水の都にてリザードマン討伐
- カテゴリ:自作小説
- 2015/04/29 11:00:19
ここは水の都サンクトゥス。魔法使いの聖地だ。
ここには杖を持たない人間は歩いていない。ボクも駆け出しの魔法使いでギルドの招集でここにやってきた。
目的は都の北、トカゲ湖にいるリザードマンの討伐。
今回はギルドマスターであるファザル様とセシル様も参加されると聞いている。これほど心強い話も無い。
ボクの魔法使いの初陣ってわけじゃないが、魔物討伐というステータスは欲しい。まあ、ボクはまだ2サイクルしか会得していないほんとに駆け出しだから役に立てるか分からないけど。
まあ、ファザル様とセシル様の後方支援をして終わりってところだろう。
相手は300匹のリザードマン。こっちはそれに対して10人の魔法使い。
そのうち2人は3サイクルを会得されているギルドマスターファザル様とセシル様だ。たぶん、この2人だけでも十分倒せるはずだ。
しかしほんとに杖を持った魔法使いばかりだな。
「ちょっと、お兄さん!落ちるわよ!」と、後ろから声をかけられる。
「え?」ってうわぁああああ
落ちた。冷たい。それに流されている・・・。
「うわぁー誰かー」
「お兄さん、捕まって」と、さっきの声の人だ。
「はい!」と、ボクは差し出された手をつかむ。
すると身体が急に軽くなったのか、どうなったのか分からないが・・・丸い泡に包まれてボクはゆっくりと石畳の道路の上へあがった。
「よかったわね、お兄さん。あのまま流されていたら人魚の餌になっていたわよ。杖、落としてないよね」と、金髪で赤い目の女性は笑う。
「ええ、はい。落としてません。・・・杖、持ってないと人魚に眠らされ、食べられるって言うのはほんとなんですね」
「そうねぇ、そもそも彼女たちに人間と一緒に過ごすメリットが無いのかもしれないわ。例えばゴキブリっているでしょ。あれ、見つけたらすぐに殺してしまうでしょ。まあ、例えれば害虫くらいにしか見ていない。そんなところじゃないかしら」
「・・・まあ、そうかもしれないですね。ところでお姉さん、杖、持ってませんよね。大丈夫なんですか」
「わたし?わたしは大丈夫。何せ北のトカゲ湖を通って来たから」
「あはは。冗談もうまいですね・・・お姉さん、面白い。ボクはリッツエル。リッツとお呼びください。ところで宿を探しているんですが、知りませんか」と、ボクは聞く。
「そう?面白い?まあ、わたしにはよく分からないけど。あなたも宿を探しているの?実はわたしも探しているのよ。よかったら一緒に探さない?あっ、わたしの名前はレティー・・・いえ、レティでいいわ」
「じゃあ、レティ。一緒に探すって事でいいですか」
「うん。いいわよ」
「・・・ボク、とりあえずびしょ濡れなんで、ハッ、はっくしょん」
「そうね、早く宿に行けるといいね・・・ところでその肩からぶら下げている布のカバン、濡れてないわね。赤い輝石でも入れているの?」
「え?どうしてわかったんですか?杖の輝石が壊れた時の予備に入れておいたんです」
「そう。それなら・・・カバンの中の物は大丈夫って事よね。何か旅行グッズとか持ってきてないの?」
「ええ、たしか。旅のガイドを購入しておいたので・・・ちょっとお待ちを。・・・・・・あったあった。ほんとですね、濡れてませんね。知らなかったです。赤い輝石レヴァンテインにこんな効用があったとは。ところでレティも海の旅は退屈だったでしょ。3カ月もかかりましたからね。何せ」と、
ボクはレティを見る。
「そう?わたしはそんなに大変じゃなかったわよ。トカゲ湖から来たから」
「・・・・・・」ボクは言葉が出なかった。これから討伐に行く湖を通ってなんか来れるわけないじゃないか・・・それともこの人は記憶障害でも患っているのだろうか。
「どうしたの?」
「あの本気で言っているんですか。いえ、その・・・いや、ボクの思い過ごしですね。きっとそうです。あなたのユニークさには畏れ入りました。ええっとそれよりもガイドブックによると・・・街道は途中で無くなり、カヌーよる移動・・・ああ、それで落ちたのか。ええ、それはいいとして・・・カヌーっていつ来るんでしょう」
「そうねぇ、ほら・・・あれじゃない」と、レティの指の方向を見る。
「わわわ」と、ボクはガイドブックを落としてしまった。
魔法の力によってカヌーを引っ張っている人魚が迫っていた。
腰から上は女性で、胸をピンクの貝殻で隠している。髪は明るい緑色、目は青色だ。そして腰から下は赤いウロコで魚そのもの。
人魚はボクたちの前で止まり、お辞儀をした。
「お待ち申しておりました。われらが主様。われらの王にして神であるあなた様にいちばん早くお逢いできたこの嬉しさで胸が張り裂けそうです」
「・・・・・・」何これ?ボクは意味が理解できなかった。主?王?神だって。何を言っているんだ、この人魚は?
「その言葉だけでわたしには十分よ・・・乗せてくれる、人魚さん。あなたのおススメの宿へ案内してくださいな」と、レティは人魚に話しかけている
「はい、王様。わたくしの名はマカと申します」と、人魚、マカはまたお辞儀をした。
「・・・ねえ、レティ。きみ、王様だったの?それも人魚の?」と、ボクは顔をしかめる。
「あら、リッツ。そんなわけないでしょ。わたしの姿を見ればわかるでしょ。わたしはどんな服を着てる?ね」
「・・・赤いローブだね。まあ、たしかにどこにでもいる女性魔法使いかな。うん、そう信じておくよ」と、ボクは答えた。
「貴様・・・王に向かってそのような口答え・・・二度とわたしの前でするな。その時は貴様の命を奪う」と、人魚、マカはボクを睨む。
「・・・・・・はい」と、ボクは答えるしかなかった。あれれ、やっぱりレティは王様で、人魚なのか?今はローブで人魚の足を隠しているだけなのか。うーん。まあ、考えても分からないな。
「リッツ、ごめんね。さあ、乗りましょう」と、レティはカヌーへ乗り込んだ。ローブの下にはちゃんと人間の足が見えた。ボクはますますわけがわからなくなりながらも後をついて乗り込む。
カヌーはゆっくりと動き出した。川を下り、右に曲がると、今度は川を上がった・・・これも魔法のなせる技だな・・・それから右へ曲がったり、左へ曲がったりを二回ほど繰り返してボクたちはカヌーから降りた。レティはマカに二言、三言感謝の言葉を述べると、マカはまたお辞儀して「もったいなきお言葉」と、頭を下げたままボクたちを見送った。
石畳の床をしばらく歩くと、宿はあった。
宿の名前は「人魚の涙」・・・ガイドブックによると1流の宿だ。
こんな宿に泊まるお金なんて持ってないよ。どうするの?これ?
黒い大理石で造られた壁、屋根には白い大理石を加工した人魚の像。
・・・無理・・・。無理だって泊まれるわけないよ。ギルドから貰った旅費
、全額ここで使いきってしまう勢いだよ。
宿の入口から黒い服を着た紳士が二人、やって来る。
二人の紳士はほぼ同時に頭を下げて、下を向いたまま話し出した。
原稿用紙30枚近くある作品のため、1度にアップロードできませんでした。
残りは字数と相談しながら徐々にアップします。