背中
- カテゴリ:小説/詩
- 2015/10/21 13:44:15
暗い車の中でかける曲は
あなたの好きなスロージャズ
いつも聞いていた あなたの横で
夜に滑り込むあなたの車
その先には何が待っているんだろう
私もあなたも知らなかった
ただ時々照らす対向車のヘッドライトだけが
後ろに向かうのを知っていただけ
何も考えずに走るに走る私達だけだった
飛んで行く空気に
昨日と言う名の日を飛ばして
窓からは行ってくる空気に
今日と言う日を迎えて
その接点はたった1秒にすぎない
車を止めて道筋で
ポットで持ってきたホットコーヒー
口にしては夜闇の空気を吸う
私の横にいても
あなたは何も言わない
何か伝えて欲しかったんじゃない
ただこの時がいとおしかっただけ
いつまでも続いて欲しかっただけ
朝が来るのが怖かっただけ
あなたの背を抱き締めたかっただけ
スロージャズを聞きながら
そんな夜を思い出す
あなたは今頃どこを走っているんだろう
まだ一人きりでいるんだろうか
私達は別れてしまったけれど
キャンドルの炎が消えて行く
静かな夜がこの部屋を埋めて行く
あなたの背中はまだ
かたくなな心を拒んでいるのか
人恋しさを知っているのは私だけかもしれない