Nicotto Town



『線路は続くよ』

# 北風と少女



汽車が駅に着く

木枯らしが舞うホーム

汽車から降りた車内販売員に、小さな女の子がかけてくる


「アイスクリーム下さいな」

女の子が一生懸命な顔で言います

「こんな寒い日にアイスなんか食べて大丈夫ですか」

販売員が言います

「平気だよ。電車の中は暖かいもん」

「そうですか。じゃあ落とさないようにして下さいね」

「うん!」

大きく頷いて、販売員からアイスを受け取る女の子

「わ~い」

両手を挙げて駆け出そうとしたとき、強い北風がホームを駆け抜けました

「あ」


突然軽くなった右手を、恐る恐る見上げる女の子

そこには、アイスの棒だけが握られていました


「わ~ん。北風さんがアイスとっちゃったよ~」

泣き出す女の子

「北風のバカ~」


「ほらほら、泣かないで。アイスの棒をよく見てくださいな」

販売員が言います

女の子が、握りしめた棒をみると、そこには『あたり』の文字が書かれていました

「あっ、あたりだ」

「はい、当たりが出たからもう一本。今度は落とさないでね」

女の子は大きく頷くと、今度は大事そうに胸の前で握りしめます

「落としたアイスを踏まないようにしてね。気をつけていって下さい」

販売員の声に、足元に落ちてるアイスを見下ろす少女

「蟻さんだ」

落としたアイスに、一匹の蟻がよってきました

「蟻さんもアイス好きだもんね~。北風さんは、蟻さんにアイスをあげようとしたのかな」

「そうかもしれませんね」

「きっとそうだよ。北風さん、さっきはバカなんて言ってごめんなさい」

少女が頭を下げると、今度は緩やかな風が、ホームの落ち葉を舞い上がらせました


発車のベルが鳴り、汽車がホームを出る

「当たりが出て良かったね」

汽車に戻った販売員に声をかける

販売員が少しいたずらっぽく笑って言う

「実はあのアイス、全部あたりなんですよ。アイスを落とすのって、この世の終わりに匹敵するくらい哀しいですからね」


汽車は走り続ける

次はどんな景色に出会えるのだろう


つづく


(#^.^#)






アバター
2017/11/02 21:24
今度の木枯らしが舞う~ホーム…
最初は「寒そう」と思いながら…読んでいて…
更に少女が、「アイスクリームくださいな」と言った時は…
PCの前で『寒くないか?』と突っ込みましたが…w

北風さんの真意がわかって、
暖かい気持ちになりました。

本当にお話を作るのが、上手いですね^^

私事ですが…我が家も…長年~家の中のアリさんに悩んでいましたが…
2年前程に…諦めて『共存』を、する事に決めて…
アリさんが好きそうな食べ物を、アリさんが出て来る
TVの裏側の近くに置くようにしてましたw

今年は、気温の高低差が、酷いのか…女王アリさんが、寿命だったのか…出て来なかったです。




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