ラストサマー
- カテゴリ:小説/詩
- 2019/08/19 13:47:21
生ぬるい夏の風
涼しさなど運んでこない
でもやがてやって来る季節を
人々は思うだろう
その心地よい風を
太陽はまだその力を発揮し
ギラギラと強く
ありとあらゆるものを逃がさない
人々は逃げきれない
一直線にくる光を
あなたと逃げたホテルのラウンジ
あなたと出会った3回目の記念日
お祝いをするはずだったのに
今日は二人 押し黙ったままで
ホテルを後に都会へ帰る
長すぎた二人
何度か言いかけたけれど
あなたの心が良く読めなくなってきて
信じていたはずなのに
愛が落ちるのを必死で守った
そう
落ちてしまう愛になった
あんなに強く想っていたのに
段々とひびが入っていって
かけらになって落ちそうで
それはあなたも同じだったに違いない
季節の変わるのが先か
愛の終わるのが先か
きっと同じなんだろう
太陽が光を放つ上を
愛がゆっくり沈んでいくのだろう
終わるなんて思わなかった
ずっといられると思っていた
でも違った
愛していた
でも愛されていたのか
もうあなたからの誘いはない
そのことに気づいて悲しくなる
いつまでもあると思っていた
なくなるなんて気が付かなかった
明日はもうないのだ
さようならでピリオドを打つ
もう消せない4文字
幸せになってね
私もなるわ
ラストサマーが雲で流れる
夏が終わる海岸のカフェテラス
やがて人もいなくなるだろう
あなたから教えられたもの
引き際の美しさ
あなたの影は去っていった
たたずむ影は時を知らない
陰り逝く夏の日差しを慰めるように
さよならが木霊する
8月の終わり
二人して声もなく山道を下る
もうすぐ長く伸びた影が分かれ道に差し掛かる・・・