【DH】「ユベール」1 出会い
- カテゴリ：自作小説
- 2018/12/02 17:19:08
月の光を浴びて舞っている者がいる。
弧をやわらかに描く指先は
光の粒子を大気に解き放ちつつ
闇をまばゆい光で照らしだした。
肩から肘にかけて鳥が羽ばたくような優雅な動きで
両の腕を大きく開き 片方の腕を上げると
指先を天に向け それを軸にするかのように
くるりと体を反転させた。
反対の腕は遠く宙に伸ばし しなやかな指先からは
光の残像が尾を引いていた。
彼女だ。
俺は、確信していた。
幼い頃から 時折見る同じ夢。
その夢に出てくる女性がいる。
庭のはずれの森の入り口で月夜に踊る彼女の顔は見えない。
俺が近づいたことに気付くと 彼女は踊ることをやめ
こちらを振り向くと いつもこう言う。
「今日も星空がとてもキレイなの、いっしょに見られて嬉しいわ」
彼女の声は覚えてていない。
顔も見えていないのに、彼女が大輪の花が咲いたような笑顔になった気配がするのだ。
俺は彼女の手を取り、膝をついて彼女の指先にくちづける。
すると光が弾け 彼女も、あれほど明るかった月も姿を消し
暗い庭園にひとり残されたところで目が覚める。
+ + +
その日、俺は、いつもの通りの退屈な舞踏会で、
女性たちのむせかえるような香水の匂いにも
これみよがしに押し付けてくる豊満なバストにも
意味ありげな上目遣いの視線にも
その父親たちからの政治的な圧力にも心底ウンザリしていて、
いつもであれば過剰にできるサービスの笑みを返すことすら
できなくなっていた。
「少し外の空気を吸ってくる」
従姉妹のアルシアの姿を見つけ、そう言い置くと
庭園に出た。
父が高位貴族である以上、こういった社交の場を逃れることはできないし
どこかの貴族の娘を嫁にもらうのは政治的にも有意義なことなのは重々承知していた。
庭園をあてもなく歩きながら
「どうせ政治の道具なんだから・・・」
どこの女だってどれも同じだという続く言葉は声に出さずに飲み込んだ。
ふと目の端に動くものを捉えた。
すっと心が冷えた。
暴漢の類が庭園に忍び込んでいることも稀にあるからだ。
動いたものの方向へ目を移すと 森に続く庭園の端の少し開いたスペースで
舞っているものがいた。
拍子抜けして、殺気だった心を押え、足音を忍ばせて近づいてみる。
月夜に舞うその可憐な姿も動きもよく知ってた。
あの夢の女性だ。
その舞は、俺が知っているどのダンスとも違っていた。
美しい月と満天の星空を見ていたら心が高揚し
体がそれを表現したくてたまらなくなったというような
心の底からの喜びが伝わってくるものだった。
そっと近づきながら、俺は今までに感じたことがないほど心が高まるのを感じた。
弧をやわらかに描く指先は
光の粒子を大気に解き放ちつつ
闇をまばゆい光で照らしだした。
肩から肘にかけて鳥が羽ばたくような優雅な動きで
両の腕を大きく開き 片方の腕を上げると
指先を天に向け それを軸にするかのように
くるりと体を反転させた。
反対の腕は遠く宙に伸ばし しなやかな指先からは
光の残像が尾を引いていた。
彼女はふと踊りをやめて振り向くと、大輪の花が咲き誇るような笑顔になった。
俺は彼女が言うであろう言葉を先に言う。
「今夜も星空がとても綺麗ですね。ご一緒できて嬉しいです。」
彼女は笑顔を崩すことなく、優雅な動きで左手を差し出した。
俺は跪き、彼女の手を取ってくちづけるつもりだったが
これをすれば彼女が消えることも知っていた。
彼女の手を右手で取ると そのまま左手を彼女の細いウエストに回し
ゆっくりと踊り始めた。
彼女の体が少し躊躇したのを感じたが、それもほんの少しの間で
彼女は自分の右手を俺の肩に乗せ ふわふわと踊りはじめた。
ステップなど気にしない、自然な動きで 月の光を浴びながら
ふたりで夜気を漂うようなダンスだった。
心の底から楽しいと思ったのはいつ以来だろう？
政治的なサービスの笑みではない笑顔になったのは？
愛しいという感情は？
踊りながら体を抱き頬を寄せ耳元にささやく。
「名前は？」
自分から聞いたのに、その答えが待てずに
そのくちびるに自分のくちびるを重ねた。
柔らかな唇から吐息と共に落とされた言葉。
「レト・・・」
次の瞬間、彼女の姿は光の粒となり掻き消えた。
それが俺と、星見の魔女、レトとの出会いだ。
彼女は星を読む。
時として星の配列を恣意的に変え、相手を翻弄する悪魔だという噂もある。
しかし、このとき、俺はまだこのことを知らず ただ途方に暮れていた。
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ARCHMASTER 2018下半期企画 Dark Hero サイト
https://jackthenikotto.wixsite.com/dark-hero
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星見の魔女 レト：☤ネコ衛門☤さん
https://www.nicotto.jp/blog/detail?user_id=48178&aid=66877090
従姉妹のアルシア：和.comさん
（ユベールを出していただいたお話 「アルシア３」探したくない探し人）
https://www.nicotto.jp/blog/detail?user_id=180002&aid=66866923
（ユベールを出していただいたお話 「アルシア4」疑いようのない結末）
https://www.nicotto.jp/blog/detail?user_id=180002&aid=66875016
ユベールの基本情報：
ユベールは、とある王国の高位貴族の長子であった。
母の身分が低いがために後継にはなれなかったが、
見目に優れ、ダンスの名手でもあったことから社交界の華と謳われ、
さらに武芸にも秀で、国境線における戦いにおいては救国の英雄とまで称えられ……。
何ひとつ憂いのない貴公子、のはずであった。
それがある日、突然、何の前触れもなく失踪した・・・
母の身分が低いがために後継にはなれなかったが、
見目に優れ、ダンスの名手でもあったことから社交界の華と謳われ、
さらに武芸にも秀で、国境線における戦いにおいては救国の英雄とまで称えられ……。
何ひとつ憂いのない貴公子、のはずであった。
それがある日、突然、何の前触れもなく失踪した・・・
この話のキャラ、みんな良かったよね。
花火みたいで、余計に明るく見えるっていう
不思議な気持ちになったんだよねー
これほど死なせて惜しかったキャラも、ちょっといないよね！
アリシアと和衷も入れた4人の話は楽しかったなぁ。
あれ終わっちゃったのは残念だったけど
もう死んじゃったからなぁｗｗ
くつの持ち主を探す従者コーデを見て気になって見に来たｗ
なんか変な記号が入ってるなとは思ったんだけど
そういうもんかと思ったｗｗｗ
夢の中のレトのセリフ、最後の 」の前にある 〟 （カッコ閉じ） を外して下され (っω｀－。)
これ、いらんよね？
いまネコさんにもお願いしてきた。
読んでくれてありがとーーっ！！！
和.comさんのをさきに読んでいただくと
このふたりの最後を知ることになるわけで。
そこからの回想シーンです。
短い間だけどめっちゃらぶらぶなの書く予定！！
もう絶対手放さないぞって気合入ってるんだよねぇ
リンクありがとうございます！！！
レトちゃん めっちゃキレイなんで
甘やかしてるところいっぱい書きたい！
で、ボスがうげっとなるところも見たいｗｗ
でも、美しくも儚いんだね。
ようやっと逢えた運命の美女は腕に抱いてキスしたとたん消えちゃうなんて；
ユベールは再び彼女を探し求めて最後がああなると知ってから読むと
せめて短い生の中で幸福な時間を味あわせてあげたいって思うなぁ
もー甘－－－－－いっっ(≧▽≦)
ってなるらぶらぶなユベールさんのお話読みたい～♡
もうだってユベールさんはスパダリなんだもの(*ﾉωﾉ)
https://jackthenikotto.wixsite.com/dark-hero/blank-12
話増えたら下にリンク増やす予定
けどこれはきっと和さんの読んでから読むべきなんだろうね？
今夜これからまた読みに来れるかなぁ～
運命の人なんですよ。
やっと巡り合えたのに 呪いがかかっていてキスすると消えちゃう。
って続けようかなぁ。
で、いろいろあって 瀕死の彼女を見つけて
彼女と一緒に暮らす話が 和.comさんところのお話。
っていう流れかな。
レトと知り合ってしまったら､元には戻れない想いでいっぱいだろうな？
ふれあえば消えてしまう彼女との恋は､儚さそう。
それでも、運命の人を探し続けるんだろうなぁ～
＞すべてが花開く
＞星の下で
っていう個所を確認しに行ってきた。
あの詩 読んだのにこの部分は忘れてた。
でもまぁもとが「星」だからね、あの詩。
確かにでもこの話にぴったりな部分だねーーっ
さて次の構想も練らなきゃな。
待ってましたーっｗ
早く読んで！早く読んで！ってワンコ気分で待ってたよｗ
とにかくダンスシーンが書きたかったので
そこに一点集中。
和.comさんのアイデア いつも夢にでてくる女性っていうのを入れなかったら
ただのダンスシーンでした_(L〃_ _)ﾉｼﾊﾞﾝﾊﾞﾝﾊﾞﾝ‼
運命の人だったってことを印象付けるのに良かったよね！！！
手が早いｗｗ
そうそう 和.comさんアイデアより実行力高かったねｗ
いやぁ でもどうしてもキスはさせたかったんで。
すべてが花開く
星の下で
という歌詞があった。それが、大和さんの書いたこの話にピッタリだと思ったわ❤
詩情あふれる…とは、こういうのに使う言葉なんだろうな。
＞ 指先を天に向け それを軸にするかのように
＞ くるりと体を反転させた。
＞ 反対の腕は遠く宙に伸ばし しなやかな指先からは
＞ 光の残像が尾を引いていた。
この冒頭から、舞う女性が目に見えるようだ (〃▽〃) 軸のぶれない美しい姿で！
これは大和さんじゃなきゃ書けないわーーーっ。
夢の女性は指先だけで消えるのに、現実の彼は手が早いなｗｗｗ
さすが、ユベール！
読んでくれてありがとう！
ユベールはレトを護ろうとして死んじゃうんですけどね。
でもきっと大満足な人生だったんだよ。
瀕死のレトを見つけるところの間に
もうひとつくらいエピソードを考えたいかなぁ。
満点の星空と、それの負けないくらい輝くレトの笑顔が見えるようだった。
ユベールと踊る姿と。
またすぐに会えるといいねぇ。って応援したくなるような(*つー‘*)ｴﾍｯ。
そうそう 失踪したのは彼女を探すためです。
まぁでももう少しなにか決定的なものがほしいですよねぇ。
ふたりを運命づける何か。
もうちょっと考えますねー。
レトは悪魔なのかなあ
そうなんです。
お相手に☤ネコ衛門☤さんのレトさんをお借りすることになりました。
ベタ甘なストーリーなので スピンオフです。
彼女は星見の魔女で、二面性があって
俺が惚れてるのは良い面の方なんですけど、
悪い面を知っても尚心は変えられないっていう。
で、悪い面の方で恨みをかっていた敵と最後は戦って殺されますが
最後の最後までレトのことをずっと愛してるんですよ。
アイスダンスっぽいかも！！！！
和ちゃん作品と並べて読み直さないとね＾＾
星見の魔女ってネコ衛門さんぽい
どことなくアイスダンスを思い浮かべた
庭のはずれの森の入り口で月夜に踊るシーン
わーい 喜んでもらえて良かったです！！！
なんかすみませんでしたー。
うまく話をつなげられるといいなぁ。
なんせ和.comさんも☤ネコ衛門☤さんも書くの早いからね。
相談しながら進めますね！
サイト拝見しましたよ！
となりにレトちゃんですねd(^-^)ﾈ! URLリンクありがとうございます！！！
わーい ありがとーっ❤
とにかくこのダンスシーンを書きたかったのだよねぇ。
＞ユベールがある貴族の庭園で、月明かりを頼りに踊っていた光景を。
＞お相手は、どこか戸惑いがちな表情を見せながら、それでも美しく可憐であった。
＞一方のユベールは、公の場で常に見せている社交辞令バリバリの、うさん臭い笑顔ではなく、
＞とろけるような満面の笑みを振りまいていた。
＞アルシアは、とうとう惚れたか、アイツ… と心のなかでニヤニヤと笑っていたものだった。
ここですねー。
ここだけクローズアップです。
ユベールは舞踏会に辟易としてたんですよ。
それと、よく夢に出てくる女性とついに出会いました。
これから彼女のことと、前世のこととかが語られるでしょうかー？
詩情溢れる世界を思い出のように語った感動的な出会い
ちょっと気が咎めるが和ちゃんの話をぶっ壊してよかった
いい話もう一個増えた＾＾
アルシア・スピンオフとしてサイトにURLリンクするよ
すごいキレイだったー
ためいき出た(´☯ω☯) ﾟ｡✧
レト使ってくれてありがとー(*´▽｀*)