マリメッコ
- カテゴリ:自作小説
- 2019/10/03 21:12:11
高松市の中心部を東西南北に貫くように商店街のアーケードが伸びている。かつて日本有数の商店街として賑わっていたが、郊外型の大型店舗に客を取られ、今では人通りの少なくなった商店街を、夏子は自転車で走っていた。
ドラッグストアで買ったシャンプーや洗剤が自転車の篭いっぱいに詰め込まれ、夏子の額には汗が浮かんでいた。
「9月も末なのに、どうしてこんなに暑いのかしら。他に買わないといけないものは無かったかしら。」
夏子がこぼれそうな篭をちらちらと見ながら走っていると、商店街の向こうから冬美が近づいてくるのが見えた。
まだ、1ブロック離れていて顔ははっきりと分からないけど、この商店街で白地に赤や橙の花がプリントされたウリッコ柄のワンピースを着て歩く女は冬美しかいなかった。
冬美は高校の同級生で、学年で一人はいる美貌と知性を兼ね備えた女子だった。それでいて、控えめで性格も良く、男子からも女子からも慕われていた。
高二の夏、冬美はサッカー部のキャプテンだった周平に恋をした。冬美の初めての告白は、あっさりと断られた。冬美は動転しながらも、周平にどうしてと聞くと、「俺、夏子のことが好きだから。」と言われた。
冬美は、夏子に、「周平があなたのことが好きだって言ってたわ。」と伝えて、二人のキューピットになったが、冬美は夏子と話すと、どうしても、棘のある言葉が出てくるようになってしまった。
夏子は、周平と付き合うきっかけを作ってくれた冬美に感謝して、結婚式の友人代表をお願いしたけど、どこから見ても冬美の方が恵まれているのに、夏子にだけは張り合おうとする冬美が苦手だった。
夏子は、冬美に気づかれないように、商店街の右手にある「乃が美」に入ろうと、キキ―とブレーキを踏んだ。すると、籠の重みで自転車が傾いて、シャンプーや洗剤がボロボロ転がり落ちてしまった。
自転車を停めて、籠の中身を集めていると、ウリッコ柄からワイドハイターを渡された。
「夏子さん、たくさん買ったのね。でも、10月にカードで買った方が5%還元でお得じゃないかしら。」
「そうなんだけど、ひい爺さんが借金で苦労をしたことがあって、家訓で、ツケ払いをしちゃだめなの。」
「周平君、元気にしてる。サッカー部の顧問をしてるんだったっけ。」
「体育教師だから、今は、運動会の準備で忙しいみたい。」
「うちの旦那も最近、太ってきたから少しくらい運動して欲しいわ。最近、取締役になって、毎晩、飲んで帰ってくるのよ。」
「出世頭ね。うちの周平も我が家の戸締り役よ。冬美さんもお買い物?」
「そう、バーゲンだから、南新町のマリメッコでエプロンを買ったの。子供の給食のエプロン。夏子さんもどうかしら。」
「うちの娘は、100均のエプロンよ。花柄のプリントで、今日の冬美さんのワンピースみたいな柄よ。」
「100均じゃないわよ。これもバーゲンで買ったマリメッコ。」
「知ってるわよ。さすが、冬美さんね。ジャクリーン・ケネディみたいに似合っているわよ。私たちが生まれる前よね。」
「夏子さんも、素敵なTシャツとジーンズね。」
「周平が買ってきてくれたの。日本代表のユニフォーム。ワールドカップ、ペアルックで応援しようって。」
最後に一つ落ちていた化粧品を、冬美は放り投げるように夏子に手渡した。
「夏子さんも、乃が実の生食を買うんでしょ。入りましょ。」
一緒に店内に入ると、店員さんが、「あと一つが残っているだけなんです。」と言った。
「冬美さん、どうぞ。」
「いえ、夏子さんこそ、どうぞ。」
「うちの子は超熟が好きだから、冬美さんこそ、どうぞ。」
「うちは、いつも乃が実だから、たまには、他のパンを食べたいから、夏子さん、どうぞ。」
「もう、自転車の籠に入らないから、冬美さんこそどうぞ。」
「それもそうね。また、自転車が倒れたら危ないものね。」
夏子は、良かったと思った。ほんとは一斤400円以上もする生食を買ったら、なんのために増税前に買い出しをしてるのか分からなくなると思った。「それじゃね」と言ったら、冬美が「ちょっと待って」と言った。
「すいません、半分に切ってくれないかしら。」
冬美は、店員から二つの紙袋を受け取ると、片方を夏子に「気を付けてね」と言いながら渡すと、店から出て行った。
夏子は、自転車にまたがると、冬美さん、本当はいい人なんだけどな~と思いながら、ペダルをこぎ始めた。
半月も前から、「栗くいて~」と呟きながら、マロンフェアを逃すとは、うっかりすぎる。同じ過ちを繰り返さないためには、和菓子フェアで買ってから、どうしよ~と悩むのが正解です。食べない選択をする人はいないので、美味しく栗をいただけるでしょう。
弓弦羽さん
女とつるむと疲れると言われても、弓弦羽さんとお付き合いのあるかたは、自由人や一癖あるエネルギッシュか方のような感じがして、付き合うと疲れるような気がします。ロックな生きざまの人達ばかりではないでしょうか。
オレンジ先生
冬美さんはいい人です。恵まれた人、強い人は、無条件に人に優しくなれると思います。子供に対する優しさのような感じでしょうか。大人同士だと、優しくしてほしいから、優しくするような気がします。フィリップ・マーロウの「タフでなければ生きて行けない。優しくなれなければ生きている資格がない。」です。
スズランさん
本当に嫌い合っていなければ、ちょこっと喧嘩するような関係が長持ちするかもしれません。多少、音信不通になっても強固な関係で結ばれています。周平の奪い合いをしたのではないので、遺恨は残っていないでしょう。
リンゴさん
上下関係がはっきりした方が、分かりやすいからなのでしょうか。男性にも、マウントを取りたがる人がいますが、友人関係では少ないかもしれません。冬美さんも、意地悪な性格ではないのです。悪気はないけど、ついつい言ってしまうだけなのです。後で、また、言っちゃったと反省しているでしょう。
ゆりかちゃん
何不自由なく生きてきたのに、人生の唯一の汚点になっていて、ついつい、その出来事に拘ってしまう。もはや、周平は関係ないのでしょう。そう、仲良しなのです。少女漫画でも、意地悪されたり仲が悪かったりするけど、最後に危機を救ってくれるのはライバルなのです。
mさん
高いパンは美味しいのです。しかし、安くても美味しいパンも多いのです。生食パンも美味しいけど、Bostonbake(札幌)の外側がカリっと焼きあがったパンが一番好きです。一斤100円で買っていたけど、とても美味しかったです。
環謝さん
男子はツンデレに弱いですが、女子もそうなのでしょうか。食パンを奢ってくれるくらいなので、仲は悪くなりたくないのです。好きな子に意地悪してしまう男子の気持ちとは、違うのですが、人間の心は複雑なのでしょう。
仲がいいのか、悪いのか??
いやはや、悪いはずはないwwwよね?
今うちで取っている新聞についているピヨちゃんもいう4コマ漫画に出てくる、お金持ち病院の家の娘(小学生)が、主人公の女の子(小学生)が大好きなのに、いつも素っ気なくてメチャクチャツンデレなんだけど、冬美さんに似てると思い出しニヤニヤしてしまいました(*´ω`*)
高いパン流行ってますね・・・美味しいけど値段ほどは美味しくない、そんな気がします。
素敵な旦那様とご結婚されたのに、冬美さんはどうして張り合うのかな~。
初恋の人は特別なのか、夏子さんに恋愛で負けた悔しさからか?
恋愛絡みで拗れるとややこしいので、私はイケメンには極力近づきたくありません^^;
もし実話を元にされているとしたら、沖人さんは周平さんポジションでしょうか?
学年一の美女をあっさり振るなんて、モテモテですねv
取締役を戸締り役で返した夏子さんに、ざぶとん一枚!
外野で聞いてるだけなら面白い会話♪何だかんだ仲良しな2人ですよね。
冬美さん、ツンデレなところが可愛いなぁ(*^^*)
私は苦手^^;
半分を分けてくれる冬美さん、愛はある人なんだなぁ
お互い結婚していても、それが原因でこれからもとか
考えてしまいました(;'∀')
いっぱいあるのかもしれませんね^^
だからいつも単独行動なんですけどね(笑
結婚したらしたで、旦那や子どもや生活状況で張り合う・・・ありそう~w
張り合う物がないって、気楽でいいわと自分を振り返りました。
今日は会社帰りに寄ったパン屋さんで、マロンフェアが終わっていることに衝撃を受けましたが、
別の売り場で栗の和菓子フェアが始まっていて、
あぁもうどうしたらいいの~と、幸せな悩みをごっちゃり抱えております・・・
胃袋が10個くらいほしい。