Nicotto Town



俺なりの

俺は赤が嫌いだった。
嫌でも目に入る赤。
戦隊ものでは絶対にリーダーだった赤。

それこそ、こっちに着たばかりのころはやんちゃばかりして、みんなを困らせた。
赤を黒に染めようとしていた。
俺の赤い心の中に黒い染料を混ぜようとがんばっていた。
なぜなら、赤という色が嫌いだったから。

こんな人間なら要らない。
そう言って何度自分自身を傷つけたことだろう。
俺の手首にはたくさんの線が残っていた。
この傷口から真っ赤な血が流れていくのを見ると興奮した。
俺の中から赤が減っていっている気がして嬉しかった。
ぞくぞくした。

この赤の仮面にたくさんの俺を貼り付けた。
がんばりやの俺。
しっかりものの俺。
責任感のある俺。
優しい俺。
リーダーの俺。

だけど、この仮面は自分自身を削るための凶器にしかならなかった。
いつからか、涙も流せなくなった。
流れなくなった。
鏡を見るといつも通り、笑顔な俺。
気づかれたくないけど、気づいてほしいなんてわがままだよな。

だって、真っ赤な仮面をとってしまったら、俺には真っ黒な心と、手首の傷しか残りやしない。
だったら、いっそこのまま気づかれないほうが楽なんじゃないかって思う。

「なぁ、泉。
 いっそのことこのまま居なくなっちゃいたいなー、俺。」
泉に向かってそうつぶやくと、泉は驚いた顔をして俺を見た。
「アキラが居なくなっては困ります。
 俺たちはアキラのことが大好きなんですから、勝手に居なくなったりしないでくださいよ?」
泉の声は問いかけなんかじゃなく、俺に対しての本音であった。

「なーんてな、全部嘘だよ。
 今日はエイプリルフールだしな。」

さらりと返す、現在の時刻は午後12時10分。
もう、嘘は付いちゃいけない時間。

「そうですか。
 ならよかったです。」
何も知らない泉は少しうれしそうな顔をして答えてくれた。

ごめん。ごめんな泉。
全部嘘で、全部本当なんだ。

嘘吐きで間抜けな俺の精一杯のSOS。
誰かが気付いてくれる日まで。


・・・・俺は、ここに居られるだろうか。


END

#日記広場:自作小説

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2015/04/01 22:30
おお面白い展開



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