トルコ機がロシア機を撃墜 緊張高まる
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- 2015/11/25 02:07:32
内戦が続くシリアと隣国トルコとの国境付近で、トルコ軍が、ロシアの爆撃機を領空を侵犯したとして撃墜しました。ロシアのプーチン大統領が「ロシアとトルコの2国間関係に深刻な影響を与えるだろう」と述べるなど緊張が高まっています。
トルコ軍によりますと、現地時間24日の午前9時20分ごろ、トルコ軍の戦闘機がシリアとの国境付近で国籍不明の軍用機を領空を侵犯したとして撃墜し、軍用機はシリア北西部ラタキアの近郊に墜落したということです。
これについてロシア国防省は、ロシアのメディアに対し、撃墜されたのはシリアの上空6000メートルを飛行していたロシアの爆撃機「スホイ24」だと明らかにしました。これを受けてロシアのプーチン大統領は、24日、南部のソチでヨルダンのアブドラ国王との会談の中で、「テロリストの手先がロシアの爆撃機を背後から襲った」と述べ、トルコをテロリストの手先と呼び強く非難しました。そのうえで、「爆撃機はトルコに脅威を与えていなかった。ロシアとトルコの2国間関係に深刻な影響を与えるだろう」と述べました。
これに対して、トルコのダウトオール首相は24日、「たび重なる警告にもかかわらず領空を侵犯されれば、トルコにはそれに応じる権利がある」と述べ、撃墜は当然の判断だと強調しました。
今回の撃墜を巡ってトルコ側は、「軍用機はトルコの領空を侵犯し、10回にわたって警告を繰り返したにもかかわらず飛行を続けた」と説明しているのに対し、ロシア側は「爆撃機はシリア領内を飛行していた」として、領空侵犯はしていないとの立場を強調しており、両国の間で緊張が高まっています。
ロシア軍によるシリア空爆
ロシア軍は、シリアで過激派組織IS=イスラミックステートなどを壊滅させるためとして、9月30日以降、シリア北西部のラタキア郊外にある空軍基地を拠点に空爆を行っています。こうしたなか、ロシア軍は先月20日、同様にシリアで空爆を行う有志連合を主導するアメリカ軍との間で、双方の軍用機の偶発的な衝突を防ぐ対策を取ることで合意していました。
ロシア軍は、先月末にエジプトでのロシアの旅客機の墜落を爆弾テロと断定したことを受けて、今月17日からは報復攻撃を行うとして、戦略爆撃機やカスピ海を航行する艦船から巡航ミサイルを100発以上発射するなど、ISに対する攻撃を強化しています。
撃墜されたとみられる「スホイ24」とは、ソビエト時代の1970年代半ばに導入された爆撃機です。全長はおよそ25メートル、定員は2人で、最高速度はマッハ1を超え、ロシア軍の主力爆撃機として実戦配備されています。イギリスの軍事専門誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウイークリー」によりますと、2000年以降、スホイ24をベースにした性能を向上させた戦闘爆撃機の開発に成功しているということです。
シリア巡るトルコとロシア
シリアではロシアがことし9月から空爆に乗り出しましたが、トルコ政府は、ロシアによる空爆が過激派組織ISだけでなく、アサド政権と戦う反政府勢力も標的にしていると懸念を示し、シリアとの国境付近でロシア軍による領空侵犯を非難していました。そのうえで「何か発生した場合は、責任はロシア側にある」と警告していました。
こうしたなか、先月16日にはトルコ軍がシリアとの国境に近い領空内で国籍不明の無人の偵察機を撃墜しましたが、ロシア側は、撃墜された無人機はロシアのものではないと否定していました。
トルコは有志連合の1国として、アメリカやフランスなどと共に対ISの空爆に参加していて、シリアの内戦についてはアサド大統領の退陣を最優先に求めています。
これに対し、ロシアは、ISに対する空爆を強化するという点では有志連合と同じ立場ですが、アサド政権については支持しています。
今回の撃墜は、対ISという目的は同じものの、アサド政権を巡って立場の隔たりがあるトルコを含む有志連合とロシアが十分に連携できていない実態が浮き彫りになっています。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20151124/k10010317891000.html