貝殻
- カテゴリ:小説/詩
- 2019/10/03 10:18:13
昨日拾った貝殻は
裏側がとてもきれいで
パールの様に光っていて
この手でするりとバッグに落とす
何を拾ったんだい
秘密
そんなじゃれあいが
何よりも楽しかった
季節外れの太陽で
まだまだ秋は遠く
色づく木々もあとまわし
足踏みをしてその日を待つ
貴方と通った金色の街路も
おしまいに食べた焼き芋も
今年はなぜか遠く感じて
過ぎてしまうような気がする
そう
今年は一人
来ないかもしれない
あなたが恋しくなるから
夏がまだ残るこの町で
一人膝を抱えて
あなたの帰りを待っても
誰も来はしない
そっと取り出すあの日の貝殻も
遠い日のものになってしまった
きれいなパール色を磨いて
でもそこにあなたは映らない
もうどのくらいたっただろう
二人が一人になって
悲しいけれど
それが現実
ありがとう そしてさようなら
幸せだったわ
夢を見させてくれたのね
パール色の画面に
そうね。
波の音が遠くに聞こえる
ここからすぐに帰りたいと
あなたの帰るところはどこ
波の音さえ知らない
かつては二人だったのに
今はただ一人
砂浜に残る足跡も一人
振り返っても一人
それを拾った
その瞬間の事が記憶されている
その後に起きる
貝殻を通しての想い出も
かつては二人を映したパールの貝殻にも
今は自分一人しか映らない
海の香りがして
耳に当てると潮騒の音が聞こえた