自作小説倶楽部12月投稿
- カテゴリ:小説/詩
- 2016/12/31 19:23:23
『ある日のあたしの大事件』
ドアから外に出ると灰色の空が街を覆っていた。天気予報通り雪になりそうだあたしは少し身震いしてから歩き出す。大通りの通行人たちはあたしなんて目もくれず通りを歩いていく。心配性の同居人はあたしの散歩を嫌がっているけど、どんなに懇願されたって自分の習慣を変える気はない。散歩は自分について考える貴重な時間なのだ。ふわふわのソファーや温かいミルクのせいで時々忘れてしまっていることを思い出す。
三丁目のいつもの塀の上に黒猫がやっぱりいないことを確認して、ふつうこんな寒い日は暖炉の前で寝ているだろう、公園に行こうとした時に声を掛けられた。
「お嬢さん」
今時あたしをこんな風に呼ぶなんてよっぽど気取り屋か不審者だろう。声を掛けて来た擦り切れた茶色のトレンチコートを着た男は年は若くはないはずだが判別できなかった。コートと同系色の中折れ帽に目が隠れて瞳の色がわからない。まあ、変質者ならただじゃ置かない。これでもあたしは喧嘩に負けたことはないのだ。
しかし不審者ではなかった。ノックアウトして終わりならそれでよかったのに。
「お嬢さんはミミさんでしょう。あ、逃げないで不愉快だけどちょっと話を聞いてくれないかな」
あたしが顔をしかめたのがわかったらしく男は素早くあたしを引き留めた。仕方ない。その名前を知っているということは『彼』のことと関係があるのだ。縁が切れたとしても今の生活の平穏のためには面倒ごとは片づけておいた方がいい。あたしは落ち着いて塀の上に座った。
「今はシェリーよ。ミミはもういないわ。ところで何故あたしの昔の名前を知っているの?」
「もちろん。A氏ですよ。ミミ、いえシェリーさん。あなたを失って彼は悲嘆に暮れて生きる気力すら失っています。あ、私はですね。しがない探偵です。いやあ、寒い日だけどあなたがいつも通り外に出てくれて助かりました。好きでやっている仕事ですけど、寒い日にずーっと張り込みしてるとさすがに虚しくなります。今夜なんて初雪になりそうですね」
いきなり脱線する探偵にイライラしたがあたしは表面上は落ち着いて言った。
「それで彼がどうしてあたしを探しているの?」
「どういうわけかあなたが生きていると信じているんです。墓を掘り起こしすらしたらしい。そしてあなたが彼の元を離れたのは恋人のせいだと思って彼女と別れてしまった」
「何ですって」
あたしは茫然とした彼の恋人はとても可愛らしい猫好きの女の子だった。あたしは彼女の甘い香りを思い出した胸が苦しくなった。でも、
「彼はそんなことができる男の子じゃないわ。今でもあたしを熱烈に愛してるのは困ったものだけど、一度愛したものは、恋人だって同じ。とても大切にするし、傷つけようなんて思わない。何か悪いものに憑りつかれているのかも」
「そうそう、ぜひ力をお貸し願いたいんですよ。魔女殿」
あたしは金色の瞳でじろりと探偵を睨んだ。
あたしの素性について、五百年余りを猫として生きては死ぬことを繰り返すことになったいきさつをこのヘボ探偵に説明するには時間が無さ過ぎた。まあ、いいわ。何者にせよ彼をたぶらかしたものにあたしを敵に回したことを後悔させればちょっとは憂さ晴らしになるだろう。
あたしはぺろりと舌なめずりした。
中・長編にする場合
クライアントのA氏というのが魔術師で、そうとうの手練れ
探偵が使い魔的な存在、しかもトリックスターだとしたら
けっこうな火花が飛んで面白いと思いました
探偵さんにとって大事件
猫さんと前の飼い主さんとの関係は契約切れ
とりころぴ~
誰かの使い魔にされちゃったのかそれとも自分でこの姿になったのか…
ていうか、とっても強そうです^^
続きをよみたいー♪
5日までに手直しをしていただければよいかなあと
描き始めた時こんな話になるとは思わなかった。。
ハリポタを見ても魔法使い=人型なのが疑問のため。