俺なりの
- カテゴリ:自作小説
- 2015/04/01 20:59:19
俺は赤が嫌いだった。
嫌でも目に入る赤。
戦隊ものでは絶対にリーダーだった赤。
それこそ、こっちに着たばかりのころはやんちゃばかりして、みんなを困らせた。
赤を黒に染めようとしていた。
俺の赤い心の中に黒い染料を混ぜようとがんばっていた。
なぜなら、赤という色が嫌いだったから。
こんな人間なら要らない。
そう言って何度自分自身を傷つけたことだろう。
俺の手首にはたくさんの線が残っていた。
この傷口から真っ赤な血が流れていくのを見ると興奮した。
俺の中から赤が減っていっている気がして嬉しかった。
ぞくぞくした。
この赤の仮面にたくさんの俺を貼り付けた。
がんばりやの俺。
しっかりものの俺。
責任感のある俺。
優しい俺。
リーダーの俺。
だけど、この仮面は自分自身を削るための凶器にしかならなかった。
いつからか、涙も流せなくなった。
流れなくなった。
鏡を見るといつも通り、笑顔な俺。
気づかれたくないけど、気づいてほしいなんてわがままだよな。
だって、真っ赤な仮面をとってしまったら、俺には真っ黒な心と、手首の傷しか残りやしない。
だったら、いっそこのまま気づかれないほうが楽なんじゃないかって思う。
「なぁ、泉。
いっそのことこのまま居なくなっちゃいたいなー、俺。」
泉に向かってそうつぶやくと、泉は驚いた顔をして俺を見た。
「アキラが居なくなっては困ります。
俺たちはアキラのことが大好きなんですから、勝手に居なくなったりしないでくださいよ?」
泉の声は問いかけなんかじゃなく、俺に対しての本音であった。
「なーんてな、全部嘘だよ。
今日はエイプリルフールだしな。」
さらりと返す、現在の時刻は午後12時10分。
もう、嘘は付いちゃいけない時間。
「そうですか。
ならよかったです。」
何も知らない泉は少しうれしそうな顔をして答えてくれた。
ごめん。ごめんな泉。
全部嘘で、全部本当なんだ。
嘘吐きで間抜けな俺の精一杯のSOS。
誰かが気付いてくれる日まで。
・・・・俺は、ここに居られるだろうか。
END

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- 黒ノ獅子奏者
- 2015/04/01 22:30
- おお面白い展開
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