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ひとりの魔法騎士の物語~はじまりの物語・下~

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ひとりの魔法騎士の物語~はじまりの物語・上~
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古城の中は、魔物でいっぱいだった。
フロアが上がれば上がるほど、魔物の強さも、現れる数も増えていく。
少しでも気を抜けば、自分の命はないだろう・・・。


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一体何段の階段を登ったんだろうか・・・。
この城の階段は、無限に続くんだろうか・・・。

この試練は、成功不可能なんじゃないか・・・。
誰もクリアできないんじゃないか・・・。

そう思い始めたとき、一際広い部屋へとたどり着いた。
部屋の隅には、茨に包まれた少女の姿があった。

ユーミン♪(以下、ユ♪)「彼女が・・・メア王女・・・。

少女の胸元に、禍々しい力を放つ一輪の黒薔薇が咲いていた。


ユ♪「あの薔薇が呪いの原因・・・。」

あの力を消すことができれば、呪いは解けるはず・・・。

私は、黒薔薇に手をかけようとした。

???「そこの魔法騎士、やめろ」

ユ♪「!?」

この部屋には、私と眠る少女しかいないはず。

ユ♪「何者だ!?名乗れ!」

黒薔薇が光ったと思うと、衝撃波で私を吹き飛ばした。

ユ♪「な・・・」

目の前で、黒薔薇が人の姿に変化していった。

???「我が名は、ベストラ。この娘は我のものである!
     我のコレクションに触れるでない!」

ベストラ・・・、それは、「眠り姫」伝説にも現れる名前。
メア王女に呪いをかけた張本人である・・・。
しかし、この名前は別の場所にも現れる・・・。

ユ♪「ベストラ・・・!
   マジカル学園魔法賢者科を過去最高の成績で卒業した魔法使いがなぜ・・・!?」

マジカル学園魔法賢者科・・・、
それは、王室付き魔法使いになるための登竜門といわれる学科である。
王室付き魔法使いは、「国守(くにもり)」と呼ばれ
王国を守護するために全てをささげることとなっている。

ベストラ(以下、ベ)「ふん、お前には関係ないだろう」

ユ♪「エスメラルダ王国の国守だったあなたが、どうしてメア王女を・・・!?」

ベストラが国守を務めた王国こそ、このエスメラルダ王国だったのだ。

ベ「赤子同然のお前に何が分かるか!
      ナイトメア・スクリーム!」

禍々しい力を必死に抑えようとする。

(私は、ゼルイーク皇太子さまが好きだった・・・!)

ユ♪「!?」

(あの方のお側に寄り添いたかったの・・・!
 エスメラルダの国守、そして、あの方の妃になるために、
 全てを尽くしてきただけなの・・・!)

ユ♪「これは・・・、ベストラの心の声!?」

(魔法賢者科を主席で卒業して、
 エスメラルダの国守試験もクリアして、
 ようやくゼルイークさまに一歩近づいたのに・・・!
 あの方は、すでに王位に就き、成婚されていた・・・!)

ユ♪(かなわなかった恋が全ての原因だというの・・・?)

(私は絶望したわ。
 絶望して、絶望して、絶望して・・・。
 インヴィさまと出会ったわ・・・!
 インヴィさまは仰った。
 「この指輪を着けなさい。そうすれば、あなたの思いのままになる」と。)

ユ♪(インヴィ・・・、闇の賢者・・・!?)

(指輪に祈ったわ、ゼルイークさまがもう一度振り向いてくださるように!
 でも、あの方に子供が生まれてしまった・・・!
 憎くて・・・憎くて・・・!)

私は、全てを悟った。
その子供こそ、メア王女なのだと。

ユ♪「だから、罪のないメア王女を呪ったというの!?
   ゼルイーク王に振り向いてもらいたかったから、闇魔法に手を出したの!?
   闇魔法は、禁忌の魔法。あなたはそれを知っているはずよ!」

ベ「私は、もうエスメラルダの国守じゃない!
     インヴィさまの忠実なしもべとなったのだ!」

【魔法界の均衡を守ることが魔法騎士の最大の役目】
【禁忌の魔法に手を出した者は魔法騎士によって封印される】
【国守に危機があれば魔法騎士は身を挺して守る】

魔法騎士道の授業で暗記した言葉が頭の中に響く。

私は、腰にかけた剣に手をやった。

ユ♪「禁忌魔法に触れた者よ。修練士である私が封印する!」

ベ「ほぅ・・・、まだ【修練士】なのか!
     ならば、ここで始末してやろう!
     ・・・・・・あ・・・・・・!」

一瞬の隙をついて、指輪を破壊した。

ベ「あぁっ・・・。体が・・・!」

指輪の力に蝕まれていたのだろうか、彼女の体は砂になっていく。

ユ♪「ベストラ、メア王女への呪いを解いてくれるなら、
   あなたの最期の望みを叶えるわ。」

ベ「・・・ゼルイークさまに・・・」

【リル・イルク・エルターニ】

呪文を唱えると、ベストラの顔に笑みが浮かんだ。

ベ「イルクさま・・・、ごめんなさい・・・。
  ごめんなさい・・・。どう謝ればいいのか・・・」

ベストラの頬に涙が伝った。
その雫が滴り落ちる前に、ベストラの体は、完全に砂になってしまった。

ベストラの力が切れたのか、辺りが急に明るくなり始めた。
茨は取り除かれ、荒れていた城も元通りに戻っていった。


フクロウ理事長(以下、フ理)「修練士ユーミン♪。よく頑張った。

ユ♪「理事長!いつのまに!?」

フ理「君なら必ずクリアすることができると思ったよ。」

メア王女(以下、メ)「わた・・・し・・・?」

眠っていた少女が目を覚ました。

フ理「王女も目覚めたようだ。話は、この城を出てからにしよう」

理事長がそういうと、目の前が白んだ。
気がつくと、魔法の森にいた。

人に溢れた、魔法の森は初めて見た。


フ理「呪いを解いたことで、魔法の森も開放されたのだよ。
   この森も、呪いで明けない夜が続いていたのだ。
   君は、眠り姫の呪いを解いた。
   立派な魔法騎士だ。」

ユ♪「魔法騎士を名乗っていいのですか・・・!?」

フ理「ああ、もちろんだとも。
   魔法騎士の証、魔法の指輪と星のネックレスを進呈しよう。」

ユ♪「ありがとうございます。」

フ理「私は、メア王女の今後のためにしばらくここに残るが、君はどうするんだい?」

ユ♪「インヴィという闇の賢者を追おうと思います」

フ理「そうか・・・。気をつけるんだぞ!」




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