ハマの誇り シウマイ弁当
- カテゴリ:グルメ
- 2017/01/07 17:00:52
そろそろ正月料理の残り物消化に飽きた。蒲鉾も伊達巻も見飽きた。
冬は濃い味のものがオイシイ。濃い味ときたら弁当、特に駅弁である。
駅弁大会には常に引っかかる。だがハマっ子は崎陽軒に背を向けるわけにいかぬ。
崎陽軒のシウマイ(シューマイでもシュウマイでもないの)弁当はハマの誇りである。
横浜三大名物は何かと問われれば即答、氷川丸とマリンタワーとシウマイ弁当だ。
港の見える丘もフランス坂も山手のドルフィンも元町も下がりおろう。頭が高い。
ハマっ子の赤血球はシウマイ型をしているという研究結果がある(ウソ)。その通り。
中華街のデカい本格焼売も結構ではあるが(『博雅』の焼売が懐かしいなー)、
和の粋の精神が欠けている。冷えて良し温めても……いやいや、冷えてる方がウマイ。
古来幾多の強者がシウマイ弁当に挑み敗れ去った。死屍累々である(まさか)。
崎陽軒ユースケ流開祖の私が賞味方法を伝授しよう。もう止まらない、やるぞ。
まず美しい紐はきちんとほどき、結んでまとめなさい。そこ、まだ蓋を開けるな。
包み紙を剥がしたらこれも四つ折りにしましょう。それ以上小さいと粋ではないの。
下から出てくるお箸と爪楊枝とお手拭きは右手側に配置、質素な箸は慎重に割ろう。
箸袋を細く折って箸置き代わりにしたアナタ、まだまだですね、昇段見送り。
いよいよ経木の蓋をオープンして、もちろん裏返し。まずはご飯粒を丁寧に頂く。
農家への感謝はどうでもよいが、経木の裏を見事に綺麗にするためには、
ハマっ子秘伝の熟練の箸捌きが要求される。小笠原流より厳しいのだ。
綺麗になった経木の蓋は左斜め奥に置き、その上に包装紙や紐などを載せよう。
いよいよ対峙する。さて弁当はどう置く。横置き縦置き斜め置き、幾多の先人が悩んだ。
近年のユースケ流ではゴハン手前という配置に奥ゆかしさを見出しております。
コラまだ食うな。辛子の小袋と醤油がある。まずは辛子を開けよう。
横浜市転入に際して、この小袋を見事に開けられるか試験がある(大ウソ)。
辛子は五個のシウマイに均等に載せてやろう。中心より少々ずらす。
醤油を開けたヤツ、やり直し。箸を持ってシウマイに割れ目入れてないでしょ。
お醤油がそこから染みていくのです。やらずにかけると後で泣きを見るぞ。
その後で醤油を5個のシウマイの注入穴に均等に垂らす。さあ、準備ができました。
地球上にシウマイ弁当のおかず全品を暗唱できない不埒者がいるとは思わぬが、
一応確認しておきましょう。シウマイ5個、筍煮ゴロゴロ、鮪の照り焼き、かまぼこ、
鶏の唐揚げ、薄い厚焼卵(この形容矛盾)、切り昆布、紅生姜、小梅、アンズ。
アンズ? と首を捻った方、これはデザートなのですよデザート。けっこう甘いの。
なお既に皆様ご承知のこととは思いますが、もちろんゴハンは一口大の俵型、
八等分されていて黒胡麻も振ってある。嘉永三年からずっとこう(完璧なウソ)。
まずシウマイを一口でいただこう。うーむ、ハマに生まれてよかった。しみじみ。
右手前の俵ご飯を攻略し、そこで筍煮を一つ二つ。イッパイあるから計画は慎重に。
次は鮪か鶏か蒲鉾か卵か。ユースケ流は鮪半分、そこで紅生姜もつまむ。
全てが美しい均整を保ったまま少しずつ減っていくのは大切でございます。
ゴハンは底にもへばりついてるときがある。これは最後に回さず随時消化。
いつ如何なる時でも美を意識する、見栄っ張りのハマっ子根性を発揮します。
終盤に近づいたら注意点が一つ。お醤油が弁当箱の底に残ってるのは今イチ。
吸収力のあるオカズでそこの醤油も綺麗に吸い取り口に運ぶのです。
何、高血圧ですと? 明日から3日、塩断ちしてバランスをとりなさい。
アンズの甘みが苦手な方は、口直しにゴハン半分、昆布少々を残しておこう。
あー綺麗に食べたゴチソウサマ。いやいやユースケ流は序破急の急にも拘る。
手拭きやビニール、小梅の種、小袋等は弁当箱に入れて経木の蓋を閉める。
その上には箸袋に戻した箸を見事に配置しよう。そして包装紙をかけて紐で縛る。
画竜点睛を欠いてはイカヌ。ここまでやり遂げてこそ真のハマっ子である。
最も粋なのは、昔なら駅の売店のゴミ箱に放り込むことだが……現在は難しい。
崎陽軒には他にも優秀な弁当がズラリとありますが、基本こそ王道でございます。
シウマイの、シウマイによる、シウマイのための弁当を地上からなくしてはイカンのです。
ああ楽しい。おい崎陽軒、CMに回す金の一部を私によこしなさい。現物支給も可。