Nicotto Town



『線路は続くよ』

# 天の川幻影



長い鉄橋を渡り、汽車が駅に着く

山の頂なのだろうか、雲海の中にぽつりと浮かぶ島に立つ小さな駅

ホームから辺りを見回せば、眼下に広がる雲海と、遙に霞む向こう岸

まるで・・・


「天の川みたいでしょう?」

ホームに作られた小さな売店から、店員が微笑む

「どうぞ、休んでいってくださいな」

売店の一角に、小さなカウンターと椅子がしつらえてある

進められるままに腰掛け、メニューを探す

お酒はあるのかな


「ありますよ。こちらがお薦めです」

透き通ったグラスに注がれた、半透明の濁り酒

「『天の川』って言うんです。今は無理ですけど、星空を透かして見ると、本当に天の川みたいに見えるんですよ」

頭上には、青空が広がっている

夜になれば、満天の星空なのだろう

「ここの星空は、本当に綺麗なんですよ。その星空に似合うようにって、家の人が作ったんです」

ここで?

見渡しても、小さな島には、建物はここだけだ

「ここにはいません。向こう岸のさらにその向こうで、たくさんの人が笑顔になれる、そんなお酒を造っています。それが夢だからって、旅だったんです」

一緒には行かなかったの?

「わたしには、わたしの想いがありましたから」

あなたの想い?

「様々な思いを抱いて、あちらの岸から向こうの岸に渡って行く人がいるんです。」

「ここは、その真ん中にある島。誰もが自分の来し方を振り返る場所」

「ひとりぼっちでは、寂しすぎるじゃありませんか」


あなたは・・・(寂しくないの?)

そう聞こうと思ったとき、後ろから車内販売員の声が聞こえた

「ここにいらしたんですね。もうじき発車の時刻ですよ」

わたしにこえをかけ

「こんにちは。もうじき星祭りですね」

店員さんと挨拶を交わす

顔見知りなのだろう


「こんにちは。ええ、もうじきです」

「旦那様と一年ぶりの再会ですね」

「今年もまた、妙なお酒を持ってこなければ良いけれど・・・」

笑いながら店員さんが言う



発車のベルが静かに鳴り響き、汽車が駅を出る

小さくなって行くホームで、店員さんがお客様の相手をしている

お客様の顔は、見えない


汽車は走り続ける

次はどんな景色に出会えるのだろう


つづく



(#^.^#)









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2017/08/09 19:11
めぷちん♪さん

いつもありがとう

ブログ、読んだよ
旦那様も、いつもこのくらい素直(?)に応じてくれれば良いのにね

(#^.^#)
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2017/08/09 19:06
momocuryさん

うん
自分でも、書いていて飲みたくなったよ

(#^.^#)
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2017/08/09 19:05
ヴェルセリアムさん

大丈夫
車内販売にも、ちゃんとここで仕入れたお酒があります
お薦めは
イカスミ入り、銘酒暗黒星雲です
お味の保証はしませんが

(#^.^#)
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2017/08/08 12:18
今日は~♪

いつも素敵なお話ですね…^^
大好きです…。

今回の「雲海を、見下ろせる…駅」もステキ~^^
売店に…お酒もしっかりあって…w
天の川を、見下ろしての「銘酒 天の川」を嗜む…良いですね^^

我が家も1年に1回…私のお誕生日が近い…この時期に…
夫とお食事に行きます…
夫は、嫌がって…渋々ですが…
『今年は、無しだ!』と言われると…
『あっそぉ~』と…
夫の過去の悪事(暴力を振るった事や…心臓をえぐる様な酷い言葉を言った事…)
を、言い…
OKさせました…w
(これって脅迫???w)

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2017/08/07 20:57
すてきなお話をありがとうございました。
読んでいて、不思議な懐かしさめいたものも感じました。
半透明の濁り酒の『天の川』は、どんな味がするのでしょうね(^^)
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2017/08/07 12:30
お酒いいっすねぇ(*´▽`*)
彦星は酒つくってたのか…。
俺だったら、絶対、飲みすぎて列車に乗り遅れちゃいますねぇ。



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