Nicotto Town



夢の中で会えたなら。

彼に会えるのならば夢の中ででもいい。
心からそう思った。

目を瞑るとすぐに思い出せるあの一瞬。
俺めがけて走ってきたそれから俺を庇って彼は死んだ。

1年前のあの日、俺らアルスマグナはみんなで買い物に来ていた。
ばっと走ってきたそれ。
それは俺にめがけて走ってきた。
逃げなきゃいけない、そう思った途端、急に足が動かなくなった。
目の前までそれが迫ってきたとき横から感じた確かな衝撃。
ぱっと振り返ると笑顔で笑っている彼の姿があって、
それで、ぐしゃっていう、嫌な音が聞こえた。
さっきまでの場所から数メートル離れた場所に彼は倒れていた。
地面には引きずられたような血のあとが残っている。
「タツキ先輩!!」
俺は手に持っていた紙袋を投げ捨てて彼の元に走りよった。
「そ・・・・くん・・・・?
 よか・・・った・・・ぶ、じで・・・・」
そこで彼はそっと目を閉じた。
彼の目じりにはうっすらと涙が溜まっていて、それでも彼は柔らかな笑顔を浮かべていた。
「タツキ先輩、もうすぐ救急車が来ますから!!!
 お願いします!!
 ・・・死なないで・・・!」
また、俺の目からも涙はあふれていた。
救急車が到着したころにはとっくに彼の体温は冷え切っていた。

彼の葬儀中、みんな泣きまくっていた。
俺の目から一滴も涙が出なかった。
悲しいのに、辛いのに、苦しいのに、俺の瞳はもう出ないんだ止めてくれといわんばかりだった。
あっという間に葬儀は終わってしまい、火葬上に着いた。
火の中で居なくなっていく先輩を見届けた。

寮に帰っても、服なんか着替える気力もなかった。
勉強机に座り、今までのアルバムやスマホの写真フォルダを見る。
写真に写った先輩はどれも笑顔で笑っていた。

『奏くーん!
 一緒に写真撮ろ?』

『ちょっとー、僕ばっかり撮らないでよぉ~
 奏くんもっ♪』

『早く早くー!
 こっちだよ~!!』


俺の記憶にある先輩はいつでも、笑顔だった。
あの笑顔に会いたい。
夢の中でもかまわない。
もう一度俺に笑顔を見せてはくれないか?
その優しい、声と笑顔を俺に向けてくれないか?

「奏くん♪
 どうしたの?
 そんな浮かない顔して」
心配そうに話しかけてくるタツキ先輩がそこにはいた。
「先輩!?
 良かった。
 俺、心配で心配で・・・
  どうして、どうして先輩は帰ってこないんですか?」
タツキ先輩は儚げな笑みで俺を見つめた。
「奏くん、僕はもう『死んじゃった』んだよ
 だから、もうみんなのところには帰れないんだ」
本当はどこかで分かってたんだ。
先輩はもう死んでしまったことを。
その事実を受け入れたくなくて、でも、突きつけて欲しくて

先輩の体を光が包み込んだ。
「そろそろ時間みたい
 奏くん、アルスをよろしくね
 みんなには見えなくても僕はずっとそばに居るからね
 最後に・・・今までありがと、大好きだよ」
その言葉を最後に先輩の姿はみえなくなった。
「やだ、先輩
 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!!!
 先輩!!!」

先輩はいつでも俺の一歩手前をあるいていた。
だけど、その先輩はふと俺の前から姿を消した。

俺は置いていかれたのだ。

けれど、不思議とそれでもいいと思えた。
俺は先輩の分まで生きなければと、そういう風に考えることができた。

ぱっと目を開く。
重く閉じそうな目を開き顔を洗う。
今のは夢だったのだろうか。

ちゃんとありがとうって言うんだ。

もう一度、夢の中で会えたなら。


END
久々に書いた。
そして、死ねた。
知らん、そんなもの←

#日記広場:自作小説

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2015/06/22 21:02
おぉ…奏くん可愛すぎるw
最後の嫌だを連呼するところ、想像したらヤバいなぁww
タツキっく可愛い
奏くんを庇うってところがまたタツキっくらしくて…

うん、流石b



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