大晦日
- カテゴリ:自作小説
- 2018/12/31 21:42:21
愛美(母)は、貴志の布団をがばっとめくった。
「いつまで寝てんの。早く、起きて、雪かきして。」
「まだ、暗いじゃん。大晦日くらいもっと寝かしてよ。」
「何、言ってんの。ご近所さんは、もう雪かきしてるわよ。」
貴志は、いやいやながら起きて、暖かい格好に着替えた。冬型の気圧配置が強まり、雪が降り続いていた。雪国では、通勤や通学の時間までに、玄関先や家に面した歩道の雪かきをする。大晦日も普段通りの雪かきだ。
貴志は、顔を洗って、キッチンで牛乳を一杯飲んだ。
「親父が、雪かきをすればいいでしょ。」
「お父さんは、昨日の夜中に雪かきをしてくれたのよ。そしたら、ぎっくり腰になったのよ。いい歳なんだから、張り切らなくていいのに。ママさんダンプは物置に入っているからね。」
貴志は、防寒靴を履くと玄関先から雪かきをはじめた。玄関先は狭くて凸凹して、ママさんダンプが使えない。スコップで融雪槽まで雪を押していった。車に積もった雪を落として、ママさんダンプに集めて、また、融雪槽まで押していった。氷点下の気温だが、身体がほかほかしてきた。
歩道に積もった雪は、人が歩ける分だけ、ママさんダンプで押していく。歩道わきは雪山になっているので、持ち上げられない。ママさんダンプが雪で一杯になると車道にぶちまける。
貴志が三橋家の周りの歩道の雪かきが終わること、隣の家から、スキーウエアを着てスコップを持った女久美が出てきた。貴志より3歳年下の幼馴染だった。
「久しぶり、帰省してたんだ。東京で働いているんだっけ。」
「昨日帰ったばかりなのに、雪かきしてって、起こされちゃった。」
「俺も一緒だよ。いいよ、女久美んちの歩道、俺がやっとくから。」
「ほんと。ありがとう。お化粧もしてないから、恥ずかしい。またね。」
貴志は、玄関に戻る女久美を見つめていた。久しぶりにあった女久美は、あか抜けて美人になっていた。貴志は、中学や高校の頃の女久美を思い出しながら、ママさんダンプを勢いよく押していった。
雪かきを終えた貴志はジャンパーを脱ぎ、キッチンに入った。
「腹減った。朝ご飯は。」
「その辺にあるもの勝手に食べてよ。忙しんだから。はいはい、甘酒のんで温まって。」
貴志は、甘酒を飲みながら、せわしなく働く母を見ていた。母は、忙しい、忙しいといいながら、楽しそうにおせちを作っていた。
「貴志、おせちには、それぞれに意味があるのよ。黒豆は、つるつるピカピカのお肌になるようにって想いが込められているの。だから、しわしわの黒豆になったら失敗なのよ。目じりに小じわがあると5歳は老けて見えるからね。」
「ふ~ん」
「なますやかまぼこは、色白になりますようにって願いが込められているの。昭和の頃は、小麦色の肌が健康的って言われてたのにね。こんなに色白がもてはやされるようになったのは、ガングロのせいよ。雨も降ってないのに傘さすの面倒だわ。」
「ふ~ん」
「昆布巻きはね、白髪が生えませんようにって願いが込められているの。白髪になたら、10歳は老けて見えるわ。でもね、茶髪に染めたら5歳は若返るわよ。母さんも、クリスマスのディナーに行くときに染めたの。前より若く見えるでしょ。」
「ふ~ん」
「栗きんとんは?うん?なに?絞られて窮屈な感じね。きっと、巨乳になりたいって願いかしら。」
「あほか」
愛美が、鍋を洗いながら、貴志の方を振り向いた。
「隣の女久美ちゃん、胸大きいよね。あんた、女久美ちゃんのこと好きだったんじゃないの。昔は、女久美ちゃんと一緒に初詣に行ってたわね。」
「・・・」
「女久美ちゃんのお母さん、張り切っちゃって、大変だったのよ。昨日なんて、家の中の掃除、手伝わされちゃったわ。だから、おせちがぎりぎりになったのよ。」
「なんで、女久美のところの掃除を手伝わないといけないの。」
「今夜、女久美ちゃんの彼氏が来るのよ。貴志より3つ下だから、女久美ちゃんも25歳でしょ。彼氏は商社に勤めているらしくって、女久美ちゃんより、お母さんの方がテンパっているわ。」
「もう一回、寝るわ。」
「貴志、朝ご飯も食べずに、寝るの。お母さんが一緒に初詣行ってあげるから、泣かないのよ。え~と、数の子は、ぴちぴちお肌かしらね。」
ママさんダンプ、分かっていただけましたか。肝っ玉母さんに是非、なってください。
さなちゃん
温暖化でなく、寒冷化を心配している科学者もいます。温暖なところですが、早めに1台いかがでしょうか。
たまちゃん
フランス映画といい、胸の大きさに関心を寄せてないでしょうか。男子認定をさせていただきます。
ゆりかさん
初詣のおみくじは吉。「待ち人:思う日までに来るべし」でした。思う日の設定を考えているところです。
mさん
雪押君のような形のはよく使っていましたが、スノープレッシャーって初めて見ました。雪掻きグッズも進歩してますね。
Cherryさん
雪が積もる地域にお住まいだったのですね。確かにママさんダンプで雪捨て場に雪を持ち上げるのは力仕事です。パパさんダンプの呼称を広げてください。
オレンジ先生
自分も、お正月にコメ袋30kgを運んだら、腰が痛くなりました。歳には勝てないのです。
veronicaさん
同人フェアに集まる方々は、過激な行動とは対極に位置しているような気がします。中核派に萌える人はいないと思います。
mさん
久しぶりに会う人に、白髪増えたね。苦労しているのと言われます。はい、苦労してます。
お母さんの言い方で
くすっと笑っちゃいました・・・。
せっかく女久美ちゃんの為に
雪かき頑張ったのに
がっかりしちゃいますね。
お母さんがマイペースすぎて
笑っちゃいます^^
おせちの意味読んで、思わず笑っちゃいました。
そういうとらえ方もあるんですね。
雪かき道具、いろいろ持ってます。
ママさんダンプも買ってみたけど、
あれは取扱者は男性用でパパさんダンプというべきだと思います。
ママさんダンプだと雪が重くて押せなくなっちゃうので女性には扱いにくいです。
雪かきスコップが楽で最近は雪かきスコップ使ってます(最近毎日使ってます)(-.-)
例えばこんな形(ホームセンターでもっと安く買うけど)
↓
アイリスオーヤマ スノープッシャー PPS570 雪かき オレンジ 奥行57×高さ14×幅134cm
こちらは年に数回しか雪が降らないし、滅多に積もらないから、ママさんダンプがわかりませんでした。
調べたら、なるほど。雪かき道具なのですね。お父さんをぎっくり腰にさせるとは、雪は綺麗なだけじゃなくて大変ですね。
おせちにそんな意味があったとは(*^^*)
今度からもっと有り難がって食べます♪
黒豆は確かに見た目もツルツルですものね。いつも余ると黒豆プリンにしてましたが、しわはどうなるんだろう。
貴志くんは女久美ちゃんが好きだったのですね。残念。
二度寝しないで、良い出逢いがあるように初詣でお願いしましょう(*^-^)
よし、今年は栗きんとんを食べまくるぞ。
目に良さそうなのは何だろう。ごまめかなぁ。
書類を読むときに離したりしたら10歳老けて見られると思うから、
ごまめもたらふく食べちゃおうっと♪
ママさんダンプって一輪車をイメージしてたらちょっと違ったw
こちらではあまり縁のないアイテムでした〜
見たこともなければ聞いたこともないです…
マイペースなお母さんのキャラがとっても好きです(*´∇`*)