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中国潜水艦が再び米軍空母に接近

10月24日、中国海軍潜水艦が横須賀から釜山沖に向かうアメリカ海軍空母「ロナルド・レーガン」に接近していた事実が、先週、アメリカのメディアによって公表された。

 10月27日には、南シナ海でアメリカ駆逐艦「ラッセン」が中国人工島12カイリ内水域を通航するFON作戦(航行自由原則維持のための作戦、以下FONOP)を実施した。

 そしてその翌日、今度は2機編隊のロシア爆撃機Tu-142「ベア」が、韓国海軍と合同訓練中の「ロナルド・レーガン」に高度500フィート、距離1マイル以内に接近したため、空母艦載戦闘機が緊急発進する事態も生じた(爆撃機ベアは長距離航続性能のために、しばしば今回のように偵察任務に投入されている)。

接近したのは「改良キロ型」潜水艦?

 中国潜水艦は少なくとも半日以上にわたって「ロナルド・レーガン」を近距離で追尾していたという。この事実そのものをアメリカ軍当局は否定していない。しかし、潜水艦に関するこの種の情報は、それが自国の潜水艦であれ他国のものであれ通常は発表されないため、今回の事案に関する詳細な情報は確認されていない。

 アメリカ海軍関係者たちによれば、少なくとも3つの点が重要である。第1に、接近してきた中国潜水艦の種類は? 第2に、中国潜水艦は2006年の「宋型潜水艦浮上事件」のように浮上したのか? そして最も重要なのが、アメリカ空母部隊は中国潜水艦の接近をいつから捕捉していたのか?

 中国海軍の潜水艦配置状況から判断すると、今回「ロナルド・レーガン」が遭遇した中国潜水艦は「改良キロ型」と考えられている。ロシアで建造され中国海軍が10隻輸入した「改良キロ型」潜水艦は、ロシアでは「プロジェクト-636」と呼ばれている通常動力型攻撃潜水艦である。この潜水艦は極めて静粛性に優れているとともに、やはりロシアが開発した強力な「クラブ」対艦ミサイルを装填している。

中国海軍お得意の政治的デモンストレーション

「孫子」の伝統を尊重する中国共産党、そして人民解放軍は、潜水艦に限らず軍事力を政治的に多用する。今回の“潜水艦接近劇”も政治的メッセージを発する意図があったと考えられる。

 というのは、アメリカ連邦議会などでは9月以降「南沙諸島問題で中国を牽制すべきである」との声が高まり、10月に入ってからはアメリカ海軍によるFONOPの実施が表明されていた。したがって中国側としても、あらゆる手段を用いてアメリカ海軍を牽制しようとするのは当然といえる。

 そこで中国海軍は、かねてより予定されていた米韓海軍合同演習に向かうアメリカ空母の直近に潜水艦を浮上させたのだと考えられる。これは、以前よりしばしば中国海軍が実施している政治的デモンストレーションの方法である。

 この米韓海軍合同演習に続く11月2日から5日にかけて、アメリカ太平洋軍司令官ハリス海軍大将が中国を訪問することになっていた。このようなアメリカ軍当局の要人による中国訪問に合わせて、“ちょっとした軍事的威嚇”を行うのは人民解放軍の常道である。

 極めて似通った前例が、2006年に発生している。「宋型潜水艦浮上事件」である。

 この事件は、アメリカ太平洋艦隊司令官ラフヘッド海軍大将(2006年当時)が訪中する直前に起きた。すなわち、沖縄沖で訓練中の横須賀を母港としていた空母「キティーホーク」の直近5マイルに、中国海軍「宋型」潜水艦が浮上したのだ。

 日常生活で5マイル(8キロメートル)といえば“真横”というわけではない。だが、海軍の常識では5マイルというのは対艦ミサイルどころか魚雷でも攻撃可能な“至近距離”である。そして、接近距離よりも深刻な問題は、中国潜水艦が浮上するまで「キティーホーク」側は中国潜水艦の接近に気づかなかったという事実であった。

 この2006年の事件と今回の“接近”は、アメリカ海軍高官の訪中の直前に、訓練中のアメリカ空母に潜水艦を接近させる、というタイミングと手法が一致している。したがって、今回も「おそらくは魚雷攻撃距離内で、これ見よがしに浮上したに違いない」と考えられているわけである。

空母戦隊は中国潜水艦の追尾に気づいていたのか?

 中国潜水艦が浮上したのか否かは、現在のところ「ロナルド・レーガン」幹部と中国潜水艦以外には一部の米海軍首脳と中国海軍首脳しか知らない事実である。それ以上に謎なのは、「ロナルド・レーガン」空母打撃群は「中国潜水艦の追尾にどの時点から気づいていたのか?」というタイミングである。おそらくこれは明らかにされないであろう。

 今回の“遭遇事件”を起こしたと考えられる「改良キロ型」潜水艦は、2006年の主役であった「宋型」潜水艦に比べると飛躍的に静粛性に優れている。また、「9.11」以降アメリカ海軍は空母自体の対潜水艦戦能力を強化はしていない。そのため、今回もまた「中国潜水艦が浮上するまで探知していなかったのではないか?」と考える人々もいる。

 一方、反対の意見を唱える者もいる。「ロナルド・レーガン」には合わせて4隻の水上戦闘艦が同行しており、対潜水艦戦能力は十二分に備えていた。それらの空母打撃群は、中国潜水艦が追尾している状況を長い間承知の上でそのままにしていたのである。そして、空母を追尾していた中国潜水艦は、ピッタリとアメリカ攻撃原潜が追尾していた。


米国は日本の潜水艦戦力増強に期待

 現在、アメリカ海軍が東シナ海や南シナ海を含むアジア太平洋海域での作戦用として割り当てられる攻撃原子力潜水艦は30隻である。そのうち、この海域で作戦に投入できるのは、最大で10隻であろう。ただし、太平洋艦隊の担当水域はインド洋にまで及ぶため、10隻のすべてを東シナ海や南シナ海に投入するわけにはいかない。

 これに対して、中国海軍は「宋型」「キロ型」「改良キロ型」、そしてさらに静粛性が高いと言われている「元型」通常動力潜水艦を合わせて40隻ほど保有している。また、比較的新型の攻撃型原潜と最新鋭の攻撃型原潜も少なくとも6隻は運用していると考えられている。

 そして、中国海軍のそれらの潜水艦戦力は、より新型に置き換えられつつ、数も増大している。2020年には通常動力と原子力双方の攻撃潜水艦は合わせて60隻に達することは確実と見られている。

 一方、アメリカ海軍は現行の主たる攻撃原潜である「ロサンゼルス級」を「バージニア級」に更新する作業は遅々として進んでいない。

 このような両海軍の潜水艦整備状況から、「それほど遠くない将来に、中国潜水艦戦力がアメリカのそれを凌駕しかねない」と危惧している海軍関係者も少なくない。

 そして、アメリカ潜水艦戦力の相対的戦力低下を補うのは「日本の通常動力潜水艦戦力増強と対潜水艦戦力増強である」と同盟国日本への期待が寄せられていることも、私たちは知っておくべきであろう。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45225

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