Nicotto Town



神保町(完結)

泰樹はナツと別れて、神保町に取材にでかけた。ナツはスイーツの取材を手伝うために来たはずだが、肝心のスイーツの取材の時に、酔いつぶれて、喫茶店伯剌西爾で待つことになった。

泰樹は、トリップアドバイザーの2019全国1位を獲得した「神保町サクラカフェ」に向かった。ホテルに併設されたカフェで24時間営業をしている。皇居に近いことから、ランナーステーションになっていて、荷物を預けたり、シャワーを借りることもできる。

何より、リーズナブルだ。有楽町イトシアで毎日大行列ができる台湾発の本格ティースタンドの「The Alley」では、タピオカミルクティーはMサイズで540円するが、サクラカフェは350円、食べ物のメニューも安い。

泰樹は、抹茶ミルクティーを頼んだ。甘い、とにかく甘い。これは、口直しが必要だ。小川町の交差点にある「たいやき神田達磨」で羽根つきたい焼きを買って、食べ歩きしながら、神保町の古書店街に向かった。甘さ控えめの十勝小豆の餡とカリっとした薄い皮の食感がいい。

ナツとの待ち合わせまで時間があったので、「南洋堂書店」で時間をつぶした。建築関係の書籍を専門に扱っているが、地形を見ながら歩く本も扱っている。泰樹は、ブラタモリのアイデアをパクリ、地形や江戸の街、祭りとスイーツで記事を構成しようと思っていた。

日も傾き、 ナツが待つ「茶房神田伯剌西爾」に向かった。障子に土壁、囲炉裏のある民芸調の店内に入ると、泰樹は、コクと苦みが際立つ神田ブレンドを頼んだ。

「泰樹さん、遅いんじゃないですか。待ち合わせの時も待たせるし、女性は、美味しいものを食べるためには、何時間も行列に並べるけど、男には、一分たりとも待たされたくないんです。」
「そうですか。すいませんでした。」

「原稿のネタは、集まったんですか。」
「はい、前編、中編、後編の3話にしようと思っていましたが、もう1話飛び出してしまいそうです。」

「ライターなんですから、ちゃんとページ数合わせてくださいね。泰樹さんは、どうしてライターになろうと思ったんですか。」
泰樹は、神田ブレンドを口に含んだ。
「長くなりますよ。チンパンジーと人のDNAがどれだけ違うかご存知ですか。2%くらいしか違わないんですよ。人の方が進化しているわけじゃないんです。空間認識能力はチンパンジーの方が上です。」

「それが、どうして、ライターと結びつくんですか。」
「人とチンパンジーの違いは何かと考えたら、コミュニケーション能力と想像力だと思うんです。それが人が人たる所以じゃないかと思ってます。ものを書いて人に読んでもらうということは、想像力とコミュニケーションそのものじゃないかと思って、物書きになろうと思ったんです。」

「泰樹さん、コミュニケーション能力ないですよね。今日みたいに、無理やり誘わないと、引きこもってますよね。」
「はい、物書きは引きこもりの自分に合っていると思います。」

「もったいないな~。それに、20歳も年下に敬語で話すなんておかしいですよ。強引に引っ張ってもらいたい女性もいると思いますよ。泰樹さんが珈琲を飲み終わったら、夕飯をご一緒しませんか。酔いが残っているから軽めの麺がいいです。」

泰樹は、しばらく考えて口を開いた。
「東京で一番有名なうどん屋と言われている『丸香』にしましょう。」
「ダイエット中なので、うどんはいやです。天ぷらも頼んだら、糖質の塊じゃないですか。今は、糖質カットがブームです。吉野家だってライザップと共同開発で牛サラダを出して大人気なんですよ。」

泰樹は、まだ熱い神田ブレンドを飲み干した。
「ナツさんは、どこか行きたいところがあるんですか。」
「せっかく神田に来たんだから、『かんだ藪そば』にしましょう。この前の火事でリニューアルしてから、まだ、行っていないんです。」

「蕎麦ですか。やぶ蕎麦のかけそばは670円、まる香のかけうどんは値上がりしましたが440円です。サラリーマンで、お昼ごはんに500円以上かけることができる人なんてほとんどいません。大抵は、コンビニのおにぎり2個で終わりです。」
「お昼ごはんじゃありません。週末のデートの夕食なんですよ。」

「夜でも、やぶ蕎麦の蕎麦コースなんて、飲み物別で8000円です。香川県人会一押しの同じ神田の『のらぼう』は、飲み放題2時間付きのうどんすき全7品コースで4700円です。蕎麦は、気位も値段もお高くとまりすぎてます。」

「泰樹さんは、どうして、蕎麦を目の敵にするんですか。私は、お蕎麦の方が好きなの。」
「そうですか。僕は、うどんの方が好きです。」

「泰樹さんには、女性に譲るとか、敵に塩を送るとかできないんですか。」
「うどんだけは譲れません。上杉謙信じゃないので塩は送れません。それに、塩は貴重品です。古代ローマ軍団では、給料が塩で支払われていたんです。ラテン語で塩を表すSalからSalary、サラリーマンです。サラリーマンは塩を無下にはできません。」

「泰樹さんは、サラリーマンじゃないじゃないですか。」
「物書きでも、心は引きこもりのアニメオタクの中年サラリーマンです。」
「もういいです。分かりました。一人で、藪そばに行きます。原稿の締切ちゃんと守ってくださいね。」

泰樹は、伝票を持ちレジに向かった。地上に向かう階段を登りながら、何がいけなかったんだろうと考えたが、そうだ、丸香は土曜日は、2時半までだったと思い出した。

↓火事になったときには新聞で大きく取り上げられた「かんだ藪そば」
http://www.yabusoba.net/

↓東京一と誉れ高いうどん屋「丸香」
https://icotto.jp/presses/6190

↓香川県人会一押し「野らぼー」、のらぼーは香川県民が食べる草
http://norabow.jp/nightmenu/index.html

↓海外の人がたくさん「桜カフェ」
https://www.sakura-cafe.asia/jimbocho/

↓今まで10個は食べているたい焼き「たいやき神田達磨」
https://taiyaki.root-s.com/

↓さすが、店舗もモダンな建築「南洋堂書店」
https://blog.magazineworld.jp/popeyeblog/27693/

↓本格珈琲が楽しめる民芸調喫茶「茶房珈琲伯剌西爾」
http://go-jimbou.info/shoku/cafe/cafe004_burajiru.html

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2019/05/21 22:21
たまちゃん
三省堂の向かいの通りには、一度入りたかったけど、入っていない店がたくさんあります。何度も惹かれたのは一人焼肉のお店や北海道の食材を使った店がありました。ラーメン屋さんも大行列の店と隣のガラガラの店。一度、食べ比べたいと思いました。古瀬戸に入るのがたまちゃんだ。自分はその裏にあるサンマルクカフェの喫煙ルームの常連でした。

さなちゃん
誤解しています。自分は気の強い女性だけを怒らせることはありません。すべての女性を怒らせてしまうのでしょう。頑固なのは間違いないと思います。インスタントラーメンなら出前一丁、カップラーメンなら日清のシーフード、カップ焼きそばならば、焼きそば弁当です。焼きそば弁当は北海道限定なので、今、東京で食べることができないのが最大の悩みです。

ゆりかちゃん
神保町の桜カフェは土日にしか行ったことはありませんが、夜はパーティーのようにいつも盛り上がっていました。サラリーマン風の人が多かったので、土日も働いている人が飲んでいたのかなと思います。恋愛に年齢は関係ないので、恋愛経験の少ない泰樹より経験豊富なナツの方がビシバシとはっきりと意見を言えたのかもしれません。うどんに拘らなければ、そんな二人は、いい組み合わせだったのかもしれません。

yonaさん
あま~いラブロマンスを期待してはいけません。過去の実績を踏まえると、ロマンチックには程遠い話ばかりです。災害時に経験や訓練以上の対応はできないと言われているように、作者の力量不足なのでしょう。モテるかモテないかの違いは、そこで、彼女の提案した蕎麦に素直にいいねと言えるかどうかだと思います。蕎麦美味しかったね、今度、うどんに行こうと言えればいいのに、言えないのがモテない男です。

mさん
京都や大阪、そして温泉にばかりいかずに、たまには、東京に遊びに来られてはいかがでしょうか。神保町の古本を眺めているだけでも楽しいですが、スポーツ用品店や湯島天神もあります。学問の神様なので、受験されるご家族や親族がおられたら喜ばれるでしょう。武道館、靖国神社もお隣です。春は千鳥ヶ淵の桜、冬は?ですが、是非、お越しください。
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2019/05/21 14:22
あらぁ~色々私も行ってみたいわぁ~(^^)/
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2019/05/21 11:28
お店紹介、楽しく読ませていただきました。
わたしが想像していた、あまーいラブロマンスは?絵にかいたようなハッピーエンドは?せめて、手は握る。。握らないー!でしたけど、それぞれの好み尊重して、折り合いつけて、寄り添っていってね。って感じです。
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2019/05/21 08:04
おはようございます、沖人さん。

あらら、ナツさんは酔い潰れてしまいましたか^^;
肝心のスイーツが!一番楽しみな所なのに!!

神保町サクラカフェですか。
先日、皇居付近をうろうろしたので、もしかしたら通っていたのかな。
皇居ランナーさんもたくさん走ってました。
フルマラソン距離も走れる沖人さんなら、何周も出来そうですね^^

ブラタモリも面白いですよね~♪
先週は、沖人さんの得意分野そうな甲府盆地の地形を紹介してました。

それにしても、ナツさんは気がお強いことで;;
酔い潰れておいて、年上の方相手に、すごいバッサリした物言いですね。
泰樹さんのライター志望動機が、深いようなよくわからないような。

あ、ナツさんの中では『週末デート』という認識になってる?
でも喧嘩別れしちゃいましたね。
よく考えたら、好意があったのはナツさんのほうで、泰樹さんは別に好意的な描写は何もなかったような~?あれ、どうでしょう。

仕事をする上での相性は良さそうなので、今後も仲良く、泰樹さんの原稿が打ち切られないことを願います。
神田町の見どころも教えて頂き、ありがとうございました(*^^*)
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2019/05/20 15:09
どこも渋めのお店ですね。

泰樹さん=沖人さんなんですね~
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2019/05/19 23:32
実際の沖人さんもこんななんだろうな〜と
想像しながら読みました笑
気の強い女性を怒らせるのが好きなのかしら・・・( ̄▽ ̄)
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2019/05/19 21:49
環謝さん
悪いのはうどんです。うどんが全て悪いのです。エッジの利いたうどんのつるっとした喉越し。イリコと昆布の黄金色の透き通った出汁。一度、虜になったら、毎日うどんです。泰樹の身体の半分は小麦粉でできています。野菜が取れないのが難点です。

Cherryさん
すっきりしない終わり方ですいません。泰樹も、うどん以外であれば譲れたのではないでしょうか。きっと、神保町に行くことが決まってから、まる香に行くことが楽しみで楽しみで仕方なかったでしょう。ナツはそんな頑固なところが我慢ならなかったのでしょうか。

みーぴこさん
取材記を書くために事前視察をしなければいけません。自由が丘や青山は苦手なので、渋いところを探すようにします。浅草、柴又はちょっと渋すぎます。探訪記ならば、やはり、ディズニーランドですね。一人ディズニーに挑戦してきます。

れんげさん
蕎麦も、よきライバルだと思っていてよく食べます。夏から秋にかけて、蕎麦畑の一面が白く染まる景色が好きです。去年は蕎麦の生産量が16%減。北海道の7月の雨が響きました。蕎麦は湿気に弱いので、今年は天候に恵まれることを願ってます。
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2019/05/19 21:42
あれあれ?ハッピーエンドのはずでは?www
思い切り肩透かしを食らいました~(爆笑)
でも神保町散歩物語、楽しかったです。
今日は沖人さんに触発されて、オペラの後に神保町へ寄って
久々に古瀬戸に行きました。
それにしても・・・またお店がいろいろと変わってる!
特に書泉・三省堂の向かいの通りは知らないお店ばっかりになってるわ~~~
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2019/05/19 20:33
情報満載で、楽しかったです!
二人の会話のすれ違いっぷりも笑えました^^
うどん、お好きなんですね、、
わたしは、蕎麦の国の者なので…蕎麦が好きです!
休日に善光寺参りして、帰りに蕎麦屋で昼のみするのは最高です♪
(熱く語ってすみません^^;)
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2019/05/19 17:30

話題豊富で楽しかったです♪

泰樹さんとナツさんのコンビで
不定期でいいので探訪シリーズをお願いしちゃいます^^

私も・・・実話に設定脚色がなされてるのだと思いましたw
沖人さん、20歳も若い彼女なら もう少し甘やかしてあげなくっちゃネ (。≖‿≖)ニタァ♥
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2019/05/19 17:09
こんにちは。
これで完結?
これは自作小説ですか? 実話じゃないですよね・・・。
泰樹さんナツさんもどっちも折れませんね。
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2019/05/19 13:36
うーん(苦笑)
最後に、何がいけなかったのかと悩んでいるけれど、どっちもどっちな気がするんですがwwwwww
昼間から飲みすぎて酔いつぶれて取材に行けなくなったナツさんに、うどんにこだわりすぎる泰樹さん…(´・ω・`)
期待したハッピーエンドにならなかったのはもういいとしても……完結しちゃったのね(u_u)




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