タケシの武勇伝…(2)
- カテゴリ:自作小説
- 2009/09/18 03:43:58
タケシの不安は的中した。結局、タケシの指先は治らなかった。銃弾が彼の中指の神経を寸断していたからだ。
『日常生活に支障はないですが、ボールを投げるのはムリでしょう…』
退院の日、医者の診断を聞いたタケシは自分の未来が断たれたことを悟った。
だが、不思議と悲しい気持ちにはならなかった。前夜、病院のベッドで思いっきり泣きじゃくったこともあるが、何よりとなりに母さんがいたからだ。
母さんは、タケシが野球ができなくなったことよりも彼のケガが指1本で済んだことにホッとしていた。言葉には出さなかったが、安堵の表情がそれを物語っていた。
その気持ちも当然だった。理不尽な流れ弾を喰らったタケシだったが、当たり所が悪ければ死んでいたからだ。
だから、タケシはあきらめるしかなかった。もう涙も出なかった、というより出せなかった。ホッとしている母さんを悲しませてはならないと思ったのだ。
しかし、撃たれたことの怒りと憤りだけはどうしても抜けそうになかった。このケガで野球推薦されるはずだった希望校への進学もできなくなったのだから。
ヤクザの事務所に向けられた威嚇の発砲。その兆弾が偶然彼の腕を射抜き、彼の夢を奪った……
※※つづく※※
・・つづきを。。