Nicotto Town


おうむたんの毒舌日記とぼうぼうのぼやき


ほっかいどいんこ いんこ色のクレヨン

「いんこ色のクレヨン」
郵便受けに 小さな包みが放り込まれていた。
差出人を見て からだがこわばる。いたずらなんだろうか?
だって あいつが 荷物送れるわけないじゃん。
いんこなのに!天国に行ってしまったのに!

得たいの知れぬ包みが不気味だった。でも。
あいつの名前で差し出された この包みの中身はなんなの
だろう?
意を決して 恐る恐る包みを 開ける。包みから出てきた
のは 小さな箱。ふたに文字が書いてある。
「いんこ色のクレヨン・・・?」

クレヨンの箱を 開く。
「これって・・・」
思わず息をのむ。
箱の中にずらりと 鮮やかな色のクレヨンが並んでいた。
みな なつかしい色ばかりだった。
あいつの・・・1ヶ月前 逝ってしまったあいつの色だ。
そのまんまの色だった。
青色のクレヨンを 日にかざしてみる。
キラキラと光を反射してクレヨンのその色は 変化して
ひなたぼっこの時の 日差しの中の あいつの色になった。

その後は 夢中だった。
画用紙をひっぱりだすと あいつを描き始める。
あいつに会いたい 会いたい 会いたい、もう1度
会いたい・・・早く 早く 早く 会いたい。
おいおい、どうしたっていうの?気持ちの整理は
ついていたじゃない。つらくても 別れは来るのだ、
と。ちゃんと 見送ってあげたのだ それが飼い主の
最後の責任なのだから、と。
違う、会いたいのだ 訊きたいことがあるのだ。
訊きたい事?何だ それ?
考えが混乱していた。

画用紙のなかに ちょっと下手っぴな あいつの姿が
現れてきた。
知らぬ間に 言葉が 口をついて出た。
「ねえ、君は うちで暮らして 幸せだったの?」
それは 答えが返ってくるはずのない 問いかけであった。
いっしょに暮らしている時から 出かかっては飲み込んだ
問いかけだった。ましてや 逝ってしまった今となっては
不毛な問いかけなのだ。なのに。それでも なお。
どうしても 答えが欲しかった。

  君は幸せだったの?

画用紙の中の君は かすかに 笑ってうないづいた?
心の奥底のくさびが はずれた。
涙で君がかすんでいく。

どれくらい時間がたったのだろう?
あたりは 夕闇に包まれつつあった。
かたわらに 何の変哲もないクレヨンの箱といんこ色が消え
たクレヨンが散ばり 画用紙には下手っぴないんこの絵。


  君は幸せだったの?
  うん。


もう少ししたら。また いんこを飼おうかな。




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