日本妖刀列伝:八
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- 2015/06/03 20:59:54
『八文字長義』は、南北朝の刀鍛冶、備前長船長義の作品である。
長義は備前長船本流とはやや趣の変わる作風であるが
凄まじい切れ味の伝説を持つ作品を幾つか生み出す。
六股長義や山姥切といったところがその代表だろうか。
この刀、元は奥州岩城の岩城家の所蔵品であった。
岩城家の娘が佐竹家に輿入れした際に贈られたものであり
この娘こそが、あの佐竹義重の母親である。
戦国一の暑がり 戦国一の萌え系ツインテールの異名もある
佐竹義重はこれを普段差しにしていた。
義重の佩刀『八文字長義』
この刀はいかなるエピソードを持っているのか
伝承を紐解いていくとしよう
時は戦国 永禄10年(1567年)
北条氏政は小田原を発ち、下妻城へ向かった(下妻城は現茨城県西部)
「と、殿ぉ~一大事です!北条の大軍が攻めてきました!」
下妻城主 多賀谷政経は、そんなに豪の者って訳ではなかった。
「はわわわ どうすれば良いのじゃ」
「北条が大嫌いなあの男に助けてもらいましょう」
「それは名案! さっそく馬を飛ばせ!」
こうして、多賀谷政経は佐竹義重へと救援を求めた。
「何? 北条~?」
義重の顔が苦虫を潰したように変わった。
この男、北条と伊達が大嫌い。
自分家のすぐそばに北条の領土があることには
到底耐えられそうになかった。
「こんなとこまでノコノコやってくるとは…… 上等だよ やってやるぜ!」
義重は二つ返事で救援を了承。
たちまち軍を召集すると即座に下妻城へと向かった。
「はわわわわ 囲まれちゃいました」
その頃多賀谷政経は、まだしぶとく北条の攻撃から耐えていた。
「今しばらくの辛抱です! 奴は必ず来ます」
「早く来てくれぬかのう~」
すると彼方から砂埃が近づいてきた!
「よう~待たせたな 生きてっか? 政経」
「義重!」
砂埃の正体は、佐竹義重の騎馬軍であった。
「よーし これより北条どもをぶっとばす! 俺に続け~」
義重は先陣を切って北条の陣へと向かった。
北条の軍のほうでも、義重の援軍は確認しており
軍の一部をそちらへと差し向けた。
「先頭にいるのは義重だと!? ふざけおって
誰かあいつを止められるものはおるか?」
「ここにいるぞ! 我に任せられよ!」
一人の騎馬武者が名乗りを上げた。
北条でも腕利きの男だ
「おお、お前ならば……。 任せたぞ!」
「御意!」
男は義重目指して一目散に馬を走らせた。
「なんだお前?」
義重は、目の前に立ち塞がった騎馬武者を一瞥した。
「貴軍の勢いここで止めさせて頂きます」
「やれるもんならやってみろよ」
「しからば、お覚悟を~」
騎馬武者は馬上より、二度三度剣撃を加える。
されども、義重には届かなかった。
「間合いが遠すぎる 刀ってのはこう振るんだよ!」
義重は大刀を騎馬武者の頭上から一撃した。
その一撃は被っていた兜をまるで紙でも切るみたいに
容易く真っ二つに切り裂きそのまま頭部をも真っ二つに割った。
割れた頭部は、騎馬武者の騎乗していた馬の左右に八文字を描いて落下した。
この凄惨な光景に、味方は鼓舞し、敵方の北条軍は畏怖した。
北条軍は、勢いづいた佐竹軍に押し戻され下妻より撤退した。
「いや~とんでもない切れ味っすね。
八文字に首が落ちるなんって初めて見ましたよ」
「八文字…か……。悪くない響きだ」
こうして義重は自らの愛刀を八文字長義と名付けたのだった。
さて今回のお話、いかがだったでしょうか?
兜の上から真っ二つって、どういう切れ味&腕力してるのやら……。
全く鬼と呼ばれた男に相応しい武器ですね。
尚、オニヨシさんこと鬼義重の活躍は
鬼を名乗りて 巻の2で詳しく書いておりますので
興味のある方はこちらをどうぞ
http://www.nicotto.jp/blog/detail?user_id=226561&aid=47671588
日本妖刀列伝:八 『八文字長義』