Nicotto Town


うみきょんの どこにもあってここにいない


きらきら、箱根 その3

仮想タウンでキラキラを集めました。

2019/06/20
キラキラ
集めた場所 個数
ペット海浜公園 4
自然広場 5


きらきら、ペットと自然

箱根つづき。

 箱根二日目。午前四時を回って、五時過ぎ。もうすっかり朝の明るさ。またお風呂に入りに行った。
 この日は一日雨。仙石原のほうに登って、箱根ラリック美術館へ。四月に来たときに企画展として「サラ・ベルナールの世界展」(二〇一九年三月二十八日─六月三十日)を開催してると知ったので。箱根ラリック美術館は、もう何回か来たことがある。ルネ・ラリック(一八六〇─一九四三)の宝飾品、香水瓶、ガラス製品、家具などが、美しく展示されている。ラリックのオパールの耀きをもつガラスの女神たち(シレーヌ、バッコスの巫女)が大好きだった。花や虫たち、鳥たちをモチーフにしたガラス作品、ジャポニズムの影響をうけた彼の作品も。
 ただ、この頃はもう、あまりそちらのほうにわたしの関心があまり行っていないのだが、ラリックはそのなかでも、いまだに見たくなる作家の一人、といえる。
 それに、企画展だ。四月にみかけたポスターは、ミュシャの描いたサラ・ベルナールをメインにしたものだった。ミュシャもさんざん見てきた。そしてサラ・ベルナール。演技しているところを見たことはもちろん、残念ながらないけれど、惹かれる存在なのだ。十九世紀末から二十世紀にかけて活躍したフランスの舞台女優、サラ・ベルナール(一八四四─一九二三)。ミュシャが売れるきっかけを作った人物でもある。わたしはむかし、あの十九世紀末というものが好きだった。文学も美術も。それもあってラリック、ミュシャ、サラ・ベルナールなどに関心があるのだ。
 サラ・ベルナールは、若手のジュエリーデザイナーだったルネ・ラリックを見いだした人物でもあるとのことで、ミュシャがデザインした百合の冠を、ラリックが制作していて(一八九五年)、その展示もあった。
 先を急いでしまった。美術館は緑深い中にある。雨に濡れた緑のなかに小さな水の流れがあった。作られたものではない、自然の流れなのだろう。庭園になっていて、そこの散策も可能みたいだったが、雨のために、今回は遠慮した。外にクラシックカーがあり、そのカーマスコットが、オパールセングラスのラリック作品。ぜいたくな車のアクセサリーだ。
 常設展は、ひさしぶりのラリックたちで、再会したようでうれしかった。感動というよりしずかな刺激。植物たち、鳥たちのモチーフに、彼を好きだったのは、彼のこうした自然への目の向けかたによることもあったのだろうと、今更ながら思う。
 美術館の窓から庭園が見えた。モネの庭のような太鼓橋と睡蓮の咲く池。ラリックの作品たちにもよく合っている。雨に濡れて緑がしっとりと色づいている。
 ラリックが内装を手がけたオリエント急行。このサロンカーが美術館に展示されている。予約制のカフェで、美術館とは別料金。映画『オリエント急行殺人事件』も好きだったから、つねづねこの中も入ってみたいと思っていたのだが、今回は、時間の関係もあって、入ることがかなわなかった。
 芦ノ湖のほうに行き、箱根神社へ。以前、芦ノ湖遊覧などをしたときに、湖面からせり出すように建っている赤い鳥居が気になっていた、その神社だった。
 箱根神社、九頭龍神社。狛犬が苔を着込んでいるようで、心にしみた。九頭龍神社の龍神水舎の龍たちにも。九つの頭の龍たちが口から水を出している。 「九頭龍神甘露の霊水 箱根神社の龍神水」とあった。こういういいかたは不謹慎かもしれないが、龍たちがけなげに見えた。手で掬って、水を頂く。また水だ。最後は龍神様。冷たかった。
 例の芦ノ湖湖畔の鳥居へ。もう何十年も前から、一度来てみたかったところだった。というか、芦ノ湖で船に乗っているときは、ここに来ることが出来るなんて、思ってもみなかった。湖上から眺めることができるだけで、きっと行くことができない場所なのだと、どこかで思い込んでいたのだった。
 そんな場所に、来ることが……。境目というのは、案外、近いところにあるのかもしれない、行けそうにない場所は、こんなふうに行くことが。
 そしてせり出した鳥居、ぎりぎりまで、歩いてみた。芦ノ湖の水も意外に綺麗だ。周りは雨で視界はよくはなかったけれど。芦ノ湖に遊覧船が通った。雨脚が強くなってきた。
 そのあとにもう一つ観光スポットを巡って帰路についた。箱根湯本のちょうど裏側の道、箱根新道を通る。滝通りよりも、さらに一つ奥だ。寄木細工の店などが並んでいる。寄木細工のからくり箱などが、どうも自分のなかでは当たり前のものになっているのはどうしてなのか。多分、子どもの頃に、家にあったからだろう。木のそれぞれの色合いの違いを利用した模様が精密な木の製品。とくに開けるのが難しいからくりの小箱が、なんというか、親しみをこして、大切な宝物となっている。といっても今、手元にあるわけではないのだが。
 旅の最後に、寄木細工の店や工房などの痕跡を見ることができて、良かったなあと思う。また西湘バイパス、雨の海を遠くに眺める。雨と空と海で、もはやそれらが曖昧だ。
 考えてみたら、箱根は神奈川県で、うちの隣の県だ、近いのだ。海が見えなくなり、しばらくして、多摩川を渡れば、うちはもうすぐ。
 どこにも寄らず、家に帰った。まだ雨。残っていたもので晩ご飯をすませる。連れ合いの買った海産物をつまみにお酒を頂く。箱根で汲んできた姫の水を飲む。やはり美味しい。雨はまだ降っている。肌がつるつる。盛り沢山の水の旅だった。

(終わり)

いつも読んでくださって、ありがとうございます。





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