ピアノ
- カテゴリ:小説/詩
- 2018/10/12 13:03:24
君の10本の指が躍る
白と黒の鍵盤の上
満たされたように耳を傾ける人々
みんなそんなふうに疲れている
そう こんな週の終わりには
グラスを傾けよう
そして音楽を聞こう
その片隅で君を見ている
知っているかどうか分からないけれど
鍵盤の他には何も見ないで
追いかけたかったに違いない
でもできなかったんだろう
理由はまだわからないけど
きっと悲しみのことだろう
だから何も言わなかった
一言掛ければよかったのか
いや そんなことでは済まされない
深く愛していた彼を失って
もう後もどりもできなくて
佇むしかなかったのだろう
重すぎたのだろう
失った愛が
その鍵盤よりももっともっと
想いを飛ばしたかったのだろう
それが果たしてできたのだろうか
ガラスの球が落ちて来る
受け止め損ねてパチンと割れる
でもそこが始まりなのだ
きみはわかるだろうか
再生への道のりが