雨粒
- カテゴリ:小説/詩
- 2019/07/03 09:25:19
ここのところ
雨音ばかりが響く部屋
雨に濡れた窓ガラスからは
何も見えないけれど
今の私にはそれでいい
二人でさした大きな傘も
片隅に忘れられたままで
再び役に立つのを待っている
そんなことはもうないけど
私も待っている
雨の季節は嫌いだ
いやでもあの頃を思い出す
心もしっぽりと濡れて
涙の様に雨粒が落ちる
そう 涙も一緒に
昨日も眠れぬ夜を過ごした
ベッドの端で膝を立てて
雨の降るのを聞いていた
まるで雨も一睡もしないかのように
その音を鳴らし続けていた
どこへ行こう
たった一人で
さし伸ばされた手はもうない
あなたを愛していたのに
届かなかった気持ちが悲しい
泣いても泣いても
行く先は見つからない
あなたのところに行きたいけど
それももうできない
せめてあなたの影が欲しい
つなぎとめていた何かがなくなって
それに気づかなかった
明日を迎えるのが怖くて
そんな毎日が続いていて
また眠れぬ夜がやって来る
愛されたかった
愛してくれたの
臆病になっていた
真実を知ることを
答えが雨粒にうつるかのように
忘れられた傘が一本
あなたの大きな手を待っている
愛は雨粒とともに流れ
もう帰っては来ない
恐れる心を捨てたい
雨が嵐になるその時に
傘立てに寂しげな傘
次に差すのは
いつになるのだろう
愛のシャワーの下で
腕をからめて