インフルエンサー
- カテゴリ:自作小説
- 2019/02/08 06:07:18
朝目覚めた時には、喉が痛くて食欲がないなと感じるくらいだったが、朝いちのドイツ語の講義を受けていると、悪寒を感じ始め、そのうちに、ひじやひざが痛くなってきた。講義が終わるころには、座っていることもつらくなってきた。
サッカー部の生田に、今日の練習を休むと伝え、大学をあとにした。アパートに向かう途中にあるコンビニで、水とウィダーインゼリーを何個か買った。部屋に着くと、スエットに着替えて、ベンザエースを2粒飲むとベットに入った。
寒い、身体が痛い。関節だけでなく、全身の筋肉が痛くなってきた。エアコンを28度に設定して、タオルを濡らして額に載せた。エアコンは音をたてて動いているけど、全然、暖かく感じない。肩口が寒い。額に濡れタオルを載せているので、寝がえりを打つこともできない。
寝た。ひたすら寝た。夕方に目覚めた。額から濡れタオルが落ちて、枕もとを濡らしている。寒気を感じるのに、汗をかいて布団が湿っぽい。喉が渇いたので水を飲もうとしたけど、キッチンまで歩いていくのがつらい。水を飲むと、また、ベットに入った。
インターホンで目が覚めた。時計を見ると夜の9時。宅急便かな。ベットから出たくないけど、また、配達をしてもらうのも申し訳ない。キッチンで口をすすぎ、玄関のドアを開けると、サッカー部のマネージャーの白石さんが立っていた。
「こんばんは。伊藤君、風邪ひいたんでしょ。大丈夫。」
「すいません。どうぞ、入ってください。」
玄関に散らばったスニーカーを足で端っこに寄せた。白石麻衣は1学年上で、近くの看護大からマネージャーに来てくれている。
「生田君から、風邪で練習を休むって聞いたから、果物を買ってきたの。寝ててね。何か食べた?」
「水しか飲んでません。」
白石さんは、持ってきた紙袋をキッチンに置くと、包丁を借りるわよと言って、林檎を剥き始めた。ベットで寝ていると、白石さんがカットした林檎と摺りおろしたジュースを枕もとに持ってきてくれた。
白石さんは、大丈夫と言って、僕の額に手のひらをあて、熱いねと言った。すると、自分の額を僕の額に重ねた。白石さんの髪の毛が僕の頬にかかり、柑橘系の甘酸っぱい香りがした。心臓がぎゅっと握られたような感じがして、体温が一気に40度を超えた気がした。
「熱はあるけど、そんなに高くはないわね。計ってみようか。」
白石さんは、バックから体温計を取り出すと、僕の腕をつかみ脇に体温計を入れた。1分くらいで、ピピッとなった。
「37度6分。これから、熱が出てくるのかな。それにしても、汚い部屋ね。片付けていい?」
キッチンには、洗っていない食器やカップラーメンの器が転がっている。ワンルームの部屋には、脱ぎ捨てた服や雑誌がいたるところ散乱している。白石さんは。食器を洗ったり、服をたたんだり片付けをはじめた。
「伊藤君は推理小説が好きなんだ。アガサ・クリスティーの小説が多いね。」
白石さんは、雑誌を本棚にしまっていた。
「乃木坂46水着写真集。こんなの買ってるんだ。あれっ、付箋貼っているのね。」
恥ずかしくて、一気に体温が40度を超えた気がした。
「伊藤君が付箋を貼っているの、みんな胸が大きい子ばかりね。そうなんだ。ふ~ん。危ない、危ない。そろそろ帰ろうかな。水をいっぱいとってね。」
白石さんは、お大事にと言って帰っていった。
次の日も学校を休んだ。その翌日、部活に行くと、白石さんがいなかった。他のマネージャーに聞くと、風邪で休んだと聞いた。部活が終わると、スーパーで洋梨やバナナを買うと、マネージャーに聞いた白石さんのアパートを訪ねた。
オートロックのインターホンを押して、伊藤ですと言った。
「伊藤、来てくれたのか。入って来い。」
男の声がした。サッカー部のキャプテンの梅澤だった。
玄関のチャイムを押すと、梅澤が出てきた。
「どうした。」
「白石さんが風邪と聞いたので、差し入れを持ってきました。部活のみんなからです。」
「ありがとな。あがってくか。」
「差し入れを持ってきただけですから。」
キャプテンの梅澤が同棲をしているとは聞いていたけど、白石さんだったのか。玄関のドアを閉じて外に出た。アパートの中は柑橘系の香りがしていた。少し、恥ずかしくて、酸っぱい思い出になってしまった。
欅坂に入って、一儲けしてください。
みんな沖人さんの御眼鏡に適ってよかったですねぇ(* ´艸`)クスクス
けやき坂も乃木坂も、みんな可愛い、合格。
アイドルもお好きなんですね〜
私は白石さんより上白石さんの方が好きかなw
いつだって知らないうちに僕は見回している (何度も)君がどこで何をしているか気になってしまうんだ (声なくなる) 声くらいかければいい誰もが思うだろう (できない) by秋元康
オレンジ先生
そうです。迂闊に、若い男の部屋に一人で入ったら危険です。勘違いをしてしまいます。いい歳の男だったら大丈夫かもしれません。
ゆりかちゃん
一昨年、熱を出した時には、布団の下の床が濡れてしまうくらい汗をかきました。丸二日熱が続いて、水しか飲めなかったです。どうして、それなのに、痩せないのでしょうか。不思議です。
環謝さん
今回は、伊藤君のうっかりですね。どこかにうっかりの称号を持っていた人がいますね。看病してもらっただけでも、いい思い出ですから、伊藤君も前に向かって進んでいるでしょう。
みーぴこさん
やはり、額に手をあててもらうよりは、おでこをくっつけて欲しいですね。看護師さんなら、ぽっけに体温計が常駐しているので、そんな場面はないでしょうね。
mさん
大丈夫。残念なオチしか、この日記には現れないと思います。フィリピン人の奥さんの話の方が小説よりも飛んでいますね。
たまちゃん
男子は、ちゃんと、女子に見せることができないものは隠しているんです。しかし、母親は野生の勘で、その所在を見つけてしまうのです。おそろしい。
そもそも部活のマネージャーをやるような人って、
世話女房の素質がある人ですよね。
そういえば、白石さんに見つかってしまったのは水着写真集だけで、
ほかの恥ずかしいDVDなどは見つからずに済んだのですね?
伊藤君、セーフです!
いいですねw
沖人さんの文章はいつも心にすっと馴染んじゃうのが好きです。
ただ・・・いま時 額と額を付けて検温?する看護学生が居るかは疑問です(。≖‿≖)
頑張れ伊藤君w きっと素敵な恋ができるよw
なんとなくクスッと笑えるのであまり深刻な失恋というわけでもなさそうで、ホッとします(*´ー`*)
よし、伊藤くん!色んな教訓を生かして次いこー!٩(๑❛ᴗ❛๑)۶
去年、インフルエンザにかかって40度の高熱で寝込みました。
伊藤君の辛さが身に染みてわかります~。
そういえば、沖人さんも年に一度は熱を出すとおっしゃってましたね。去年の冬も。
もしや、これは実話も織り交ぜられていたりして?^^
白石麻衣ちゃんのような美人マネージャーが看病してくれたら、風邪も吹き飛びますね。
こんな夢のような展開がいつ訪れても良いように、室内の清掃と本棚の整理はしておくべし、という教訓も含まれているのかな(笑)
一人でお見舞いに行くことに、梅澤君の許可が出ていたとしたら、伊藤君はよほど信用されているのか草食系だと思われていたのでしょうね~。
あらら、白石さんに風邪移しちゃった。
今回も残念な結果に終わりましたが、相変わらず主人公が憎めなくてすごく面白かったです。
次回作も楽しみにしていますね(*^^*)
勘違いもしたくなりますよねぇ^^
とぼとぼ帰る伊藤くんの
背中が見えた気がします・・・。
今回もちょっとだけ切ないお話でしたね〜