2人の退魔師。「陰陽師」
- カテゴリ:自作小説
- 2016/07/14 00:26:10
2人の退魔師。
「来てしまった・・・」と、呂(ろ)はつぶやいた。
「1週間の辛抱よ」と、如(にょ)は相づちを打つ。
正直、生きて帰れるか分からない。過去に15人の退魔師の命を奪った屋敷だからだ。
屋敷の名は「鬼女の館」そう呼ばれている。
名前の通り、鬼女がやってくる館なのだそうだ。
呂も如も退魔師としては1流だ。
呂は右手に鬼を宿し。
如は木刀に鬼を宿した退魔師だ。
今まで訪れた退魔師の中では最高の部類でもある。
そこにもう1人、陰陽師と名乗る斎(さい)という者も一緒に来ていた。
「おや?遅かったですねぇ。待ちくたびれていましたよ。お2人さん。ささ、中へ中へ」と、斎は玄関からそう呼びかける。その身だしなみは京都の公家を思わせる衣装で、右大臣などの高位の者が着る着物を着ていた。ただ彼の髪は白かった。
真っ白なのだ。歳は32歳。まだ若いにも関わらず。
斎のあまりの明るさに2人は動揺する。
「ここは死地ですよ」と呂は語る。
「そうよ、あなた・・・ここに鬼を退治しに来たのでしょう」と、如も言う。
「そう、深く考えないでください。たとえそうだとしても・・・明るく過ごしましょうよ。まあ、無理ですかね。鬼に勝てるか分からないという現状では」と、斎は言う。
「そういうあなたは勝てる未来でもあるのですか?」