Nicotto Town



あの場所に 1

「また、いつもの場所でな」


その約束は未だに果たせていない。


Side *Tatsuki*


僕の所属する部隊がここに着てから5日くらいが経った。

今の状況は本当に最悪だった。

元は50人ほどが所属する部隊だったが、今は隊長も討たれ残ったのは僕ら5人。

僕達は戦うことを放棄して生き延びることを決意した。


5人で居ると見つかる可能性が高くなるから、と二手に分かれることになった。

僕と先生とアキラっちょ。

奏君とぱっくん。

みんなで話し合った末のこのメンバーだった。

二手に分かれる直前、先生は僕達に「生き延びて、またいつもの場所で。約束な」といった。

みんなはその言葉に笑顔で大きくうなずいた。

「じゃあ、解散。」先生の言葉を合図に僕達は逆方向に走り出した。


「とりあえず、アキラとタツキは此処にいて

 俺が安全な場所を探してくるから」

先生は不安げな僕を見て大丈夫、ちゃんと帰ってくるといっていつもの優しい笑みを浮かべた。

「じゃあ、アキラ、タツキのことよろしくな」

先生はそういうと僕達に背を向けて走っていった。


Side *Akira*


「ね、ねぇ、アキラっちょ・・・ 

 先生大丈夫・・・かな・・・

今にも泣きそうなタツキっくの表情を見て改めて実感した。

ここには頼りになる先生も同級生も後輩も居ない。

俺がタツキを守るしかないのだ。


「大丈夫だよ、先生なら。

 なぁタツキ、敵が来ても逃げられるように俺と手、つないどいてくれるか

反射神経や持久力のあまりないタツキとともに行動をするにはそれ相応の工夫というものが必要だった。

そこで、俺と先生が考えたのが手をつなぐということ。


「タツキ、ちょっと走るぞ。」

そういって俺はタツキの手を引いて走る。

タツキと俺との間になるべく隙間を作らないように俺は手の伸ばし加減を調節しながら走った。


5分くらい走っただろうか。

薄暗い建物の中に逃げ込んだ。

此処は俺と先生の二人で決めた隠れ場所。

さっきの場所に俺とタツキが居なかったら先生はきっと此処に探しに来るだろう。

ふと、俺の手を握るタツキのてに力がこもった。

そのわずかな力に気付いた俺はタツキの顔を見る。

タツキは震えていて、目からは涙が零れていた。

「大丈夫、俺がお前を守るから。」

俺は泣きじゃくるタツキの頭をそっと撫でながら俺よりも一回りほど小さな体を抱きしめた。


しばらくすると胸の中から定期的な呼吸の音が聞こえた。

そっと体を離して顔を見るとタツキは安心したような笑みを浮かべて眠りに着いていた。

「・・・そうだよな。

 もう5日以上もろくに寝てないんだもんな」

タツキを抱きかかえて俺は部屋にあるランプを持って押入れの中に隠れた。

しばらくタツキの寝顔を眺めていると瞼が重たくなってきた。

そのまま俺は重たくなった瞼を閉じた。


目が覚めてもタツキはまだ眠っていた。

周りに気配を感じないことを確認してタツキをそっと寝かせて押入れを出た。

敵が来たときに使えそうなものを探すために建物の中を歩き回っていた。

隣の部屋に入ると床に未開封の手榴弾を見つけた。

念のため気配を消して銃を構えて手榴弾を拾いに行く。

拾った後、タツキのもとに戻るとまだタツキはぐっすり眠っていた。

死んでいるのではないかと不安になるくらいの深い眠りだった。

Side *Kento*


俺が一人になってから数時間が経った。

今のところ一度も敵には会っていない。

タツキを守ってほしかったから俺は手榴弾一個以外もって来ていない。

後は全てアキラに任せてある。

ふと、一本奥の通りから気配を感じた。

極力気配を殺してその気配から逃げる。

ここで、死んでしまっては元も子もないのだ。

タツキと約束した以上、いつもの場所に帰らなきゃいけないのだ。

みんなを守る俺が居なくなってどうする。

そう思いながらさっき通った道を引き返すと、今度は俺の進む先から知らない気配を感じた。

逃げ場はない。

仕方がない、敵から逃げることを諦めた俺は気配の少ない方に向かって走り出した。

俺らのように気配を消せる人間が居たとしてもたかが数人だろう。

そのことを知っているからこそできる行動なのだろうと思う。

手榴弾を使ってうまい具合に逃げるしかない。

人の命を奪うことになるが、そうでもしないと俺は生きて約束の場所に行くことができないのだ。

「えいっ」

手榴弾を投げ込み少し距離を置く。

数秒後には大爆発が起こった。

煙が壁のように立ち込める中を駆け抜けた。

もうじきここは敵がたくさん来る。

だから早く逃げなくてはならない。


走って走ってはしり続けていた俺だったが、肩に感じた鋭い痛みに前方へ倒れこんだ。

慌てて右肩に目を向ける。

すると白かった軍服が血に染まっていた。

後ろには敵が居る。

そう悟った俺は必死に逃げた。

もともと戦うつもりなんて俺にはない。

ただ、ただ生きたいだけなのに。

神様はそんなことも許してくれないのか。

右足に銃弾を打ち込まれる。

「あ”ぁ”ぁ”!!!

あまりの痛みに声を抑えられなかった。

ふらふらとよろけた俺は地面に膝をついた。

腰にささった刀を杖しながらも俺は懸命に歩き続けた。

どのくらい歩いたのかも、どのくらいの時間がすぎたのかも分からない。

面白がってついてきていたさっきのやつもいつの間にか居なくなっていた。

ずっと歩いているからか気が遠くなってきた。

それでも、俺は足を止めることをしなかった。

此処で足を止めてしまえばもうみなに会えない気がしたから。

奏と朴は・・・奏がいるから大丈夫だろうけど、タツキとアキラはすごく心配だ。

アキラもしっかりしてるからタツキを危険な目に合わさないようにしてくれるは、ず・・・・・

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