淡い夢
- カテゴリ:小説/詩
- 2015/04/14 09:46:18
木々が美しく芽吹くころ
車を走らせて森に行く
そこには二人の思い出の場所が
いつまでも変わらぬ姿で
迎えてくれる
車を降りて林に入る
まだ冷たい空気の中を
暖かさを待つように
ひっそりとつぼみがついて
花咲く季節を待っている
二人の間に花咲く頃は
一シーズンしかなかった
傷ついた心を持つ者同士
パズルはかみ合わなかったのか
もうどうしようもなかったのか
いつも憂鬱な心になる時
ここに来ていた
でもそれは傷をなめ合うだけで
本当の姿ではなかったのかもしれない
本当の愛の形では
光がさえぎられるように
何かが黒く影を落として
いつか来る別れの時を
知らしめていたのかもしれない
だから長く続かなかった
分かっていたのか
二人の心は
それでもよかった
でも 怖かった
現実を見るのが怖かった
また車を走らせて
街へと戻っていく
そこには思い出の音楽が流れて
あの日をよぎらせていく
でももういらない
楽しかった日々も
悲しかったあの時も
シナリオ通りだったのか
始めから決められていものだったのか
今はもう分からないけれど
もう責めない
二人過ごした時のことを
どんなに儚い日々であっても
大切な毎日だったから
嘘にはしたくない
それでも車は進んで行く
音楽が変わった時でさえ
未来への道はまだ見えないけれど
それでなければ悲しすぎる
だから明日へと走っていく