雨宿り
- カテゴリ:自作小説
- 2018/08/29 23:32:49
夏休みの補習授業が終わった。塾のない田舎町にある高校で、熱心な先生が、夏休みの補習授業をかってでた。おかげで、高校最後の夏休みは3日しか残っていなかった。
校舎を出たとたんに、くらくらする日差しに、汗が噴き出した。真っ黒な学生ズボンが日差しを吸収して熱くなる。しかも、一週間はき続けているので、気持ちが悪い。
母に汗かいているから洗ってくれと頼んでいるけど、生地が傷むと週に一度しか洗ってくれない。生地の心配ではなく、暑い中、毎日、アイロンをかけるのが面倒くさいだけだ。
さっきまで、うるさいほど鳴いていたセミの声が聞こえなくなった。急に涼しくなり、空が暗くなると、ゴロゴロと雷の音が聞こえてきた。
家まで、20分は歩かないといけないのに、大粒の雨が落ち始めた。今朝、母が傘を持っていけと言っていたが、雲一つない夏空で雨がふるかと言って、持ってこなかった。コンビニでもあればいいが、住宅街で雨宿りができるような場所がないが、煙草屋があり、軒下に避難した。
ビニールの庇を打つ雨音と雷の音で大賑わいだ。濡れて帰ると、母の勝ち誇った顔をするだろうから、雨があがるのを待つことにした。
同じクラスの奈美恵が、庇の下に駆け込んできた。ほんの2、3分しか違わなかったが、奈美恵のブラウスは大粒の雨粒で水玉模様のようになっていた。奈美恵は、騒がしい女子が多い中、物静かで、そして可愛かった。
小さな煙草屋の庇の下で二人きり、手をのばせば届くところに奈美恵がいた。雷鳴と同じくらい僕の心臓は高鳴っていた。鞄の中のお守りに触れた。母にもらった恋愛成就のお守りだ。
出雲大社に遊びに行った母のお土産だった。僕は、受験生に恋愛成就のお守りとは何かの嫌がらせかと母に聞いた。母によると、学業成就を神様にお願いするのはお門違いだそうだ。勉強ぐらい自分で頑張れとのことらしい。
恋愛は違う。見た目が9割だが、残念ながら僕はその9割が期待できないらしい。母はその責任を感じているが、いまさら、どうしようもない。神様に祈るしかないから、恋愛成就のお守りにしたとのことだった。その時は、お守りを捨てようかと思ったが、良くないことが起こりそうで、鞄にしまっていた。
奈美恵は、小さなハンカチを腕やブラウスにあてていた。僕は、ズボンのポケットに一週間入れっぱなしのハンカチをとりだし、奈美恵に渡した。母が、毎日、洗ってくれていたら、こんなクシャクシャのハンカチを渡さなくても良かったのに。
奈美恵は、小さな声で、「ありがとう」とつぶやいた。少しだけ、僕のハンカチを使って、「洗ってから返すから、借りとくね」と言って、鞄にハンカチをしまった。奈美恵は、スマホを鞄から取り出し、ラインをはじめた。
僕も、スマホを取り出したが、何を話しかければいいのか、そればかり、考えていた。突然、空が明るくなり、空気が揺れ、バリバリ、ドカーンと耳元でドラムを叩かれたような音が響いた。
雷鳴が轟くたびに、奈美恵は肩をすくませた。青春ドラマだと、ここで、奈美恵の肩を引き寄せるところだ。僕が小栗旬だったら、奈美恵から抱き着いてきたかもしれない。
僕は、スマホをいじり続けた。母の9割発言がトラウマになり、お守りが作ってくれた最高のシチュエーションを活かせない。僕たちの前で、車が止まった。奈美恵がラインで母親に迎えを頼んでいたらしい。
「一緒に乗ってく」奈美恵から誘われたが、「もう少しで、止むと思うから」と断った。役目が終わったかのように、すぐに雨は止んだ。雨上がりの青空が広がり、セミが鳴き始め、高校最後の夏が終わった。
今は、女性不信です。テレビのノンフィクションの婚活の様子を伝える番組で、登場した女性は、この歳になったら、お金持ちかどうかなんて関係ない、イケメンかどうかなんて関係ないと言っていたのに、最後はイケメンじゃないとダメみたいな感じでした。
ゆりかちゃんは、モテモテなのに、イケメンかどうかは関係ないと奇特な方です。歳を重ねても内面が輝かないところが困ったところです。今週はニコタをサボって信長の野望に夢中になっています。高校生の時から、進歩していません。今日は健康診断でしたが、体重と腹囲は高校生の頃から成長してました。内面の磨き方を小和田先生に教わりたいです。
沖人さんの小説が読みたくなって、久しぶりに昔の日記にお邪魔しました^^
高校生の恋愛(未満)モノですね~。
初々しくて、懐かしくなります。
このシチュエーションには遭遇したことはありませんが、本当に起こったらドキドキしてしまいそうですv
それにしても、お母様が面白いキャラしてる~(*^▽^*)
もしかして、沖人さんの本当のお母様がモデルでしょうか??
ドライブの日記でも、楽しい会話をしていらっしゃいましたものね。
恋愛は見た目が9割…は、高校生の時はそうでしょうけど、年を取れば取るほど内面の魅力が輝くような気がします。
信長から「禿ネズミ」と言われた秀吉だって、小栗旬じゃなくても美女たちからモテモテでしたもん(笑)
小説の主人公も、次のチャンスは逃さず活かせると良いですね。
いつもながら残念なオチですが、高校生らしい初々しさもあって、ほんわか出来ました。
ちょっと私生活で寂しい出来事があったので、心が癒される思いです。
ありがとうございました(*^^*)
おいらは、試合終了だ・・・
たまちゃん
前は、ダンサーでなくて、フィギアスケーターファンだった気がする
雷が鳴った瞬間に、隣の小栗旬とかオーランド・ブルームとかマチュー・ガニオ(←バレエダンサーです)を
羽交い締めにして襲ったかもしれません。
でもかわいい高校生の男の子だったら、そっとしといてあげるかな。
あ、うっかりマダム目線で考えてしまった。
「諦めたらそこで試合終了ですよ」
って言葉が浮かんできましたw
夏はまだ終わってないと思うんだけどな〜まだまだ暑いしw
沖人さんの小説に出てくる主人公はいつも・・・ね?(笑)