悪だくみ
- カテゴリ:自作小説
- 2019/03/20 07:09:56
就業時間が終わる5時半になると、机が隣の法子は、すくっと立ち上がると「お先に失礼します。」と周りに声をかけて帰宅した。携帯用のアプリを開発している会社で、早くリリースをしなければ、せっかく作ったアプリが陳腐化してしまう。仕事は時間との勝負で残業が当たり前のような職場の中、毎日、定時で帰る法子は目立っていた。
しかし、職場で法子のことを批判している社員はいなかった。法子は営業担当がクライアントからヒアリングした要望を、システム設計する担当をしている。プログラミング言語の知識が豊富でシステムの発想が斬新、しかも、自分の担当でない仕事も、聞けば的確なアドバイスをしてくれる。会社に欠くことができない人材として、法子は一目おかれていた。
法子は自分より3歳年上の28歳。3年間隣に座っているけど、彼女のプライベートは謎だった。容姿端麗だけど、男っ気があるように感じない。昼休みの雑談も、新しい開発プログラムやバージョンアップのことが多く、浮ついた話はなかった。
送別会の居酒屋で彼女の隣に座った。お酒の力をかりて聞いてみた。
「法子さん、毎日、定時に帰って何をしているんですか。男の人と同棲しているんですか。」
「そんな風に思われているの?部屋で猫が待っているの。夕方になるとお腹を空かすから、早く帰ってあげたいの。」
「法子さん、付き合っている人はいないんですか。」
「正雄君、突然ね。猫の方が男よりずっと可愛いわ。うちの猫、キョンって言うんだけど、人見知りが激しくて、私以外の人がいると落ち着かなくて、吐いたり、あちこちでトイレをしたり、焼餅焼きなの。キョンが認めた人じゃないとだめ。」
「僕、猫大好きなんですけど、キョンに会わせてもらっていいですか。」
「いいわよ。でも、今日は、夜だからだめ。」
土曜日に、同僚の貴志と一緒に、法子のマンションを訪れた。部屋に入るなり、キョンは貴志に猛然とダッシュすると、ふくらはぎに噛みつき、逃げて行った。
「ごめんね、貴志君、人見知り激しいの。悪気はないから、みんなにそうだから」
ソファーに座り、出されたダージリンを飲んでいたら、キョンが確かめるようにゆっくりと近づいてきた。すると、僕の膝に乗った。キョンは身体を伸ばし、前足て僕の胸をトントンしている。顔を近づけるとぺろぺろ舐め始めた。
「すごい。キョンが私以外の人の膝に乗るの初めて見たわ。正雄君って、猫に好かれる人なのね。」
家に帰って、顔を洗った。
第一関門突破。将を射んとすれば、先ず馬を射よ。英語で言えば、He that would the daughter win must with the mother first begin.娘が欲しければ、先ず母親に気に入られろだ。
Tシャツをめくり、テープでお腹に貼り付けていた鰹節の出汁パックをはがした。鰹節のエキスを塗った顔も洗ってすっきりした。
まだ、スタート地点にたっただけだ。猫と仲良くならないといけない。実家のタマを借りてきて、一緒に住んでもいいけど、勝手につれていくなと、母が怒りそうだ。それに、残業で餌をあげる時間が遅くなって、タマも怒りそうだ。
まずは、定時で帰ることができる「仕事のできる男」になろう。そして、猫の里親になろう。法子への告白はそれからだ。よし、闘志がわいてきたにゃん。
年齢を重ねると寛容じゃなくなってくるけど、今から我慢しようと思わないし、これから自分が変わるとも思えないし、好きなことは好き、嫌いなものは嫌いと、自分の気持ちに正直に生きるようになるのかなと思います。若い頃ほど、いい格好をしたいとも思いません。無理をしない自然体。自分もそんな風に、なってきたような気がします。
ホントに悪巧み悪知恵、ある意味姑息だよ、正雄くん(笑)
でもまぁ、その後が上手く行ってちゃんと法子さんを愛し抜ければ全て良しです。
猫は私にとって幼い頃からの相棒でした、今は毛が駄目なので飼えませんが。
相手の好みに合わせるって結構難しいですよね、好きになってのぼせてる時は
我慢できても冷静になると我慢できなくなる。。。
私は結構今まで相手に合わせて来た方だと思いますが、あまり我慢と思って
なかったかもしれません。。。気にしてなかったのかもw
今は逆に相手の好みと自分の好みが合わないと、その時点でかなり難しいかな
って思ってしまいます、何の変化はわかりませんが。。。年齢もあるのかなぁ^^;
まぁ、人どうしすり合わせる事は必須でどこまで譲れるかも愛情のポイントに
なってくるとは思いますし、相手への思いやり理解力はかなり重要になってきますね。
この二人が末永く上手く行くことを願っています(笑)
それは仕方ない。人間でもたまねぎが近づけば、涙が出る。くりりとした大きな瞳の猫ちゃんは、たまちゃんの硫化アリルが我慢できないのだろう。ポイントは水に浸すことだ。硫化アリルは水に溶ける。風呂上りがお勧め。
何事も戦略が大事ですよね。
緻密かつ大胆に攻略せねば!
うちの母も、臆病で人見知りの近所の猫を、鰹節で手なづけてました。
その猫、臆病なはずなのに、なぜか私には威嚇してきました (゜o゜)
またたびに効果があるのかどうか分からなかったので、鰹節にしました。
環謝さん
ねこちゃんも賢いから、二回目からはひっかからないかもしれません。モンプチに変更かな。
ゆりかちゃん
猫には相性があるかもしれませんね。人も一緒かな。正雄君はタイミングを計るのが苦手かも。
Cherryさん
猫好き女性と付き合うために、鰹節スプレーとか鰹節味リップを作ると売れるかもしれません。
さなちゃん
このまま、悪だくみを続けたら、正雄君は悪い人になってしまうかもしれないので、続きなし。
オレンジ先生
同じ趣味とか、大事なものを理解してくれるということは大事ですね。いい旦那さんでいいいですね。
Candyさん
実験してみます。鰹出汁を煮詰めて顔に塗ってみて、コンビニ店員の反応をうかがってきます。
みーぴこさん
次は、会社の机に猫グッズを並べて、スマホの待ち受け画面も猫ちゃんに変更です。
うんうんwこれは悪だくみではないですね~
恋するゆえの 創意工夫ですw
彼には頑張ってほしいです♪
ただ・・・
準備期間が長すぎると
どこかの泥棒猫に横取りさえれちゃうゾ (*^^)
いつも 心和む楽し物語を ありがとうございます♪
とってもよくわかります。
私がダンナを選んだ理由は
お休みの日に
わんこも一緒にデート出来るから・・でした^^
わんこ連れてお弁当持って
ドッグランや海でしたねー。
このお話には続きがあるのかしら・・・にゃんwww
正雄君の猫攻略がナイスです。
ほのぼのと笑わせていただきました!
法子さんのような、仕事の出来る女性に憧れますね~。
3年間、隣同士でも仕事の話しかしないなんて、なんてストイックな!
正雄君も、そんなカッコ良い姿に惚れたのでしょうか^^
職場ではストイックを自称する沖人さんも、誰かから惚れられてるかもしれませんねv
焼餅妬きのキョンを手懐けるのは大変そうですね~。
あ、なるほど!猫に好かれるには、そんな方法がありましたか。
正雄君の健気さに心打たれます。
法子さんへの告白が成功しますようにv
でも沖人さんの小説のいつものパターンだと、時間が立ち過ぎて、法子さんは別の人と結婚するオチになりそう…かも?
鉄は熱いうちに打てですね。正雄君、頑張ってください。
今回も、すごくほんわかして面白いお話でした(*^^*)
そこまでやれるほど好きだと思える人に出会えた幸せ…ちょっと羨ましいかも(*´Д`*)
悪だくみを通り越して、いじらしいじゃないですか٩(๑❛ᴗ❛๑)۶ガンバ!
しかし鰹節にわ参りましたぷつぷっぷ
でも努力は半端ないフレーフレー正雄君