Nicotto Town



さぬどん(後編)

かきたまうどんを食べていたおっさんは、訥々と話し始めた。

「うちの婆さんな、蜘蛛が好きやったんや。婆さんの若い頃は、農薬や使いよらんかったやろ。蜘蛛は、田んぼや畑の蛾やウンカをつかまえてくれるから、見た目は、気持ち悪いけど、農家には大切な虫や言うて、あんたも、嫁さん貰う時には、見た目で判断せんと、働きもんのええ人を貰えよと、しょっちゅう言いよったんや。」

「ほうか。婆さんの言いつけ、ちゃんと守ったんやの。嫁さんは、顔でないわ。ほんまに、たま子さんは、働きもんや。」

「・・・蜘蛛の巣に、放射状の縦糸と渦巻状の横糸があるやろ。横糸がくっつくんや。蜘蛛は、くっつかんように、縦糸の上を歩きながら、横糸の手入れをしょんや。台風が近づいたら、風にあおられて巣が壊れんように、横糸を自分で切っていくんで。」

「わしも昨日、台風が近づっきょるけん、ビニールハウスのビニール捲り上げたわ。飛ばされたらかなわんけんの。それがの、全部、一人でやったんや。うちの嫁さん、大阪に嵐のコンサートに行ってしもうたけんの。嫁さんや、『台風きょうるけど、嵐のコンサート中止になったら困るわ。瀬戸大橋が止まったら、大阪どうやっていこうか。』ばっかり言いよったわ。台風が近づっきょんのに、そっちの嵐でなくて、ほんまの嵐を心配せえって言いたかったけど、言えんかったわ。」

「・・・婆さんの話やけどの、一匹の雄蜘蛛がおったんや。ええとこに巣をかけて、虫がようけ巣にかかっじょったんやと。ところが、いっぱい巣にかかっとったら、巣があるんが分かるけん、小さい虫や捨てよったんや。」

「もったいないことするの。うちの嫁さんや、輪ゴムや紙袋を捨てんと取っておくんで。台所の隅が紙袋だらけになっとるわ。それに、半額シールの菓子パンやヨーグルトばっかり買うてくるんで。この前や、ガソリンを入れにいったら、スタンドの若い兄ちゃんに『これ食べて頑張りまい』や言うて、鞄から、パン取り出して渡たっしょんや。ほれ、カステラの裏表に緑やピンクのウエハースで挟んだ菓子パンあるやろ。あれを渡っしょんや。バイトの兄ちゃんも知らん人から半額のパン貰ても困るやろ。ほんまにびっくりしたわ。」

「・・・ところがの、台風の風やゆうたら木も倒すでないんな。蜘蛛の巣やひとたまりもないわ。巣もちぎれて、蜘蛛は落ちてしもたんやと。ところが、その巣の下に別の蜘蛛の巣があって、引っかかったんやと。雌の蜘蛛の巣やったんや。蜘蛛の雌は雄の5倍くらい大きいんで。」

「ほんまな。人もそうやろ。うちの嫁や、結婚した時、あんな細くて、農家の嫁がつとまるんやろか言われよったんで。それが、肥えて肥えて、今や、嫁さんに体重で負けとるで。あれは、子供が残したご飯を、もったいない言うて食べよったんやと思うわ。」

「・・・蜘蛛は共食いをするんや。それに、蜘蛛はええことした後は、雄は雌に食べられてしまうんや。」

「ほんまな。雄蜘蛛は苦渋の決断やの。石原さとみだったら、食べられても突撃するけど、うちの嫁さんだったら、、、困るわ。」

「・・・ほんでの、雌蜘蛛の横糸にからまってしもて、雄蜘蛛も命を諦めたんやと。そしたら、雌蜘蛛が絡まった糸をほどいて助けてくれたんやと。」

「ダイエット中だったんか。うちの嫁さんや、毎晩ウォーキングいうて歩っきょるけど、そのついでに、お前んとこの玉子さんのところによって、饅頭食ったり、ケーキ食べながら、1時間も2時間も帰ってこんやろ。15分しか歩いてないのに、なんしょんか分からんわ。」

「・・・ダイエット中でないんや。雄蜘蛛が捨てよった虫が雌蜘蛛の巣にかかって、雌蜘蛛は助かってたんやと。その恩があるけん、雄蜘蛛を助けたゆう話や。」

「ええ話でないか。あるからゆうて、食べまくったらいかんいう話やろ。こんど、うちの嫁さんに話して聞かせてや。」

ずずっと、丼に残った麺をすすると、おっさん二人組は、楊枝を咥えながら店を出て行った。

  完

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2019/09/29 18:46
ひろあきさん
香川には、こんなおっさんが、いっぱいいますので、うどんを食べに、是非、お越しください。

オレンジ先生
おっさんになると、人の話を聞きません。大事なのは、美味しいうどんです。まつはまは、問題なし。

リンゴさん
じっくり話そうとすると、喫茶店ですね。ここは、セルフのうどん屋です。会話している暇はありません。

スズランさん
我が家には蠅とり蜘蛛がぴょんぴょんしてます。掃除機で吸い込まないか、いつも心配です。

蓮さん
おっさんのことなら任してください。長く、おっさんをしているので、おっさんの生態は完璧です。

みーぴこさん
アンテナショップを訪ねていただいてありがとうございます。宇和島だと、ひつまぶしのように、鯛めしをお茶漬けにしたりします。小さいうどんだけでなく、次回は大盛りを召し上がってください。

ゆりかさん
うちの母は、先日、ガソリンスタンドでスタンドのお姉さんに菓子パンを渡していました。かきたまうどんは熱々です。冬場は特におすすめだと思います。冬に、まつはまにお越しください。

れんげさん
朝の蜘蛛は、吉兆なんですね。夜の蜘蛛について、検索したらヒットしますが、じゃむじゃむは、グーグル先生は、しまじろうしか教えてくれません。何か秘密が隠されているのでしょうか。

たまちゃん
玉ねぎには、ヨウトウガ、ネギアザミウマのような害虫がつく場合がありません。のんびり、生態系の観察をしている場合ではありません。たまちゃんも悪い虫がつかないように気を付けましょう。

Cherryさん
そう心の中の会話です。おっさん度100%です。おっさんになると、人の目を気にしません。そうなるとこっちのものです。ポテチもから揚げも気にせず、パクパクです。
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2019/09/28 22:00
これはほんとに自作小説ですか?

沖人さんの心の中のおっさんの会話?!
楽しませていただきました。
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2019/09/28 21:51
最後はうまくまとまって、いいコンビの2人ですね(笑)
なんだかんだ言って、どちらのおっさんも奥さんのことを愛してる、
そんな雰囲気が漂ってますね。微笑ましい^^
以前、軒先に大きなキンカンの木があったのですけど、
アゲハが卵を産むので幼虫が葉っぱを食べたり、花が咲けば蝶や蜂が密を吸いに来て、
アブラムシも来るから蟻もいるし、テントウムシもいるんですが、
下の方にはクモが巣をかけて獲物を待ってました。
生態系のいい勉強になってました^^;
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2019/09/28 20:47
笑った!^^
おっさんたちに付いていって続き聞きたいなぁ♪

うちの昔からの言い伝えで、夜10時前のクモは殺してはいけなくって、
それ以降は、泥棒クモだから退治してよしって言われてました^^;
あと子供の頃、庭先に鼻水状の巣を作るクモ(地クモ)のことを、
何故か『じゃむじゃむ』って呼んで、可愛がってました。
誰に話しても、共感されませんけど…(~_~;)、
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2019/09/28 19:47
こんばんは、沖人さん。

見事に噛み合ってないですね~。
そこが読んでて面白いです^^

おじ様たちの会話が、やけにリアルなのですが…
沖人さんは、どうしたらこんな会話を思いつくのでしょう?
お嫁さんのモデルの女性がいるのかな。本当にいたら面白い方ですね。
蜘蛛の話をお嫁さんの行動に例える、旦那さんの発想力もすごい。

蜘蛛って、雄が雌に食べられちゃうのですね;;世知辛い人生>_<
せめて家の中で見かけたら、退治しないでそっとしておこう♪
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2019/09/28 19:24
わぁ♪ すっごくいいです~
なんか・・・心温まり 私もライブで聞きたかった
愉快、爽快、温かい会話ですねぇ~
♪沖人さん Good Jobs♪

今日は沖人さんから 教えて頂いた 新橋の「かおりひめ」でAM11:15頃
早めのランチに行ってきましたが 店内盛況ぶりにビックリですw
嬉しいことにお楽しみの 限定50食『鯛めしセット』を注文できました♪
鯛めしはもちろん!セットのがんもどき、小うどんの美味しいことw
讃岐うどんって私の知ってる「うどん」とは違うんだなぁ~
そもそも、うどんの茹で方にもコツがあるのかなぁ~

お土産コーナーで『うどん脳』を物色w 缶バッチ、マスコット、ぬいぐるみ、根付・・・
いろいろなグッズの中から何かと便利なクリアファイルを買いましたw
ペッパー君から『うどん県おもてなしパスポート』を頂き
1Fで半生讃岐うどん、和三盆糖を買いましたw もぉ~ウキウキです♪

今日は本当に 心から『お腹おきた』ですw(*'▽')~♪
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2019/09/28 19:02
かみ合ってないところが面白いですね。
これは創作なんでしょうか?
なんだか本当にあったことみたいですね。
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2019/09/28 15:26
ええ話やなあ(*´ω`*)・・・
かみ合わなさも絶妙やな!
うちも蜘蛛好きやから、更に大事にしようと思ったで。
まあ街やから、蠅取り蜘蛛とか、小っこいのしかおらへんけどね。
あれ、踏みそうになるんで部屋に出没した時びっくりするで。
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2019/09/28 14:05
(*‘ω‘ *)話したい事をとことん話しててかみ合ってないですね~
沖人さんノベルズいけそうですよ♪
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2019/09/28 11:13
ホントかみあっていない~~^^
おもしろかったですーー。
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2019/09/28 09:03
漫才を見ているようで二人のかみ合わなさが滑稽ですw
事実を元にして書いているのか、想像の産物なのか。
創作なら素晴らしいストーリーテラーですね^^




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