悪魔なので邪神を育てる事にした 27話
- カテゴリ:自作小説
- 2018/11/22 20:24:58
~ 邪神の生贄 ~
「今日は新入社員の歓迎会じゃ! 生贄として松阪牛1頭分の肉を用意したのじゃ!」
「邪神様、生きているものをここで捌くのではないのですか?」
そう、ここは会社の空きスペースを急遽改造して作った、社員用食堂である。
火星人達は家も金も何も無かったので、お腹がすいていると言う事もあり、邪神様が作ったのだ。
「牛の血抜きとかして、食べられるように死後硬直が収まるのを待っておるより、肉屋で買ってきた方が早いじゃろ」
「それは生贄ではないのではないでしょうか?」
バアルは疑問に思い、邪神様に聴いてみた。
「我が食べれば誰が殺そうと生贄じゃ、古代から神が自分で殺して生贄などにしたことは無いわい。 それに考え見よ、人間は毎日自分の食料としている肉だって、屠殺を目に入らないようにして、人間は動物を食っておるじゃろうが」
「そう言う物なのですか・・・」
「草でも動物でも、クラゲでもミミズでもオケラでも生物兵器Gでも同じ命じゃよ、あれらが天国とか地獄とかに行くことが無いと考えているのがおかしいのじゃ。 動物愛護なんてのはただの潔癖症に過ぎん。 そうそう肉は450キロほど買ってある。 皆思う存分食べるがよいぞ!」
地球人に化けた火星人は大はしゃぎである。
勿論地球人の"天野萌"も大喜びだ。
「天然の動物性たんぱく質だよ! 火星では地下で光も人工的なものだから、合成たんぱく質しか食ったことないよ」
「地球最高! オレ永住するわ」
「こんな高級なお肉、食べた事ないです♡ しかもこれから社員食堂がずーっとワンコインで普通なら数千円位するランチ提供なんて嬉しすぎる~♡」
最後の言葉は萌であったが、周りの火星人の言葉は「松阪牛」やこれから提供される豪華なランチメニューの魅力で聞こえていない。
因みにこれはバアルが元々考えていた福利施設だ。
当初は奴隷に食料を提供するのは義務だと思い無料にするはずだったのが、経理から横やりが入ったのだ。
その為ランチメニューは社員待遇と言う事で、ワンコインでは手に入らない高級食材を使用している。
また調理は人間界の一流店のシェフを引き抜いた。
「それでは皆の者、ビールは持ったか? では祝辞はパスして乾杯なのじゃ!」
「「「「乾杯~」」」」
普段から地下に住んで「もやし」とか「クロレラ」、「ユーグレナ」程度しか食べられない火星人達は、日頃食べられない高級な牛肉を一人1キロくらい食べまくった。
火星の科学は進んでいるので、クロレラからも合成たんぱく質の肉は作れるが、パサパサして固くて美味しくなく、肉汁が無いのだ。
萌も負けじと400グラムも食べてしまった。
肉なんて1週間ぶりである。
親の借金なのに支払いを続けていたこともあるが、普段萌は近所の肉屋で帰宅を急いで閉店間際の処分で出る「豚バラ100g95円の肉以下」でしか食べてない。
独り暮らしの萌は沢山肉を買っても小さな冷蔵庫の冷凍庫に入れるしかなく、冷凍で失われるビタミンを無駄にしたくない上、大型スーパーで安い肉を買うのにも場所が不便で交通費で足が出るし、働きづめで買いに行く時間もなかったのである。
邪神様はサイコロステーキをちびちび食べて、メッコールを飲んでいる。
メッコールと言う飲み物は、韓〇の統一〇会が作っている、一見コーラの様な名前だが、炭酸入り麦茶である。
特に美味しいわけではないが、珍しいからたまに飲んでいるのだ。
因みに火星人はホッピーだ。
グラスに注ぐと、一見ビールに見えなくもない。
バアルやその妻、同僚の悪魔達は最初にビールで乾杯した後、思い思いにすごす。
こうして邪神の生贄(親睦会)は、つつがなく終了した。
ただし翌日胃がもたれた事は言うまでもない。
その頃火星では・・・
「ナニヤラ チキュウニ トラワレタ セントウインガ、イゴコチガイイノデ カエリタクナイト モウシテオリマス」
「ナント! カセイニ カエリタクナイホド イゴコチガイイノカ!」
火星の議会は途轍もなく荒れていた。
なにせ国家予算何年分もの費用をローンで支払いながらの戦艦建造である。
それをあっさり撃沈された上、乗務員が地球側で救助され、捕虜とは思えない好待遇で過ごしていると言うのだ。
火星債も限界であるし、このままでは先細り。
いっそ地球に移住しようと言う案まで出た。
この衝撃で火星で眠っていた何かが目を覚ます。
それは火星に長く眠っていた、火星の緒元の神、火星の邪神。
と言うか、緒元の力は同じなので地球と同じ邪神だが、別の星に出来た意思を同じくしない別の姿をした同位体である。
その名は「グラディウス」、メジャーすぎる軍神として某ゲーム会社がシューティングゲームの名前にした事もある邪神だ。
邪神グラディウスは地球に居る同位体を見て、なんか楽しそうなことをしているな、ちょっとからかってやろうと思っていた。
これらの情報は、火星だけでなく金星人も察知し、同じ様に金星の邪神も動き出した瞬間であった。
因みに金星の邪神は、ラミアの様な下半身が蛇の女性の姿をしていて、必殺技がドロップキックである。
詳しく書くと著作権に触れそうな邪神で、地球では何故か美化され足が付いて「愛と美の女神」とされ名前はウェヌスと呼ばれる。
こちらもメジャーな邪神で、地球ではギリシャローマ時代(紀元前130年頃)にアプロディーテーの像を作ったものが、後に1820年4月8日に発掘され勘違いされてルーヴル美術館に飾られている。
様相は正に太陽系邪神大戦へと移りつつあった。
邪神は宇宙のどこにでもいます ヽ(゚ω゚=)
貴方の隣にも、後ろにも・・・
因みに掃除機の中とか、エアコンの中とか、電子レンジの中とか、家電製品の中にもいます。