散った青空
- カテゴリ:小説/詩
- 2017/04/28 14:38:54
明るい空が光る
その中に初夏を隠して
吹く風はまだ冷たく
私の心を見出すかのように
すり抜けていく 花を揺らすように
もう幾度思ったことだろう
打ち明けもしないで散った恋
言葉にするのが怖かった
言葉にしなくちゃ分からないのに
どうしてもそれが出来なかった
この春
あなたは故郷に戻って行った
一枚の紙を持って
卒業証書という紙を持って
名前を変えれば私と同じもの
都会で働くことを決めた私
喧騒の中を今日も歩く
ふと空を見上げては
あなたのことを考える
かすんだ太陽はあなたを映すだろうか
やがてあなたにも恋人が出来て
家族を持って
そんな暮らしをするのだろう
忘れられない写真が一枚
あなたと映ったたった一枚の
それすら捨てられなかった
消してしなければならないのに
やがて私も恋するまでには
昨日のことのような写真を捨てるだろう
今はまだ躊躇するけど
もうすぐ5月の風が吹く
その風にのっていけ
私の愛もあなたへの恋も
そうしてまた空を眺めるだろう
かすみがかった青空を