悪魔裁判 【短編】2
- カテゴリ:自作小説
- 2016/08/16 22:57:35
リリスの子よ、ひれ伏しなさい。
その罪に傅き、贖罪を受けるのです。
*
「被告人は〝殺人〟の罪で起訴されました。ヒトで無き者がヒトを殺めてはなりません」
「よって被告人を〝有罪〟とし、〝死刑〟判決を言い渡します」
木槌が打ち鳴らされる。
静寂を守っていた傍聴人達は、一斉に色めき立ち声を上げて賛成する。
「「「有罪!有罪!有罪!有罪!」」」
叫ぶように合唱する声。心臓を貫く手拍子。
少女は青ざめ、ただ言葉を失うばかりだった。
壇上から見下ろせば死霊と悪魔共が、揃いも揃って醜悪な笑みを浮かべている。
「嫌だ!死にたくない!!」
流されそうな感情の波。
耳を劈く叫び声に振り向けば、そこに居たのは自分。
今にも泣きそうに震える声がまた別の声にかき消される。
「私は悪くない!」
横を向けばまた自分。
裂けんばかりに響く声は、次の瞬間聞こえなくなる。
「それでは被告人、こちらへ」
壇上の悪魔が手を差し伸べる。
ああ、違う。
私じゃない。
私は悪くない。
どうして私と決め付けるの。
私じゃないと駄目なの。
「――私じゃない!!!!」
振り上げられる鈍色と、無慈悲な微笑み。
いつもここで終わる。
いつもここで目が覚める。
いつもここで、ベッドから落ちる。
叩きつけられた木目の床に、力なく伸ばされる蒼白な腕。
血の通わない指先に力が入らない。
耳の奥には悪魔の声、突き上げる絶望と残酷な刃。
独りぼっちの大部屋に、紅い月光がゆらゆらと泳いでいた。
*
リリスの子よ、逆らうことは許しません。
何故なら、貴方がたはわたしの愛すべき子ども達なのですから。
*****
オリジナル創作企画⇒即興の茶番劇-トッカータ・バーレスク-
終わり