Nicotto Town


安寿の仮初めブログ


札沼線はなんのために…。


7月31日(水)

今日は、札沼線に乗って、新十津川に向かいます。
しかし、この札沼線というのは、不思議な路線です。


まず、路線名ですが、
札幌から、昨日乗車した留萌本線の石狩沼田という駅まで走っていたから、
札沼線なのですが、
すでに新十津川から石狩沼田の間は、廃止されています。

その区間は1972年廃止ですから、
国鉄時代において、すでに廃線になっていたわけです。
なのに、札沼線という路線名は、そのまま引き継がれていたわけです。

次にこの路線、北海道医療大学駅までは電化され、
札幌近郊を走る電車として、乗客数も列車本数もそこそこ多いのですが、
そこから先がいけない…。

そこから先はディーゼル車になり、
途中駅の浦臼まで一日6本。
浦臼駅までの間に石狩月形という駅があり、
そこに高校があるので、まだ浦臼までは本数があるのですが、
浦臼から終点の新十津川まで走る列車になると、
1日わずか1本。

この1本は終着駅の新十津川に到着すると、
その30分後には折り返してしまい、
その後、新十津川駅を発着する列車はありませんから、
沿線住民としては、この列車を利用しようにも、
利用できるようなダイヤ編成になっていません。

せめて買い物したり、病院で診察受けたりして、
その後、乗れるような発車時刻になっていないと、
地元民としては使いようがないわけです。
いったい何のために、この列車は存在しているのでしょう?


そして、そもそも札沼線は、
なんのために敷設されたのか、それ自体が謎です。

札沼線の沿線には炭鉱らしきものがありませんし、
材木を運び出すような大きな山も森林地帯もありません。
留萌のように大きな港に接している駅もありません。

石狩川の南側を、札幌から旭川まで函館本線が走っていますが、
それと平行するように、石狩川の北側に札沼線を敷設し、
米や農産物の輸送に当たらせたと考えるしかないようですが、
だとすれば、札沼線が貨物営業を廃止した1978年の時点で、
この路線は、その存在意義が大きく損なわれています。
そもそもこの路線、戦時中は不要不急線として、営業休止しています。

このような路線ですから、
非電化区間の札沼線沿線に住む人は、
札幌に出る場合、札沼線を使うのではなく、
札沼線に並行して走る函館本線の主だった駅に出て、
そこから特急なりを利用して、札幌に向かっています。

利用価値がない路線、
利用価値がないダイヤ編成であるにもかかわらず、
なぜ、1日に1本の列車を走らせてきたのでしょう。
謎です。

ですが、その札沼線・非電化区間にも、
ようやく陽の当たる時がやってきました。
2020年をもって非電化区間が廃止されることが決まると同時に、
私を含めて、たくさんの鉄道ファンが訪れるようになったからです。

しかし、鉄道ファンのために存在していた路線。
しかも、廃止が決まって、
ようやく多くの乗客が訪れるようになったという現実は、
裏を返せば、その路線の存在意義はすでに長く失われていたことを
証明しているようなものです



札幌を6時58分に発車。
列車は、隣駅の桑園で札沼線へと入ります。
先ほども述べたように、札幌近郊を走る電化区間は、
札幌に向かう通勤客や大学に向かう学生たちで、
そこそこ乗客はいます。
この路線が学園都市線という愛称で呼ばれているのも肯けます。

終点の一つ手前、石狩当別で下車。
そして、この駅始発、1日1本だけの新十津川行き、
1両編成のディーゼル車に乗り替えますが、
すでにたくさんの鉄道ファンたちが乗車していました。
とはいえ、座れないことはないですが。


7時45分、石狩当別を出発。
8時17分、石狩月形駅に到着。
夏休み中ですが、ここで数名の高校生が下車。
彼らのために、この列車はあるようなものです。
そして、この駅で23分停車。
行き交う対向列車を待つためです。

対向列車が入ってくると、
なんと運転士がスタフ交換を行っているではないですか!

つまり、列車が正面衝突しないように、
石狩月形から先の区間に一編成の列車しか入れないようにしているわけで、
ここから先の区間に進んでもよいという通行手形みたいなものが、
スタフ(通票)です。
このスタフを、今到着した対向列車の運転士から受け取って、
初めてこの列車は、ここから先の区間に入っていくことができるわけです。

こんなシステムで運行していた路線が、未だにあったんだ…。
まあ、信号による運行システムを整備するよりも遙かに安くて、
しかも、安全確認が確実にできるシステムですが、
このシステムで運行できるということは、
それだけ列車本数が少ないということも意味しているわけで…。


石狩月形を過ぎると、停まる駅は、
一応、周囲に道路や建物がないわけではないから、
秘境駅とは言えないものの、
乗降客などはめったにいない、
その存在が忘れ去られた駅となります。

9時28分、終点、新十津川に到着。
ここで一斉に鉄道ファンが降り、ホームで写真撮影。
小さな駅舎には、
この日この時間のためだけに窓口が開かれていて、
JR北海道の職員ではなく、地元の観光協会の人が、
記念の入場券販売と、
新十津川駅到達証明書の配付を行っていました。

駅周辺は花壇がキレイに整備され、
コンテナハウスで臨時のお土産屋さんまで開いています。

「おかげさまで、大勢のお客さんに訪れていただいて…」。
そうお店の人は言いますが、
しかし、廃線となるから、大勢のお客さんが訪れているわけですし、
しかも、大勢とはいえ、毎日の乗降客数を見ると、30名前後。
それ以前は、日に数名だったようですし、
その多くは鉄道ファンで、地元民ではないでしょう。

それに駅の窓口やお土産屋さんが営業しているのは、
9時28分に列車が到着し、
10時ちょうどに列車が発車する前後だけ。
本当に一時期・一時だけの盛況。
素直に喜べない廃線ブームです。

続く。




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