旅
- カテゴリ:小説/詩
- 2015/04/28 09:26:22
小さな列車に揺られて
小さな旅に出る
行くあてもないままに
心が飛んでいく行先には
あなたの心が待っている
待っているなんで嘘
本当は遠くに行ってしまった
私の手の届かない所に
列車では追いつかない所に
そこはどこだと言うの
時折止まる小さな駅には
乗り込む人などいなくて
さみしげに扉が閉まって
私一人が残されたように
時が空気のように流れて行く
終着駅に着いた頃には
もう太陽が頂点に登る
まだ真夏を知らないそれも
季節を追いかけている
まるであなたを追う私のように
誰も知らない土地で
涙も出てこないで
二人の時を思い出す
こんな旅をしたものだった
ミステリーだけが待っている旅を
二人が歩いた道には
もう足跡は残っていない
乾いた砂が隠していって
どこに行ったのかもわからない
それはまるで私達のよう
もしこんな思い出が
飛び去っていくとしたら
何を乗せて行くんだろう
そこには悲しみしかなくて
重すぎる荷物が載せられなくて
きっと飛べないに違いない
夕闇が迫る前に
この駅から出て行こう
どこに行くのかはまだ分からないけれど
帰り路だけが知っている
そこには何もないことを