景色
- カテゴリ:小説/詩
- 2018/03/23 13:24:19
あなたの生まれた町に行ってみた
そこにはあなたの家もなく
あなたが遊んだ公園もなく
大きなマンションがそびえていた
これも時の流れか
冷たい入り口を見ていると
人が住んでいるなんて思えない
中には楽しげな笑いが聞こえても
外には響かない
切り取られたように
一軒の古びたコーヒーショップに入ってみた
パイプをくゆらすマスター
何年ここにいることだろう
ここが一番心休まる
マスターのパイプの煙のせいか
レコードから聞こえる曲は
名前も知らないけど
コーヒーによく似合う流れ
ブレンドコーヒーを口にしながら
過去の世界へと引き込まれる
ここで育ったのね
どんな子供だったの
今は忙しく働いているけど
ここに来て心休めて
明日という日を大切にして
いろいろな面を持ったあなた
私だけが知っている
疲れたのなら一緒に来るわ
パイプの香りに包まれて
思い出を走馬燈に映して
もうこれでお終い
もうこれが最後
ここにはもう来ない
結局は愛されなかった私の
最後のあなたへのメッセージ