Nicotto Town



お前の居ない夜空

Side*Akira*

アイツの居ないこの世界のこの場所で、俺は毎晩、月を眺める。

「なあ泉・・・・。
 今日も月が綺麗だな・・・」


そんな俺の呟きは真っ黒な空に吸い込まれていった。



俺が時々サボりに使う古い展望台。
こんなに綺麗に空を見ることができるというのに、古いからと、生徒は誰も近寄らない。
そんな場所。

今日は空気が澄んでいるから夜空も綺麗に見えるだろうと思って、現在絶賛片思い中の泉を誘って展望台に行った。

「アキラのくせによくこんな場所を知ってましたね」
そういった泉の横顔はやっぱり誰よりも綺麗だった。
「くせにってのは酷いだろー
 時々授業サボるときに使ってるだけだっての。」
俺が言うと泉はくすっと笑って俺のほうを向いた。
「そうですか。
 じゃあ、これからはアキラを捕まえるためにここまで来なくちゃいけないわけですね」
泉はそういったあともう一度空に向きなおした。


「ねぇ、アキラ。
 月が綺麗ですね」

心臓が張り裂けるかと思った。
月は本当に綺麗だった。
横目で泉をみると耳が真っ赤に染まっているのが見えた。
もう一つの意味でありますように。

「泉」

名前を呼ぶと泉はそっと俺のいる後ろを向いた。
月と泉が重なってとても美しかった。
手を引っ張って俺は泉に唇を重ねた。

一瞬で離れる二人の距離。
泉がぼやけないくらい遠ざかっていった。

「我君を愛す」

俺がそういうと泉は目を見開いた。
「アキラ、知ってたんですね。
  明日は雨でしょうか。」
何て真っ赤な顔で言われても説得力なんかこれっぽっちもない。
「泉、本当におれは泉が好きだ。
 付き合ってください。」
我ながらコンナにしまらない告白なんてみたことがない。
ぞわぞわしながら目を瞑る。

しばらくすると暖かいものに包み込まれる感覚を感じた。
目を開けると俺を抱きしめる泉の姿があった。
あたたかくて優しい感覚。
「こんなおれで良ければおいします」


「じゃあ、帰ろっか」
俺が泉の手を握ると泉も俺の手をそっと握り返した。

もう少しで寮につくという頃。
それは交差点で起こった。
車に引かれかけていた子供を助けて、泉が代わりに轢かれてしまったのだ。
すべてがスローモーションに見えた。
突っ込んでいくトラックも、跳ね飛ばされる泉の体も、泉の体から流れる血も。
俺は慌てて泉に駆け寄った。
「泉!!
 泉しっかりしろ!」

「誰か救急車!
 救急車呼んで!!」

俺の必死の呼びかけもむなしく泉は俺の腕の中で朽ちていった。

夜も深くなったというのに、泣き続ける俺のそばにメンバーはずっと居てくれた。

泉が居なくなったこの日、俺の中で何かがぷつりと切れる音がした。
夜になると泉との思い出の展望台に行った。

雨が降ってても、台風が来てても、何があっても必ずここに来る。
お前が居なくても地球は動き続けてる。
「なぁ、泉。
 今日も月が綺麗だよ。
 だから、俺、もう死んでもいいや。」

そういって月に微笑んだ。

#日記広場:自作小説

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2015/10/21 20:37
こういう綺麗な表現多めの小説とか大好きだわb
「月が綺麗ですね」っていうのいいよね
もう流石って感じww尊敬←

アキラさん死なないでほしいけど死ぬんだろうなー…
奏くんを追うように、綺麗な月の日に、死んじゃうんだろうなー
悲しい。
ある意味死ネタww←



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