夢の中で会えたなら。
- カテゴリ:自作小説
- 2015/06/22 20:47:22
彼に会えるのならば夢の中ででもいい。
心からそう思った。
目を瞑るとすぐに思い出せるあの一瞬。
俺めがけて走ってきたそれから俺を庇って彼は死んだ。
1年前のあの日、俺らアルスマグナはみんなで買い物に来ていた。
ばっと走ってきたそれ。
それは俺にめがけて走ってきた。
逃げなきゃいけない、そう思った途端、急に足が動かなくなった。
目の前までそれが迫ってきたとき横から感じた確かな衝撃。
ぱっと振り返ると笑顔で笑っている彼の姿があって、
それで、ぐしゃっていう、嫌な音が聞こえた。
さっきまでの場所から数メートル離れた場所に彼は倒れていた。
地面には引きずられたような血のあとが残っている。
「タツキ先輩!!」
俺は手に持っていた紙袋を投げ捨てて彼の元に走りよった。
「そ・・・・くん・・・・?
よか・・・った・・・ぶ、じで・・・・」
そこで彼はそっと目を閉じた。
彼の目じりにはうっすらと涙が溜まっていて、それでも彼は柔らかな笑顔を浮かべていた。
「タツキ先輩、もうすぐ救急車が来ますから!!!
お願いします!!
・・・死なないで・・・!」
また、俺の目からも涙はあふれていた。
救急車が到着したころにはとっくに彼の体温は冷え切っていた。
彼の葬儀中、みんな泣きまくっていた。
俺の目から一滴も涙が出なかった。
悲しいのに、辛いのに、苦しいのに、俺の瞳はもう出ないんだ止めてくれといわんばかりだった。
あっという間に葬儀は終わってしまい、火葬上に着いた。
火の中で居なくなっていく先輩を見届けた。
寮に帰っても、服なんか着替える気力もなかった。
勉強机に座り、今までのアルバムやスマホの写真フォルダを見る。
写真に写った先輩はどれも笑顔で笑っていた。
『奏くーん!
一緒に写真撮ろ?』
『ちょっとー、僕ばっかり撮らないでよぉ~
奏くんもっ♪』
『早く早くー!
こっちだよ~!!』
俺の記憶にある先輩はいつでも、笑顔だった。
あの笑顔に会いたい。
夢の中でもかまわない。
もう一度俺に笑顔を見せてはくれないか?
その優しい、声と笑顔を俺に向けてくれないか?
「奏くん♪
どうしたの?
そんな浮かない顔して」
心配そうに話しかけてくるタツキ先輩がそこにはいた。
「先輩!?
良かった。
俺、心配で心配で・・・
どうして、どうして先輩は帰ってこないんですか?」
タツキ先輩は儚げな笑みで俺を見つめた。
「奏くん、僕はもう『死んじゃった』んだよ
だから、もうみんなのところには帰れないんだ」
本当はどこかで分かってたんだ。
先輩はもう死んでしまったことを。
その事実を受け入れたくなくて、でも、突きつけて欲しくて
先輩の体を光が包み込んだ。
「そろそろ時間みたい
奏くん、アルスをよろしくね
みんなには見えなくても僕はずっとそばに居るからね
最後に・・・今までありがと、大好きだよ」
その言葉を最後に先輩の姿はみえなくなった。
「やだ、先輩
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!!!
先輩!!!」
先輩はいつでも俺の一歩手前をあるいていた。
だけど、その先輩はふと俺の前から姿を消した。
俺は置いていかれたのだ。
けれど、不思議とそれでもいいと思えた。
俺は先輩の分まで生きなければと、そういう風に考えることができた。
ぱっと目を開く。
重く閉じそうな目を開き顔を洗う。
今のは夢だったのだろうか。
ちゃんとありがとうって言うんだ。
もう一度、夢の中で会えたなら。
END
久々に書いた。
そして、死ねた。
知らん、そんなもの←
最後の嫌だを連呼するところ、想像したらヤバいなぁww
タツキっく可愛い
奏くんを庇うってところがまたタツキっくらしくて…
うん、流石b