リング
- カテゴリ:小説/詩
- 2019/03/27 10:21:00
ふと手をかざしてみる
右手の薬指に光るシルバーのリング
あなたからのたった一つの贈り物
外してしまえばよかった
でもまだ外せない
あの頃は二人よく笑ったものだった
カフェの外のテーブルで
遊歩道を歩きながら
帰り道の地下鉄の駅まで
なんであんなに笑えたのだろう
もしかしたら手のひらに笑顔を載せて
吹き飛ばしたのかもしれない
ちょっと吹けば飛ぶような
弱い存在じゃないと思ったのに
だって愛していた
あなたからも愛されていると思っていた
そうじゃなかったなんて思わなかった
私の独りよがりだったのね
あなたの背中は冷たすぎる
もう抱きしめてはくれないのね
もうすぐ春という名の季節が来る
風もだんだん暖かくなる
ここにあなたがいないなんて
信じられないのに
これが現実
追いかけていきたかったけど
あなたの心が遠すぎた
もう私にはつかめない
でも 同情だけでは愛は育たない
どちらも枯れてしまうだけ
愛を下さい もう一度
そう あの人の愛を
でも駄目
もう振り返れない
涙で道がぼやけてしまっても
春の鳥たちが告げる優しさは
花々に息吹を添えて
陽の光に輝く
私はどこへ行こう
外せないシルバーのリング
次へのステップにあがれない
分かっているけど外せない
まだこんなに愛しているから
まだこんなに忘れていないから