夢バス ~ある神様の願い~
- カテゴリ:日記
- 2015/03/21 21:15:16
「こんにちは」
不意に声をかけられ、女の子は目を開けました。声の主は、女の子と同い年ほどの少年でした。
少年は、今度はほほえみながら話しかけました。
「こんにちは。ここがどこか、わかりますか?」
女の子は、ぐるりと一周、辺りを見回せました。女の子が立っていたのは、森の中のバス停でした。
「知ってるよ、夢の中でしょ?」
女の子はそう答えました。少年はそれまで読んでいた手帳を閉じると、意外そうな顔で首をかしげました。女の子はうでをふりあげ、ぐるぐる回しながら続けました。
「わたしがここにいるはずないの。ずっと入院しているんだもの。体がだんだん石みたいに動かなくなってく病気なんだって」
少年は申し訳なさそうにうつむきました。
「ところで、あなたはだれ?」
女の子はしばらく体を動かしてから、少年にたずねました。少年は少し考えてから答えました。
「…四かける二の半分です」
今度は女の子が首をかしげる番でした。
「ごめんなさい。わからなくていいですよ」
少年はバツがわるそうに、苦笑いをしました。
「わたしだってかけ算くらいできるわよ。ちゃんと習ったもん。病院で、だけどね。答えは簡単、しにが八よ」
「そうでしたか。ちゃんと勉強もしたのですね」
「でも、四かける二を半分にしたら、また四に戻っちゃうよ」
「そうですね。八をそうやって半分にしたら、四ですね」
女の子は、初めて少年をじっと見ました。黒いズボンに黒いシャツ。見事に全身真っ黒です。おまけに少年が持っている手帳まで黒一色でした。でも、それ以上に不思議なのが、笑顔を浮かべた少年の顔つきでした。
「ねえ、そのほっぺた… もしかして泣いてたの?」
少年のほおには、なみだのあとがうっすらと残っていました。少年は手帳を胸にしまうと、まっすぐに女の子を見て答えました。
「私はあなたに会いたくなかった。
でも、あなたは私に会うしかなかった」
女の子は何が何だかわからなくなりました。それでもすぐに、今は夢の中、と思い出すと、ずっとわからなかったことを聞いてみようと思いました。
「ねえ、教えてほしいことがあるんだけど」
女の子は話しかけました。少年は返事の代わりに、静かにうなずきました。
「…人は死んだらどうなるの? わたし、ずっと一人になっちゃう気がして…怖いの」
女の子はしぼり出すように話すと、真下を向いて目をつむりました。少年は、優しく答えました。
「大丈夫。あなたが思ってたようなことはありませんよ」
女の子は顔をあげて、またじっと少年を見つめました。
「本当にそうなの? わたし、考えれば考えるほど怖くなって。みんなに聞いても、すぐに治るよって言うだけで、誰も教えてくれないの。この病気は治らないって、わたしが一番わかってるのに」
少年は女の子の手をとって言いました。
「心配しないでください。私が神様にお願いしておきますからね。私の手をにぎると、元気が出ますよ」
女の子はクスッと笑いました。
「あなたが神様に。それじゃあ、お願いしますね」
女の子はほほえんで、少年の手をにぎりました。
「なんだか安心したわ。わたしね、ずっと入院してて、何もかもいやになって、泣いてばかりだったの。でも、ちょっと前に気づいたの。わたしが泣くと、みんなも悲しい顔をするし、わたしが笑うと、みんなも笑顔になるって。私はみんなと笑っていたい。だから私も、できる限り笑って生きようって決めたんだ。体はほとんど動かなくなっちゃったけど、顔はまだ動かせるの。わたしって運がいいのかもね。…話を聞いてくれてありがとう」
女の子は明るく笑って涙をふきました。
「死を考えることは、生を考えること。あなたは一生懸命笑い、一生懸命生きたのですね。これからも胸を張って生きてくださいね。さあ、ちょうどバスが来ますよ。次はどんなところでいきたいですか。あなたの願いをかなえますね。好きなところを言ってください」
女の子ははっと少年を見ると、目を輝かせてすぐに答えました。
「わたし、野原を思いっきり走り回りたいなあ。あと、みんなと同じように学校へ行って、友だちを作りたい。友だちといっぱいおしゃべりするの」
「わかりました。夢の続きにお送りしましょう」
「あなたも一緒に行こうよ」
「いえ。私はここで仕事ですので」
「そっか。また会えるかな」
バスに乗りながら女の子が聞きました。少年はバスの運転手と目を合わせると、笑顔で答えました。
「どうやら次に私たちが会うのは、ずっとずっと先になりそうですよ」
少年の言葉を聞いて、女の子は静かにうなずきました。
「そっか。それじゃあ、さよならだね」
「そうですね。さようなら。幸せに生きてください」
バスは走り出しました。女の子が席に座ってから振り返ると、少年の姿は影も形もなく消えてしまっていました。
女の子は短く深呼吸をすると、すぐに前を向き、バスの行き先を見つめました。バスがどこに向かうのか、行き先でどんな出会いがあるのか、嬉しくて楽しみで仕方ありませんでした。
バス停に残るのは、少年の落とした涙の跡だけでした。
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12歳くらいの子どもから、謎解きの要素のある物語を作ってほしいといわれてので、書いてみました^^
インしたら一分前にコメントがあったから、
びっくりして飛んできました笑
おともだちと遊ぶんや~( *´艸`) いいなぁ~(*´ω`*)
京都で久々の再開やと、どっかいったりするん?おうちでおしゃべり?
夏休み、たのしんでますよ~( *´艸`)
今日は妹のSwitchをかりてあつもりとかしてます笑
お久しぶりですね~!
そうなんですね!
今回はおともだちに会いに、とかですか?
結構ちょくちょく京都にも来られるんですか?
タウンでお見掛けして話してみたいなーって思ったので
勇気を出してコメントを残してみました。
もし気が向いたらお話してください(○´∀`○)ノ
お元気ですか?
ずいぶんとご無沙汰をしてしまいました。
申し訳ありません。
やっとというか、ついにというか、戻ってまいりました。
またお話できることを楽しみにしていますね。
訪問ありがとう
謎なぞ^^