Nicotto Town



約束の場所で 3

Side*Whito*

戦争が終わりを迎えたとき、僕と奏先輩は隣国に居た。
その後、僕と奏先輩は約束の場所に帰るために足を進めた。
何日も何日も歩き続けた。

僕達はやっとの思いで約束の場所に辿りついた。
僕等5人が戦争に行く前に暮らしていた小さな家。
小高い丘にぽつんと佇むそんな家。
家に入るとそこは戦争に行く前と何ひとつ変わっていなかった。
「先輩、僕らが一番乗りみたいでね!」
帰ってこなかったらどうしよう。って不安になる気持ちを押し殺して奏先輩に笑いかける。
「そうですね。
 帰ってくるのをゆっくり待ちましょうか」

皆がそろうにはまだ時間がかかりそうだった。

Side*Akira*

眠ったままのタツキをおぶって俺は歩いていた。
たまたま通りかかった町で優しい人たちに食料と水と服を貰った。
「その子は生きているのかい?」
と、町の人に聞かれた。
「生きてますよ。
俺がそう返すと町の人は良かった、良かったと自分のことのように喜んでくれた。

着替えるための場所を借りて濡らした布で体を拭いて、先ほど貰った服に着替える。
起きないタツキの着替えも俺がさせる。
それにしても本当に男か?と疑問のあがりそうなほど細いからだに可愛らしい顔立ち。
男にしておくにはもったいないなと思いながら着替えさせる。

「ありがとうございました」
そういってタツキを背負う。
「なんだい、もう行っちゃうのかい?」
「はい、俺らには帰ると約束した場所があるので。」
本当にありがとうございましたといって頭を下げて歩き出す。
いい町だった。
みなさんの幸福を心よりお祈りしています。

あれからどのくらい歩いたのだろうか。
数日しか経っていないかもしれないし、数ヶ月経ったのかもしれない。
やっとの思いで自国にたどり着いた。
あと、この丘を登りきれば約束の場所、
俺の、俺たちの家だ。

必死の思いで丘を登る。
いまさらだが、なんでこの丘はこんなに急な坂なのだろうか。
タツキを背負っている俺には少々ばかり・・・・いや、少々どころじゃないくらい辛い坂だった。
丘を必死に登りきると、我が家が見えた。
思わず笑顔が零れた。

「ただいま!」
大声でそういって玄関のドアを開けると居間に泉と朴が座っていた。
「アキラ先輩!!」
最初に声を上げたのは朴だった。
「おかえりなさい。
 アキラもタツキ先輩も。」
泉はそういって立ち上がった。
「おう、ただいま。
 ・・・・なぁ、悪いんだけど、布団引いてくれないか?」

Side*Sou*

アキラが大声を上げながら帰ってきた。
朴のあんなにうれしそうな表情をさしぶりに見た。
ふと、アキラの背中にタツキ先輩が居ることに気付いた。
するとアキラがただならない声色で布団を引いてくれないかと頼んできた。

俺は和室に慌てて布団を引く。
「お待たせしました。」
と、アキラに言うとありがと、とだけ言ってタツキ先輩を布団に寝かせた。
「タツキ先輩どうかしたんですか・・・?
 あと、先生は・・・?」
しょぼんとした朴がアキラに尋ねる。

「順を追って説明するな。
 先生が解散の指示をした後、俺たち3人は隠れる場所を探すことにしたんだ。
 でも、途中タツキの体力を心配した先生が俺たちにその場に居ろ指示を出して、もっと安全なところ探してくるって言って別れたんだ。
 それから、先生には一回も会えてない。
 俺たちはその場に居たんだけど、敵の気配を感じたから、先生と取り決めた1個目の隠れ場所に向かったんだ。
 隠れ場所についてタツキのほうを見たら震えて泣いてた。
 そうとう、いろいろなことに追い詰められてたんだろうな。
 タツキの背中をさすってたらいつの間にかタツキは寝ちゃったんだ。
 戦争が終わってしばらくしても俺たちはずっとその隠れ場所に居た。
 敵が自国に帰っていったのを確認してから、俺はタツキを背負ってここに向かった。
 途中で通りかかった町で水やら服やら食料やらを貰うことができて、ここにたどり着くことができたんだ。」

長くなって悪いと、アキラは言った。
「先生は心配ですが、きっとあの人なら何事もなかったような表情をして帰ってくるでしょうね」
俺が2人のほうを向いて軽く微笑むと2人は大きくうなずいた。

Side*Tatsuki*

僕は真っ暗な世界に居た。
あたりをきょろきょろと見渡すが人の姿はない。
仕方がないから僕は少しばかり辺りを歩き回ることにした。
しばらく、歩き回っていると4人の人影が見えてきた。
近づいてくる4人はすごく楽しそうに笑いながら話していた。
まるで、僕なんか見えていないかのように。
「み、みんな・・・っ!!」
少し声を張ってみるが無意味だったようで。

僕はやっぱりひとりぼっちなんだね。
みんなと出会う前に戻った感じがする。
そのころの僕はずっと一人ぼっちで、たまに人に会った時に見せる笑顔は作り物の笑顔だった。
4人はそんな僕に声をかけてくれた。
「偽者の笑顔じゃなくて、心の底から笑えよっ!!」
そういって僕のほっぺたをつねってきたアキラっちょ。
「笑顔ってすかーっとするんですよ!!!」
太陽のような笑顔を向けるぱっくん。
「先輩、笑ってください。」
微笑みながら話しかける奏くん。
「タツキー、昔みたいに笑えよー」
僕の頭をがしがしと撫で付ける先生。

みんなに会いたいよ。
もう一度その笑顔を僕に向けてよ。

真っ暗闇の中、僕は一人泣いていた。

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