下戸による酒杯の楽しみ方
- カテゴリ:アート/デザイン
- 2016/12/25 08:38:18
骨董屋やフリマを巡って好みの器を買うという文化がありますね。私もハマリました。
家庭内階梯と自室収容量、もちろん経済力(慢性貧困)も考えあわせた結果、
小さな杯やぐい呑みを集めることにしました。現在60点ほどあるでしょうか。
最初の頃は見た目やデザインで買ってました。あ、カワイイ。お、古そう。
そのうちに手書きで作られたものが区別できるようになった。見事な業である。
習字が下手な私は見事な書というのに弱い。そこで手書きの杯を物色することに。
九谷、という単語を覚える。調べてみる。古九谷、再興九谷、飯田屋、木米……。
朱色の細密画もいいし、豪奢な吉田屋風もよろしい。これを一通り揃えたい。
こんなふうに目標ができたら、骨董市巡りに拍車がかかりました。
人物を南画風に描く木米っぽいものは好みでなかった。自然物の赤絵と色物を探索。
直径数センチの器に、よくもここまで手間をかけたものだと感嘆します。
高いのはパス、ケチな私は500円程度のものばかり探して集めました。
朱の細密画は、照明が一般化した明治後期以降盛んになったと聞いた。
まるで金継ぎした茶碗みたいだと思ったら、陶象嵌という技法があるのも知った。
面相筆で和歌を記しているもの、作庭技法の如き遠近法描写が見事なもの……。
吉田屋風の彩色の器以外は一通り手に入ったころ、マイブームも沈静化。
時々取り出して眺め悦に入る。絵画や指輪の収集と気分は似ているのではないかしら。
友人知人に見せても、へー、で終了。いいんです、そんなものです骨董収集は。
実用度がないわけじゃない。向付を入れる器として使ったら凄くオシャレ。
金山寺味噌とかイカの明太子和えとか入れたら似合いすぎだった。
我が家の雑然とした手抜き食卓には似合わないので使わないだけです。
ブーム沈静化の原因は、中国や朝鮮の古いヤツにも興味が出てしまったこと。
本物かどうか知らないが、宋の時代の素焼きの酒杯3万円、というヤツは危なかった。
こんなの買ったら白磁や青磁にも手を出してしまうでしょう。お大尽の趣味です。
どんな人が作ったのか、どんな人がどのように使っていたのか、想像するのも楽しい。
こんな小さなモノにここまで手間をかけて日常に供する時代があったのも凄い。
魂は細部に宿るって思想、けっこう日本文化の要諦なのかも。正月に使おうか。