Nicotto Town


小説日記。


悪魔裁判 【短編】2

リリスの子よ、ひれ伏しなさい。


その罪に傅き、贖罪を受けるのです。




「被告人は〝殺人〟の罪で起訴されました。ヒトで無き者がヒトを殺めてはなりません」
「よって被告人を〝有罪〟とし、〝死刑〟判決を言い渡します」

 木槌が打ち鳴らされる。
 静寂を守っていた傍聴人達は、一斉に色めき立ち声を上げて賛成する。

「「「有罪!有罪!有罪!有罪!」」」

 叫ぶように合唱する声。心臓を貫く手拍子。
 少女は青ざめ、ただ言葉を失うばかりだった。
 壇上から見下ろせば死霊と悪魔共が、揃いも揃って醜悪な笑みを浮かべている。

「嫌だ!死にたくない!!」

 流されそうな感情の波。
 耳を劈く叫び声に振り向けば、そこに居たのは自分。
 今にも泣きそうに震える声がまた別の声にかき消される。

「私は悪くない!」

 横を向けばまた自分。
 裂けんばかりに響く声は、次の瞬間聞こえなくなる。

「それでは被告人、こちらへ」

 壇上の悪魔が手を差し伸べる。
 ああ、違う。
 私じゃない。
 私は悪くない。
 どうして私と決め付けるの。
 私じゃないと駄目なの。

「――私じゃない!!!!」

 振り上げられる鈍色と、無慈悲な微笑み。
 いつもここで終わる。
 いつもここで目が覚める。
 いつもここで、ベッドから落ちる。

 叩きつけられた木目の床に、力なく伸ばされる蒼白な腕。
 血の通わない指先に力が入らない。
 耳の奥には悪魔の声、突き上げる絶望と残酷な刃。
 独りぼっちの大部屋に、紅い月光がゆらゆらと泳いでいた。



リリスの子よ、逆らうことは許しません。



何故なら、貴方がたはわたしの愛すべき子ども達なのですから。



*****

オリジナル創作企画⇒即興の茶番劇-トッカータ・バーレスク-

終わり




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