【人と妖と硲者】第一部 第一章 第終話
- カテゴリ:自作小説
- 2017/05/08 01:04:45
息を整えながら姉は静かに語り出す。
「最初は白水さんと1人の男性が見えました。それが、貴方の言っていた人ですね?」
確認をとるかのように姉は女を見たい。
女は頷く。
「私は妖でしたが、彼はそんな私でも差別すること無く優しくしてくれました。その日、私は嫌な予感がして彼を必死で海に行くのを止めたのですが彼はそれでも行くと…」
妖と人。
種族、住処の違う2人の出逢いは両者の世界から禁忌とされている関係だ。
その禁忌を犯してでも女はその人を大切に思っていたのだろう。
「それからの流れは霧がかかったようで鮮明に視る事は出来ませんでした。恐らく白水さんが混乱していたからでしょう…」
落ち込むように姉は言い、言葉を続ける。
「それから、貴方の言っていた彼が帰ってくる方法を教えたと思われる人物ですが、恐ろしく霊力の強い人間。男と言う所しか分かりませんでした。」
「とても禍々しい雰囲気を持ち、何かを企んで居るようなそんな嫌な感じでした。その男の霊力のせいで白水さんの記憶が読みづらくなっている…きっと、こんな風に記憶を読み取られる事を予想していたのだと思います。」
「八方塞がりか…」
姉の言葉に柳川は考え込むように右手を顎に添えて下を向く。
「本当にすみません、街の方に迷惑をおかけした上に何も覚えていないなんて」
申し訳なさそうに女は言うが、覚えていないといより、消された可能性もありえる。
彼女が罪悪感を抱く必要何て無い。
「まあ、いいや。そう言う人物が居たという事が分かっただけでもこれから対策を立てることが出来るんだし、もう君も無闇に雨を降らしたりしないだろう?」
ニコリと笑い柳川は言う。
本当に良いのだろうか、確かに今の情報で犯人の特定なんて出来るはずもないがあっさりしすぎてはないのだろうか?
そんな私の悩みを気にする事なく女は無言で首を何度も縦にふった。
「それじゃ、問題は解決したし、帰ろうか」
「ちょっと!」
私達の反応を待つことなく立ち上がり外に出ようとする柳川を慌てて止めるが、そんな事お構い無しに彼は外に出てしまった。
「あの、もし、何かあれば…」
そっと、姉は懐から1枚の半紙を取り出す。
それは、私達の住む家の地図。
妖にしか見えないように細工されたものであった。
「分かりました、ご迷惑をおかけした分はいつからきちんと返させていただきます」
両者が深々とお辞儀をするのを眺めながら家の外に出る。
既に柳川はおらず、帰ったようだった。
「本当に気まぐれな奴……」
人間が嫌いだから人間を辞めた。
頭が可笑しいと思える理由で硲者になった彼はまだまだ謎が深い。
「柳川さん帰ってしまったの?」
いつの間にか狐面を付け直した姉が家から出てきて問う。
「多分ね、私達も帰ろ?」
雨は止んだのだから私達の仕事は終わりだろう。
気になる事が増えたような気がするがそれはまた別のいつかで……
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これにて、第一部第一章、終幕。
続きを楽しみに待ってる( ᐢ˙꒳˙ᐢ )( ᐢ˙꒳˙ᐢ )
続編待っています!
次の話も楽しみに待っています!