Nicotto Town



僕だけ一人 上

注意
・記憶がなくなっていってしまうカノの話。
・自由
・セトカノになる予定
・幸せには終わらせない←

*カノ*

「実験番号NO.71-M23」

遠くから僕のことを見てそういった人が居た。

それを聞いたのは先日、とある研究所に潜入任務をしに行ったとき。
そのとき、僕は少しへまをして、研究員のおじさんによく分からない注射を打たれた。
その後、僕は深い深い、眠りに落ちた。

目を覚ますと僕は知らない部屋に居た。
「実験番号NO.71-M23」
遠くから聞こえた声。
「お前を今日から新たな実験体とする。
 まぁ、その首輪がすべての情報を教えてくれるからNO.77-M23は別に帰ってもいい。」

男がそういったとき、僕の目の前の扉が開いた。
任務は達成できていないが、僕が無茶をするとまたみんなに迷惑をかけてしまう。
直感的に僕は感じた。
迷惑をかけることはいけないこと。
誰に言われたわけでもないが、今までの経験上、だ。
迷惑をかける人は嫌われる。
泣いてる人は嫌われる。
僕はそう思っていた。
とりあえず、僕は体はどこも変じゃないからと、首輪だけ欺いてアジトに帰った。

「ただいまーっ」
がちゃりと扉を開ける。
「バカノッ!
 遅いじゃないか!
 しん・・・なんでもない。」
そういって僕のことを殴るキド。
「ぐへっ!
 何で殴るのさぁ~
 もしかして、心配してくれた?」
ヘラリと笑っていってみる。
「心配なんかしてないっ!
 ただ、お前に腹がたっただけだ。」
なんだかんだ、心配してくれているのがキドらしい。
「あのさ、ちょっと言いづらいんだけど・・・
 途中で任務失敗しちゃって・・・」
表情は欺かずに言う。
「本当か!?
 怪我とかしてないよな!?」
キドが思わず声を上げる。
「それは大丈夫だよ
 でも、ごめんね、失敗しちゃった。」
「お前に怪我がないだけで充分だ。
 無茶だけはしてくれるなよ?」
「分かってるよ」
と笑って返した後、疲れたからちょっと寝てくるね。と言って僕は自室に帰った。

「ねぇねぇ、シンタロー君」
「ん?
 何だ?」
「・・・・あれー?
 何言おうとしてたんだっけー?」
本当に思い出せない。
どうしてだろう。
「カノらしくないな。
 それより、そういう忘れ方今日、何回目だよ」
シンタロー君、僕がぼけたとでも言いたいのか。
「シンタロー、それがカノの物忘れは今日にはじまったことじゃないんだ。 
 あの任務の翌日からこんな感じでな。」
「え、ちょっとひどくない?」
そんなことはないと言い返してくるキ・・・・あれ・・・?
なんて名前だっけ。
目の前に居る見慣れた少女の名前はなんだったっけ?
先ほどまで話していた赤ジャージの青年の名前はなんだっけ?
僕は・・・・誰だっけ?
「・・・ノ!お・・カノ!おい、どうしたんだよ。
 本当に1回病院に行ってきたらどうだ?」
多分この少女は心配してくれているのだろう。
「あぁ・・・うん。
 そうするよ、明日にでも。」

翌日、僕は一人で病院に向かった。
「鹿野さん、大変申し上げにくいのですが・・・」
このせりふを僕は知っている。
余命宣告のようなものだ。
「・・・記憶障害という病気です。
 現在の医学ではどうすることもできません。
 これからさき、さらに記憶が弱っていくことだと思います。」
僕が記憶障害・・・・?
忘れっぽいのもそのせい?
「あ、ありがとうございました・・・。」
病院の先生は何も言わず申し訳なさそうな瞳で僕を見送った。

アジトに戻るとキドがやけに心配そうに僕にどうだったか聞いてきた。
僕が素直に記憶障害だったとでも言うと思ったのか。
「ううん。
 心配ないよ。
 疲れがたまってんだろうって先生が言ってた。」
ごめんね、キド。
嘘だ。
僕はやっぱり嘘吐きだ。
大切な幼馴染に、大切な仲間に、大切な家族に嘘をついた。
ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。

「カノ・・・?
 大丈夫か?
 熱でも・・・・って熱あるじゃないか。
 おとなしく寝とけよ?
 あとで、お粥作って持っていくから。」
「あ、うん、ありがと・・・」
と返して僕はふらふらと部屋に戻った。
早く能力をときたい。
でも、キドがくるって言ってた。
今すぐにでもこのベッドに倒れこんで寝てしまいたい。
でも、見つかったら。

そんなことをぐだぐだ考えている時、とてつもない頭痛に襲われた。
僕はその痛みから逃れるかのように意識を手放した。

「ん番号、NO.71-M23
 お前は、近いうちに・・・・」
聞き取れない。
ねぇ、何ていったの?
ねぇ・・・・っ!!!
僕は真っ暗な世界に居た。
誰も居ない。
さっきから何も聞こえなくなった。
夜の世界とはまた違った怖さをまとっている。
この暗さが、どんなものなのか僕は知っている。
この暗さが、どれほど怖いものなのか僕は知っている。
昔、母さんを連れ去った暗い世界。
僕と白い僕はそこに立っていた。

―ねぇ、修哉。
    病気のこと、どうするの?

「どうするって何がさ」

―あいつらに話さないのかなーって

「うん。話せるはずがないじゃないか。」

―でも、気付かれる前にけりをつけなくちゃならないでしょ?
     だから、どうするのかなーって思ってさ

「気付かれる前に命を絶つつもりだよ。
 姉ちゃんと同じ方法で」

―覚悟は決まってるの?

「うん、もちろん。
 でも、あと少しだけこの幸せを感じさせていてほしい。」

―分かった。
   修哉の願いは僕の願いだもん。
     最後の最後まで修哉に仕えるよ。

「ありがとう。
 白い僕。
 そろそろおきないといけないから、今日はこれで」

そういって手を振ると僕の意識は再びやみに飲まれた。

目を開くと、見慣れた白い天井が合った。
首を動かして横を見るとセトが僕の手を握り締めて下を向いていた。
「・・・セト?」
僕がそっと声をかけるとセトは顔を上げて僕の顔を見てから抱きしめた。
「セトッ
 くるし・・・っ!」
「わっ!
 ごめんっす!
 目が覚めてよかったっす~!
 お粥食べるっすか?
 っていうか、それより、その首輪なんすか・・・?」
見つかった。
そりゃあそうか。
寝落ちしていたんだから。
寝ている間は能力も使えっこないし。
「え、えっとねー、最近の僕なりのおしゃれだよー」
必死にあせってる様子を欺く。
無茶かな・・・・?
今日か明日にはばれることだ。
その前に僕は命を絶つ。

「へぇー・・・・
 そうなんすか!
 かっこいいっすね!」
セトは素直だから僕の嘘を本当のことだと思ってくれたようだった。
ごめんね。
「うん
 僕はもう大丈夫だから共同スペースでみんなと遊んでおいでよ」
僕が笑うとセトはでもー・・・と首を縦に振らなかった。
「いいのいいの
 僕もちょっとやりたいことあるし!ね?」
この言葉にセトは弱い。
やりたいことがあるというのは嘘じゃない。
最後にやりたいこと。
「わかったっす・・・・。
 何か合ったら呼ぶんすよ?
 わかったっすか?」
セトに聞かれると僕はうんと返した。


下に続く

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