笑顔は俺たちに頑張ろうという気持ちを与えてくれた。
まさに、光だった。
*タツキ*
この頃わからないことが多くなった。
大切な友達のことも、大好きなメンバーのことも・・・。
自分のことも。
わからないことが増えてからというもの、僕はノートにメモを取るようになった。
もう、2冊のノートを使い切った。
だけど、それを見てもわかることなんてほとんどなかった。
お父さんもお母さんも、ぷぷっぴちゃんも、メンバーのみんなだって、僕に何も教えてくれない。
怖い、その気持ち以外僕の心には残っていなかった。
みんなが大変な気持ちをするのは嫌だ。
だから、僕は・・・・。
「さよなら。」
行く場所行く場所、そう言い残して立ち去った。
お屋敷の中に、講堂に屋上に教室に裏庭、みんなの住む寮に職員室、そして部室。
思い出のたくさん詰まったこの部屋を僕の最後の場所としよう。
運がいいのかここは3階、落ちた日には一発でさようならだ。
ずっと抱きしめていたうさぎのぬいぐるみを椅子に座らせ、窓枠に座り込む。
「みんなと出会った日のことなんかこれっぽっちも思い出せやしないんだ。
もちろん、君とあった日のことも。
僕がどんな人間だったのかも思い出せない。
こんな人間に生きてる意味なんてきっとないよね。
みんなだってせいせいしたって言ってくれるよね。」
うさぎのぬいぐるみの方を見て軽く笑ってみせる。
「さよなら、って伝えてくれる?
思い出せなくてごめんねって伝えてくれる?
大好きだよって言っておいてもらえる?」
最後に君に伝えなくちゃいけないね。
「コンちゃん・・・って言ったよね?
ごめんね、ごめんね・・・・・・。
忘れちゃったのに、ずっとそばにいてくれてありがとうね。」
「さようなら」
そうつぶやくと僕は体から力を抜いた風を背中に感じる。
落ちてるんだなってもう死んじゃうんだなって思った。
ふと今までの記憶が流れ込んできた。
ぱっくんと初めて会った時、二人ではしゃいだこと。
あきらっちょに後輩に間違えられたこと。
奏君に怖いなって印象を持ったこと。
先生はざっくりしてるけど優しそうだなって思ったこと。
コンちゃんにたくさん怒られたこと。
地面が近くなってくる。
最期に、最期にこれだけ言わせて。
「僕、みんなに出会えて、幸せだった!!!!」
一瞬の鋭い痛みと共に僕の意識はどこかに消えた。
* *
翌日、登校してきた銀髪の生徒が彼の遺体を発見した。
彼が倒れていた場所を知った彼の大好きだったみんなは部室に駆け込んだ。
そこには、彼が大切にしていたうさぎのぬいぐるみがいた。
うさぎのぬいぐるみから話を聞いた彼らは枯れ果ててもおかしくないくらいに泣きじゃくった。
彼らもまた彼に感謝していた。
幸せだったという。
最期の最期に思い出してくれたんだと少しだったが喜びもあった。
徐々に落ち着きを取り戻していった彼らは少しずつであったが日常生活に、新しい日々へ続く道に足を踏み出した。
きっと彼らは彼のことを忘れたりはしないのだろう。
彼は彼らに大切なものを残していった。
その大切なものの意味がわかったとき、彼らはまた涙を流すのだろうか。
これは5人と1匹のあるひと夏の話。
END
報われない。
なぜこうなった(真顔)
大切なものの意味、あなたには分かりましたか?
これを期に言葉について考えてみるのもひとつの手かと←
でも、いつもとは違って繊細だったね。今回の小説d
んー…大切なものの意味、分かんなかった…
めっちゃ頑張ったんだけどなー…w
言葉はやっぱ大切やね。なるほど…ちゃんと考えてみるわ