遺留捜査 感想文
- カテゴリ:テレビ
- 2017/08/06 16:43:48
遺留捜査 第4話
テレビ朝日 木曜夜8時~
▼切れたネックレス
今回は、家に押し込んできた強盗を、猟銃で撃ち殺した事件が、正当防衛なのか、
それとも故意の殺人なのかというお話でした。
加害者は金満家の竹原総二郎という老人。
妻と娘夫婦とともに暮らしていましたが、事件当夜は当人以外妻の実家に行っていて留守でした。
被害者は石橋啓介という青年で、窃盗の常習犯で刑務所の常連、今回の事件も出所後数週間だったそうです。
事件現場は金庫と猟銃が置いてある部屋で、竹原が言うには石橋の隙をついて猟銃を向けたところ、
ナイフで襲ってきたので射殺したらしいです。
その直後、偶然家の前を通りかかった警邏の警官が駆けつけたというわけです。
しかし、玄関からいきなりナイフを突きつけ入ってきたというのに、玄関に鍵が掛かっていたり、
石橋の靴がちゃんと揃えて玄関の三和土に置いてあったりと、強盗のわりに不審な点がありました。
糸村は、石橋が左手に巻かれていた、切れたチェーンが気になります。
村木に調べてもらったところ、使い古した安物のネックレスでした。
糸村が石橋の交友関係を当たったところ、彼はいつもそのネックレスにコインを通して身につけていたそうです。
また、窃盗の常習ではあったけれど、強盗をするような人ではないと、友人たちは口を揃えて言いました。
糸村は、石橋が死ぬ直前に、着けていたネックレスを引きちぎったのだろうと推理しますが、
何故利き手ではない左手に巻かれていたのか、またいつも付けていたコインはどこにいったのかがわかりません。
▼35年前の事件
一方、石橋は友人たちに、自分の父親は航海士だと言っていたようですが、
本当は35年前に強盗殺人事件を起こした料理屋店主であることが分かりました。
その時、石橋は母親のおなかの中にいたそうです。
その男性は、逮捕され裁判で無期懲役の判決を受け、服役2年後に病死してしまいました。
また、実は殺人を犯したのはもう1人の共犯の男でしたが、
石橋の父は死ぬまで共犯者の名前を明かしませんでした。
石橋が、自分の父が航海士だと言っていたのは、母からの受け売りで、母親は石橋が小学生の時、
これは自分があなたのお父さんからもらったものだと、例のコインをプレゼントしたからです。
その母親は、今回の事件の2週間ほど前に、石橋に看取られながら病死しました。
病院の関係者によると、最期に母親は石橋に何か囁き、それを聞いた石橋は驚いていたそうです。
特別捜査対策室では、石橋の父の共犯者が竹原で、母親からそのことを聞いて知った石橋が
竹原を脅迫したため、竹原が正当防衛と嘯き石橋を射殺したという推理にたどりつきます。
しかし証拠が何もないため、桧山室長は竹原を保釈することにします。
ですが、竹原を迎えに来た妻から、「猟銃にはいつも弾を込めておらず、
弾は他の場所に保管していた」という証言を導き出すのです。
▼キーパーソンは妻
石橋の出所後の足取りを追ううち、あるバーにたびたび訪れていたことが分かりました。
そこでは、身なりのよさそうな上品で高齢な女性とよく来ていたとか。
事件当日も2人で来ていて、バーテンは8時にうちに来るようにと、女性が誘っていたと言います。
その女性は、竹原の妻でした。
もうこの時点で、石橋が竹原宅に偶然押し入ったわけではないことが確定しました。
ここで重要になってくるのが、竹原夫妻の関係です。
実は竹原は妻に対して常に横暴な態度を取り、妻は竹原を疎んじていたのです。
では一旦ここで、竹原宅であった事件の真相を推理してみましょう。
▼以下ネタバレご注意!
竹原の妻は、竹原に石橋から過去の事件のことで脅迫されている、金額が大きくなってきて、
もはや自分には払いきれない、自分は娘夫婦を連れて実家に行ってくる、8時に石橋が家に金を取りにくる、
などと言い、竹原に石橋を殺すように仕向けたのです。
竹原はその策にまんまとハマり、石橋を殺してしまったのです。
しかし実はまだその先に、悲しい真実がありました。
石橋が持っていたコインはかなりの珍品で、35年前に潰れた国家が一時期のみ発行した記念コインでした。
その時期に、竹原は仕事でその国に出入りしていたのです。
その仕事が行き詰まり、借金苦の石橋の父と強盗を犯したわけですが、
実は仕事に行き詰る前、石橋の母を愛人として囲っていたのです。
石橋の母に入手した記念コインを、愛の証として渡していましたが、金に困り愛人を捨ててしまったのです。
その時すでに竹原の子がおなかの中にいた愛人を哀れんで、石橋の父(義理になりますが)は、
子供を戸籍に入れられるよう、その愛人と結婚したんですね。
つまり石橋は竹原の息子で、石橋が母から最後に聞いたのは、その事実だったのです。
小さい頃から父親がおらず、父親という存在に憧れ、父親からもらったというコインを
後生大事に肌身離さず持っていた石橋は、父親である竹原を脅迫などしていなかったのです。
ただ本当の父親と会いたい、話したい一心でした。
しかし最初に竹原宅に電話を掛けた時、電話に出たのが竹原の妻だったのが、彼の運命を変えてしまいました。
竹原の妻は、たたですら愛人の息子という存在が気に入らない上、竹原自身も恨んでおり、
竹原を殺人犯にするため、石橋を利用したのです。
竹原に会いたいという石橋の相談を受けるふりをして、今回の事件の舞台をこしらえたのです。
▼石橋の気持ち
会いたかった父親にやっと会えたのに、何だか父親は大変機嫌が悪い様子、
その上あろうことか撃たれてしまった、このままでは死んでしまう、
しかも竹原は動けない自分にナイフを触らせたりして、どうやら強盗を撃ち殺したように
見せかけようとしている、しかし自分が持っているコインは竹原が持っていたもの、
これがあると自分が息子であり、竹原が故意に自分を殺したことが警察の捜査でバレてしまうかもしれない…
死ぬ間際にそう考えた石橋はネックレスをちぎり、最後の力を振り絞ってコインを家具の下に投げ入れました。
35年間、ずっと憧れてきた、その父親に殺されてもなお、彼を守ろうとしたのです。
こんなことってありますかね?
確かに石橋の人生は、ろくなものではなかったです。
刑務所とシャバを行き来するような人生、恐らくろくに教育も受けられず、ろくな職にも就けなかったのでしょう。
こんな人生なら、憧れていた父親に殺されても、別にいいかなって気になったのでしょうかね。
ドラマ見てる時には大層感動的でしたし、トドメに例の小田和正ですから、そりゃあ盛り上がりましたけど、
後から冷静に考えてみると、やっぱり石橋の考えがよくわからないです。
ああそうか、そりゃそうだ、自分は父親からしてみれば邪魔な存在だよな、ここまではわかるんですが、
絶望と諦観の末死んでいくだけならともかく、その父親をかばう気持ち、これだけはわかりませんでした。