晩餐
- カテゴリ:小説/詩
- 2019/07/17 15:53:26
どうしたのだろう
涙が止まらない
夕べの最後の晩餐
あなたの好きなイタリアン
おいしかったのに
ぎこちない会話に
心は冷え切っていた
もう夏だというのに
雪降る街にいるようで
だれも暖められない
もう随分とたった
あなたに出会った時から
あそこに何があったのだろう
手と手がぶつかって
何をつかんだのだろう
互いの絡ませた指を
痛いほどに絡ませた指を
誰がほどいたのだろう
あなたか 私か
時の流れか
あなたの愛が届かなくなって
私の手は冷え切っていった
もう少し あともう少し
この手が届いていたなら
二人ここにいられたのに
飛び去った二人の明日は
もうここには帰ってこない
あなたの夢も
私の夢も
過ぎ去った嵐の中のよう
もしかして会えるかもしれない
そんな小さな希望を持って
デザートを口に運んで
目を揚げればあなたの目がある
もうおしまいのそのまなざしが
私たちのテーブルだけが
音もたてず 声も出ず
その瞬間が大切だった
それを見失って辿り着いたのはどこ
それは凍えた涙の雪
霞んで見えるあなたの眼差しに
愛の残像が崩れていくのを見た