働き方改革が始まり、退社時間が早くなった。今日も19時には会社を出て、銀座駅で丸の内線に乗った。四ツ谷で中央線に乗り換えて高円寺のアパートに帰る。

地下鉄が四ツ谷駅に着くと、サラリーマンが一斉に降りて、整然とJRへの乗り換え口に向かっていく。家族が待つマイホームに帰る羊の群れのような一団になじむことができなかった。急いでアパートに帰っても、そこには誰もいなかった。

四ツ谷駅で羊の群れと別れて、改札の外に出た。交差点を渡ると、外堀に沿って一段低くなったところに公園が整備されている。公園に降りる石畳の階段の踊り場に灰皿が置かれていた。

いつも、階段に座り、缶コーヒーを飲みながら煙草を吸ってから、中央線に乗り換えていた。会社の中の狭い喫煙ルームで吸うたばこと違って、屋外で吸うたばこは美味しかった。

今日、四ツ谷駅の改札を出たら、タピオカミルクティーの店がオープンしていた。オープンセールで半額と書かれていたので、列に並んで買うと、さまざまな飲み物のの写真が載ったチラシをミルクティーと一緒に渡された。

そのチラシには、タピオカが88粒入っていますと書かれていた。コンビニで売っているタピオカミルクティーの倍入っているとアピールしていた。

台湾では「8」は縁起がいい数字だ。8のパァという発音が「発」と似ていて、発には、お金を儲ける、お金が入ってくるという意味がある。台湾だけでなく、中華圏でも同じで、北京オリンピックの開会式は、2008年8月8日午後8時8分にスタートした。

外堀に降りる階段に座り、煙草に火を点けた。台湾では「520」は「我愛你」の発音と似ていて、5月20日は告白の日になっている。日本のバレンタインデーと同じだ。

今年のバレンタインデーも、一つもチョコを貰えなかった。誰もいないアパートに帰るがむなしくなり、もう一本、煙草に火を点けて、タピオカが88個入っているか数えることにした。

紅茶を先に飲んで、残ったタピオカを一つずつ食べて数えた。手帳を取り出し、正の字を書いていった。

･･･84･･･85･･･86･･･87･･･････

87個しか入っていない。ひとつぶ足りない....

四ツ谷の階段を後にして、中央線に向かった。