着ぬ
- カテゴリ:小説/詩
- 2019/04/04 01:47:35
眺めし 愛し 其の幹に
頬ずりをし もうすぐ散るだろう花々に
微笑みを投げかける
川は緩やかに流れ
命は思惑から解き放たれ
自由という不自由を満喫し
やがて 此処に 還って来る
不実を不誠実とし
実はずの無い果実を口にし
其の甘美な液を滴り流しながら
私は 貴方は
常世を絶つ鋏を二人で抱え
そして 切る
ああ 輪廻の向こう
愚かも 罪も 等しく私は持ちながら
其れでも
貴方を 此処で 待つ
枝垂れ桜の夜着を羽織
常世の治世を思い出し
笑む
忌わしきは 我が身
穢すだけならばこの羽衣も
鮮やかな桃色を剥奪され
慮辱されるがままに
名を 失うだろう
それほどの 頼りなさで
其れでも 私は此処に佇む
瀬々らぐ水の流れが
散る散る花弁を拾い流して逝くよ