7丁目猫ものがたり
- カテゴリ:お部屋アイテム
- 2017/09/09 21:28:14
トシraudさんの「改装イベントのお部屋1」に入室したとたん
前に書いた「電柱の話」のイラストにぴったりと思いました
アイテムを持っていない分を苦し紛れに改装しました
トシraudさん、ご快諾とお知らせまでいただき感謝いたします
トシraudさんの電柱改装です
http://www.nicotto.jp/blog/detail?user_id=258837&aid=64839031
違いをお楽しみください
「7丁目猫ものがたり」
東京の西北にあたる山宿は丘の連なりだ
丘の上に立つと、夕焼けの中、
西端にそびえる高層ビル群が浮かび上がり
坂の下から霧があがってくる
7丁目あたりは山宿の丘の高台にあって
ビルや大小のアパートや住宅が並ぶ雑多な町で
古めかしいガラス窓が
淀んだ水の光のように揺らめく
潮はこの高台の一角にある古い一軒家を借りている
落語家の師匠の家を曲がって入ると
袋小路になっている静かな住宅地だ
路地には20軒ほどの住宅があり
潮の借りた家はちょうど中央ぐらいにあたる
隣の敷地の一軒家が取り壊され
6軒もの建売住宅が建った
新しい住民が引っ越してきて
古い庭の土の匂いが
新しい花壇の香りに変わった
潮の家のリビングの窓を開けると新築住宅との間には
レンガ塀がある
その塀上は猫道になっていて
後ろの家との境に住みついている
古猫が一番よく通るが
こいつは不愛想な上に横柄なやつで
声をかけても振り返りもせず
人間ごときに返事などするものかといいたげに
大きなお尻をゆったりダブンと揺らしながら通り過ぎて行く
静かな夜が更けて行き
電柱の灯りに照らされて
塀の上をのっそりと歩いて行く古猫の影が
窓ガラスに映っている
それを見ながら
潮はご機嫌で日曜日の体操にしている猫踊りをしていた
秋葉原で買った猫パジャマを着こんで
自作自演のピンクキャット踊りだ
(^^♪ネコネコニャンニャン
ネコニャンニャン
爪とぎ音頭でバ~リバリ
アロンは呆れて物が言えないという時
両手をあげたお手上げスタイルをしながら
声をかける
「早く寝ないと明日は月曜日だよ 起きられなくて辛いでしょ」
仕方がないな
もっと踊りたかったけど
明日は遅刻できない大切な仕事がある
踊りながら二階にあがると布団にもぐりこんだ
枕に頭を置いたとたん
遠い場所からうなり音がするのに気が付いた
ぶうううん
何のモーターだろう?
不快な超重低音がまとわりつく
枕から頭を離してみると何も音がしない
気の精だったかな?
と、枕に頭を付けると
また、音がする
それからが大変だった
枕の位置を変えてみたり
眠る場所を変えてみたが
横になると耳に響いてくるのだ
かれこれ1時間はたとうとしているのに
眠りにつこうとする潮を不快な音がまとわりついて離れない
低いうなり音が耳の奥の一点に張り付いている
うとうととする時間帯はとっても幸せな時間だから
それを邪魔されるのは拷問だ
ネコパジャマをもう一度鏡で見たり
珈琲を飲んだり
いろいろ気を紛らわせ
しまいには階段で横になってみたりしたが
いよいよ音が耳について頭痛がしてきた
寝付けない潮を心配して
さっきまで、潮の枕で寝て見たりして
音なんかしないよと言っていたアロンは
ぐっすり眠りこんでいる
おや?後ろ隣の新築住宅に引っ越してきた赤ちゃんが泣いている
そういえば、ここ何日か、夜泣きしているなあ
耳を傾ける
と、突然
フギャアアア=
古猫のけたたましい叫び声がした
まるで断末魔のような絶叫だ
そういえば、古猫も何日も前からフギャフギャ騒がしかったが
今夜の鳴き声はとんでもない恐ろしい声だ
どうしちゃったんだろう?
猫は聴覚が発達しているというから
もしかしたら
この気分の悪い音にわたしと同じに苦しめられているんじゃないか?
もしかしたら・・・
赤ちゃんもか!
妄想が広がる
この音がどこからしてくるのか突き止めなくちゃならない
それが人間の大人ってもんだ
懐中電灯を持って外へ出ると
深夜だというのに
住宅のほとんどの窓には灯りがついている
近所のクーラーやら貯水槽やらモーターがありそうな場所を調べる
いつのまにか古猫がやってきた
お前生きていたか
顔がショボンとしているのだが、まなこギラギラだ
こっちを見ているが近寄ってこない
ゆっくりと歩いて
潮の家の前、ちょうど猫道になっているあたりの
電柱の側へ立ち止まると
また、潮を見る
電柱を見上げて
またまた潮を見る
何やってるんだろう?
いつもは不愛想な奴が何か言いたげだ
結局、不快音の元も見つからず
一睡もできなかった
歯ブラシをくわえてリビングの窓を開けると
塀の上に古猫がこっちを向いて座りこんでいた
どうした?
古猫と目が合う
古猫は、のそっと立ちあがると
塀の上をゆっくりと玄関側の道路に向かって歩いて行く
こっちを振り返り
まるでお前も来いとでも言っているようだ
玄関のドアを出ると
古猫が電柱に向かってのっそりと歩いて行く
ゆうべと同じだ
潮が見ているかどうか振り返る
向かいの家の間から5匹の猫がでてきた
猫たちは輪になって電柱を中心にグルグル回り始めた
どの猫もうなだれているうえに
シッポが元気なく、しなだれている
不気味なくらい鳴き声をたてない
通勤の電車の中で
潮は朝の不思議な光景を思い出していた
もしかしたら、猫は何かを伝えたかったのではないか
潮は一週間不快な音に悩まされ眠れなかった
「どこか眠れる場所に避難したいよ」
家じゅうウロウロとしながら
アロンに訴える
赤ちゃんの泣き声は弱弱しくなって
拷問を受けているかのようなうめき声になっている
古猫はどこかに避難したのか叫び声がしなくなった
まだ陽が昇らないうちに、
アロンは疲労困憊した潮を連れて
緑地公園に散歩に出た
緑地公園に咲く黄色の花は太陽が差し込んでくると
まるでパラソルが開くように
するすると開いていく
緑一色の草原が
差し込んできた太陽の光に添って
黄色一色になっていく
きれいだ
「開く音が聴こえるようだ」
眠っていない辛さはあるが
ここには不快な音がない分
心地よい
気分がよくなって家に帰ろうと
師匠の家の角を曲がったとたん
額が痛みだし、いらいらとしてきた
あの音がするのだ
電柱だ!
電柱からあの音がしている!
師匠の家から潮の家まで3軒も家がある
それでも聴こえるのだ!
電柱に耳をつけて聞いても、アロンには聴こえない
聴こえると言い張る潮に根負けして
アロンは近所の電柱を15本も調べた
その結果、かすかだが振動音のする電柱と
全くない電柱の2種類の電柱の違いを見つけた
T電の電柱の上にある
コンプレッサーには2種類あり
古くて大きなコンプレッサーだけ振動音があった
潮はT電に電話をかけると
しらばっくれる担当者に
今日中に取り換えなきゃ訴えてやると怒鳴っていた
赤ちゃんの分も
猫たちの分も
思いっきり怒鳴っていた
コンプレッサーの取り換え作業が終わると
グルグル猫たちがまたもや一列になって現れた
元気よくシッポがたっている
たったシッポを左右にリズミカルに振り振り
電柱の回りをグルグル廻る
潮を振り返ると現れた時と同じように
一列に並んで静かに去っていった
古猫は電柱のそばに座っていた
ひげがピンとはっているじゃないか、お前
潮はその夜からぐっすりと眠れた
安心して眠れることが一番の幸せだと
しみじみ思えるのだった
そんな朝、潮は絶叫した
玄関のドアを開けると白いネズミがたたきの上に置かれていたのだ
猫のお礼は鼠だと聞いたことがあるが
「猫に小判 人間に死んだ鼠」
これはノーサンキューだよ~
今度、古猫に会ったらよく言い聞かせなくちゃいけない
わたし、ネズミ年生まれなんですよ
だから、真っ白なネズミが横たわっているのを見て
本当に絶叫したんです
小判がほしかったよ
ありがとうございます
ニコタのブログに収めるのに文字数を削ったので
なんだか自分では粗削りすぎる文章です
改装はトシraudさんの原案がすばらしいので
袋小路の路地裏を表現してみました
どうせなら、小判とネズミを交換しようよ~^^
朝、雨戸を開けると、ちょっと離れた道の真ん中に黒猫が寝そべっていて、
見るたびに「お、今日も元気だね!」と安心します。
たまに近所のおじさんにかわいがられてます^^
お話も、改装も、、お見事^^b
あ、ピンクの猫パジャマだけは作り事なの
大多数の人が着るパジャマで踊ってます
やっぱり猫っていいですねぇ
ありがとうございます
この話は15年前にあった本当のできごとです
他のエピソードも書けるかどうか、挑戦してみます
このお話は他にもエピソードある、連続モノですよねw