アレクスの名を受け継ぐ者、過去編。
- カテゴリ:自作小説
- 2016/07/06 23:44:57
ロシアの第四皇女アナスタシアはアレキサンドライトを渡されて馬車に乗った所を襲われた。
馬を操る操者が殺され、馬車は転倒して行く中でアレキサンドライトを胸にしまい、池に飛び込んだ。
(また水の中・・・)アレクスはふとそんな事を考えた。
アレクスは悪魔なのか、天使なのか。
アレキサンドライトに宿りし、女性の悪魔なのか。男性の天使なのか。
それは今は分からない。
アレクスは以前の持ち主ラスプーチンがアストラルボディでアナスタシアを抱きかかえる。
だが、もちろん。彼女の肉体を救う事はできない。
彼女のアストラルボディをワタシの前に引きずり出しただけだ。
(ラスプーチン、何を考えている。)アレクスは跪くラスプーチンを見た。
思念伝達が通じるので思念が返信される
(どうか彼女をお助けください)と、ラスプーチンは言う。
(・・・ここは)と、アナスタシアはアストラルボディとして目覚める。
(それは彼女に聴こう)と、アレクスは言う。
(誰?あっ。ラスプーチンのおじさん。という事はここにいるあなた様は味方なのかしら?)と、アナスタシアは答える。
(味方でも無いし、敵でも無い。われはアレクス。宝石に宿るモノ。われは契約を提示するだけ。われは欲するそなたの記憶を。一部とか、そんなケチな事は言わん。全てだ。そなたの記憶全てを寄こせ。それならそなたを助けてやろう。ただもうこの世界では暮らせないがな)と、アレクスは答えた。
(・・・楽しい思い出も辛い思い出も・・・)と、アナスタシアは目をつぶった。
(そうだ。楽しい思い出も辛い思い出もだ。何を迷う。このまま池で溺れ、ラスプーチンと同じ運命を辿るのか)と、アレクスは問いかける。
(いいわ・・・助けて。私の全てをあげるから。あなたは何をくれるの?)
(われが与えるはわが名とそなたの仮の名前・・・そなたを異世界へ送るが、そなたの魂が強くなければそもそも行く途中で消滅する事になる。そなたは何者ぞ)と、アレクスは問いかける。
(え?私?私は姉たちに嫉妬して生きてきた四女アナスタシアよ。嫉妬する。それしかできない醜い女よ。そして生きるために他の命を奪い、私は風と光を愛して生きてきたピエロだわ)と、アナスタシアは告白する。
(ふははは。いいだろう。十分だ。そなたに名を与える。アルル・アレクス・グラシャラボラスだ。それがそなたの名。さあ、異世界へ渡るがいい)
アレキサンドライトは何色に光ったのか
赤か、緑か。
池からアナスタシアが浮かび上がって来る事は無かった。
ただアナスタシアは異世界、竜の大陸にある砂漠の中のオアシス、タルルットの宿屋に裸のまま召喚された。
宿屋の1室には先客がいた。チセである。チセは最初、驚きつつもアナスタシア、いや、アルル・アレクス・グラシャラボラスに服を貸した。
そして2人は初級の召喚士になるために2人で初心者の洞窟へ行くのだった。